日本で過去20年最悪級の市街地火災 強風・乾燥・老朽住宅地が重なり「致命の三重奏」 九州・佐賀関で住宅170棟焼失

2025-11-19 16:08
大分県佐賀関で発生した大規模火災の被害状況。(AP通信)
大分県佐賀関で発生した大規模火災の被害状況。(AP通信)
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日本九州・大分県の佐賀関漁港は、「関あじ」「関さば」で知られる名物漁港だ。その港町を、11月18日夕方、突然の大火災が襲った。強風にあおられた火は18時間以上燃え続け、19日正午までに少なくとも170棟の建物を焼失、延焼面積は4万8900平方メートルに達した。76歳の男性が行方不明になっている。複数の全国紙は、この火災が2016年の新潟県糸魚川市の大規模火災(住宅147棟焼失)を上回り、平成以降では地震を除けば最大規模の市街地火災になったと報じている。

朝日新聞によると、11月18日午後5時45分ごろ、大分市消防局に「自宅が燃えている。大きな炎が見える」と最初の通報が入った。出火場所は佐賀関漁港の北東側に位置し、住宅が密集する一帯だった。住民が第一報を伝えたものの、火は瞬く間に広がっていった。

当時、大分市には強風注意報が出ており、地元気象台の記録では火災発生時に北西の風が秒速5メートルで吹いていた。この強い風が、被害を拡大させた主な要因とみられている。

「夕食の準備をしていたら、突然、近所の人が『火事だ!逃げろ!』と叫ぶ声が聞こえた」と、40代の男性被災者は振り返る。外に飛び出すと、建物は炎に包まれ、火の粉が雪のように空に舞い上がり、山の方向へ流れていったという。

猛烈な火勢を後押ししたのは、異常な乾燥だった。佐賀関周辺ではここ1か月間の降水量が平年の3割程度にとどまり、11月に入ってからの雨量はわずか11ミリ。乾ききった木造家屋が、強風にあおられる格好の燃料になった。

日本大分県佐賀関の火災惨状。(美聯社)
大分県佐賀関で発生した大規模火災の被害状況。(AP通信)

80代の男性はメディアに対し、「最初は1、2軒が燃えているだけかと思ったが、すぐに火の粉が四方に飛び散り、こんな光景は見たことがないと思った」と語る。各紙によれば、この燃えかすが強風に乗って飛び火し、消防隊は対応に追われた。

18日午後10時50分には、約1.5キロ離れた無人島・蔦島でも火災が発生。燃えかすや火の粉が海峡を越えて飛び、島に着火したとみられている。

避難所に広がった不眠の夜

火勢が制御できない状況となり、大規模な避難が始まった。19日午前7時までに110世帯170人が佐賀関公民館へ避難し、最大時には188人に達した。公民館のホールには簡易ベッドとアルミ製の保温ブランケットが並べられ、DMAT(災害派遣医療チーム)のスタッフが高齢者の血圧測定や健康相談に対応していた。

多くの住民は財布と携帯電話だけを手に、家から飛び出した。75歳の高橋由布美さんは貴重品を持つ余裕もなく隣人と避難し、「家がどうなっているのか心配で仕方がない」と不安を語った。また、煙を吸い込んで呼吸器が炎症を起こした50代女性が搬送される事態もあった。独り暮らしの64歳、渡邊忠孝さんは「思い出が詰まった家だが、今は受け入れるしかない」と火元方向を見つめながら話した。

この火災で失われたのは住宅だけではない。百年の歴史を刻む佐賀関漁港の独特の景観も焼失した。NHKによると、佐賀関は大分市の東端に位置し、険しい山と複雑に入り組んだ溺れ谷(リアス式海岸)が特徴だ。対岸には愛媛県佐田岬があり、この海域で水揚げされる「関あじ」「関さば」は品質の高さで全国に流通している。

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