護国神山は空洞化するのか5》 2ナノ競争でインテルはまだ戦えるのか──専門家が量る「TSMCの本当の相手」はサムスンだけ

TSMCは長年、世界のウエハー製造の覇者と位置づけられ、その主なライバルとしてインテル(写真)とサムスンの名が挙がってきた。(写真/AP通信)
TSMCは長年、世界のウエハー製造の覇者と位置づけられ、その主なライバルとしてインテル(写真)とサムスンの名が挙がってきた。(写真/AP通信)
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TSMC(台積電)は長年、世界のファウンドリー産業で覇者とみなされてきた。一般的にはIntel(インテル)とSamsung(サムスン)が主要な競争相手とされるが、著名半導体アナリストで香港の聚芯キャピタルのパートナー、陳慧明氏は『風傳媒』のインタビューで「インテルはもはやTSMCの相手ではない。唯一の強敵はサムスンだ」と明言した。アジアの半導体競争について語る場面でも、コークラン・キャピタル会長でベテラン半導体アナリストの楊應超氏は「本当に学び、備えるべき相手はサムスンだ」と繰り返す。

楊應超氏がサムスンを主要な競争相手とみなす理由は、サムスンを単なる企業ではなく「国家と並行して動く体系」と捉えているためだ。その強さは技術や資金力だけでなく、文化や国際交渉の掌握に根ざしているという。一方で陳慧明氏がインテルに厳しい評価を下す背景には、インテルの苦境が二つの根本的要因──資本支出の不足と、産業モデルの時代遅れ──に起因しており、これらが相互に絡み合ってTSMCやサムスンと競争する上で重い足枷になっているという見方がある。

ABCとABK 楊應超氏「台湾は文化間交渉の人材が不足している」

「ABC」と「ABK」。楊應超氏は、この差が台湾の弱点だと指摘する。「サムスンが強いのは、アメリカ政府とどう交渉すべきかを理解しているからだ。なぜトランプがサムスンに“工場を作れ”と圧力をかけないのか?もうすでに話がついているからだ」。楊氏は、台湾が持つのはABCだが、韓国にはABK(American-Born Korean)がいると説明する。サムスンは米国でABKを採用し、韓国に戻して5年間訓練し、サムスン文化と韓国の働き方を身につけさせたうえで再び米国へ派遣する。「彼らは韓国語も英語も理解し、両方の文化を深く読み解けるため、アメリカ政府や米企業との交渉が非常にスムーズに進む」。

20251015-SMG0035_C_亞洲三強的半導體策略

楊氏は、こうした「文化間交渉人材」の育成こそが台湾企業に最も欠けている能力の一つだと強調する。なぜトランプがサムスンを追及しないのか──それはサムスンのABKチームがすでに水面下で調整を済ませているからである。対照的に台湾企業にはこの「文化翻訳層」が不足しており、交渉の場面で必然的に不利になる。「韓国の強さは統合力にある。国を企業が支え、企業が国家と歩調を合わせる。これは台湾ではめったに見られない」。ただし楊氏は、サムスンにも弱点はあると付け加える。同社は過度に集中し、家族色が濃いため、一度判断を誤れば体系全体に衝撃が及ぶ構造的リスクを抱えている。

20250918-台大國際政經學院兼任教授楊應超。(顏麟宇攝)
楊應超氏は、「文化間交渉の人材」を育成する力が、台湾企業に最も欠けている能力の一つだと指摘している。(写真/顏麟宇撮影)

資本とモデルの問題 陳慧明氏「インテルの大きなモデルはすでに時代遅れ」

インテルの問題について、陳慧明氏はまず「資本の不足」という構造的課題を指摘する。2ナノ世代に入った現在、先端プロセスへの投資額が年間300億ドルを超えることはもはや当たり前で、これは技術競争であると同時に資本競争でもある。TSMCとサムスンは近年300億ドル規模の投資を継続し、技術的アドバンテージを築いてきた。これに対し、インテルは長年にわたり200億ドルの壁を突破できず、「2ナノの投資基準は300億ドル。ところがインテルはそこに届かない。これでは勝負にならない」と陳氏は断じる。

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