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高市早苗首相「台湾有事」強硬発言で支持高止まり 矢板明夫氏「この状況なら不信任案は必ず可決」 インド太平洋戦略シンクタンクのエグゼクティブディレクター矢板明夫氏が、『風傳媒』の番組『下班瀚你聊』で、日本の高市早苗首相の最近の発言について自身の見解を語った。(写真/劉偉宏撮影)
高市早苗首相が先日、「台湾有事」の際には日本が集団的自衛権を行使するとの考えを公に示し、中国側の強い反発を招いた。中国は日本が台湾海峡問題に介入する姿勢を厳しく批判し、正式に抗議した。これについて、インド太平洋戦略のシンクタンクを率いる矢板明夫氏は、高市早苗氏が少数政権で国内で大きな圧力を抱えているため、就任を支えた保守層に応える形で、従来とは異なる姿勢を示す必要があったと指摘する。同氏は、高市早苗氏がときに「パフォーマンス」を見せる場面もあるが、中国はそのたびに過剰反応して慌てるのだと述べた。
矢板氏は『風傳媒』の番組『下班瀚你聊』で、中国がここまで激しく反発した理由は、高市早苗氏がこれまでの日本政府の立場を「三段跳び」するように一気に押し広げたためだと説明した。本来なら一歩進むだけで大きなニュースになるところ、過去に台湾海峡をめぐる発言で最も踏み込んだのは安倍晋三氏だった。安倍氏は2021年、国策院のオンライン会議で「台湾有事は日本有事であり、日米安保の有事でもある」と述べ、その直後に中国側から招致された。ただし当時の安倍氏は一般の国会議員であり、発言も民間のフォーラムで行われた。また、安倍氏が主語にしたのは日米安保で、米軍が主、自衛隊が従という位置づけだったのに対し、今回の高市氏は「自衛隊」を主語に据えた点が大きく異なる。
矢板氏はさらに、「台湾有事は日本有事」という考え方は高市早苗氏と安倍氏の一貫した主張であり、2015年に日本が安保関連法の改正を議論していた際にも、党内では同様の考えが語られていたと強調した。ただし当時は党内議論にとどまり、公に発信されることはほとんどなかった。
安倍晋三氏が首相として在任中、台湾に寄り添う発言を多く示していた時期の一場面。(AP通信)
国内保守派の失望が高市氏に圧力に? 矢板氏は、高市早苗氏は少数与党の立場にありながら、日本の保守層からは非常に強い支持を受けていると説明する。そのうえで、高市氏は就任後、政権運営を安定させるためにいくつかの措置を取ってきたという。まず今年10月に靖国神社への参拝を見送ると表明し、続いて韓国を訪問して韓国の李在明大統領、中国の習近平国家主席とそれぞれ会談した。李在明氏と会った際の高市氏の姿勢は比較的ソフトで、日本の保守派支持者の多くが「韓国は日ごろから日本を侮辱している」と感じている中、高市氏は控えめな態度で韓国国旗に敬意を表し、習近平氏との会談では逆に「説教」を受ける場面もあったと指摘する。
矢板氏は続けて、ある意味で多くの人は高市早苗氏に対し、中国や韓国に対して強硬に臨む政治家というイメージを抱いてきたが、いざ首相に就任してみると必ずしもそうではなかったと語る。その結果、中道層の有権者は安心した一方で、彼女を支持してきた保守派は「この人は首相になった途端、過去の石破茂氏のように、まるで自分のカラーがなく、言うべきことを言わなくなったのではないか」と不満を募らせたという。そうした期待と落差が高市氏への圧力となり、ときには従来とは違う姿勢を「演出」する必要に迫られていると分析する。今回の発言もその一環と見られるが、中国側はそれに対してすぐさま慌てて過剰反応した、と矢板氏は述べている。
矢板明夫氏は、日本の現職首相である高市早苗氏(写真)が少数政権ながら、保守層から強い支持を受けていると説明した。(AP通信 )
矢板明夫氏が指摘する高市氏の最大の懸念 日中間の緊張が高まる中、中国は17日から19日にかけて黄海で実弾軍事演習を実施し、『解放軍報』は日本が台湾有事に軍事介入すれば「日本全土が戦場になり得る」と警告した。これについて矢板明夫氏は、中国側は軍事演習を大きく報じているものの、台湾ではすでに「日常風景」に近く、「演習があると株価が上がるくらいだ」と冷ややかに受け止められていると説明する。では日本はどうか。確かにメディアは不安をあおるように報道し、心配する人も出てくるが、実際に最も打撃を受けているのは観光業だという。中国からは今年およそ700万人が日本を訪れたが、中国政府が意図的に団体客や観光客を絞れば、日本の観光産業には深刻なダメージとなる。日本は民主主義国家として被害を受ける業界の声も考慮せざるを得ず、だからこそ現在の日本政府は、できる限り冷静に対応しようとしていると指摘した。
矢板氏は率直に、高市早苗氏にとって観光客が減れば観光業界からの不満が高まるのは当然であり、そのうえ今後は経済改革や減税、所得税の見直しといった難題が待ち構えていると語る。これらをうまく乗り切り、来年度予算を無事に成立させたうえで支持率が高いうちに衆議院を解散できれば、自民党が再び勝利を収めるチャンスはある。しかし、もし支持率が下がれば「潮が引いたとき、裸で泳いでいた人があらわになる」という状況になりかねない、と警鐘を鳴らす。
最後に矢板氏は、高市氏の最大のリスクは「少数与党」である点だと強調する。野党が内閣不信任案を提出すれば、現状の議席配分からみて「必ず可決される」とみている。現在は高市氏の支持率が高いため、野党も不信任案の提出に踏み切れないが、一度支持率が落ちれば、左右さまざまな野党勢力が共通候補を一本化するのは難しくても、「現政権にノーを突きつける」という一点では容易に足並みをそろえられる。その意味で、来年4月までに予算審議を通し、その後のタイミングで高市氏が衆院解散に踏み切れるかどうかが、政権の行方を左右する極めて重要な分岐点になると指摘した。
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