舞台裏》台湾・国民党に「隠れ実力者」副主席 鄭麗文主席が起用した蕭旭岑氏は柯文哲氏と習近平氏を結ぶパイプ役

2025-11-18 15:04
国民党主席鄭麗文は蕭旭岑(写真)を副主席に任命した理由は、前総統馬英九の支持を獲得することや集団国民党の鄭麗文主席が蕭旭岑氏(写真)を副主席に起用した背景には、馬英九前総統の支持取り付けや「集団指導体制」づくりだけではない思惑があるとされる。 (写真/劉偉宏撮影)
国民党主席鄭麗文は蕭旭岑(写真)を副主席に任命した理由は、前総統馬英九の支持を獲得することや集団国民党の鄭麗文主席が蕭旭岑氏(写真)を副主席に起用した背景には、馬英九前総統の支持取り付けや「集団指導体制」づくりだけではない思惑があるとされる。 (写真/劉偉宏撮影)
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台湾の国民党で新たに主席に就任した鄭麗文氏が、党内で掲げていた「世代交代」の公約とは裏腹に、就任後の副主席や秘書長といった要職には75歳以上のベテランを多く起用した。この中で最も若いのが51歳の前・馬英九基金会執行長、蕭旭岑氏だ。党内外では意外性のある人事だとの受け止めが広がっている。

党内では、前総統の馬英九氏をはじめ、連戦氏、王金平氏といった大物の側近が起用されていることから、鄭氏が党内勢力の均衡を図り、党権の安定を優先したとの見方も出ている。

しかし、蕭氏の起用を「馬英九氏の支持を得るため」とする解釈は、実情とは離れているとの指摘がある。関係者によれば、馬氏はそもそも党員による選挙で選ばれた党主席は支持するという立場で、蕭氏抜擢は彼の意向ではないという。鄭氏が蕭氏を登用した本当の狙いは、蕭氏が持つ中国側の人脈を活用し、国共関係や対中交流の突破口を開くことにあるとされる。

20251107-馬習会十周年シンポジウム7日、グレイ天空ホテルにて開催。国民党主席鄭麗文(中央)、国民党副主席蕭旭岑(右)。(劉偉宏撮影)
国民党の鄭麗文主席(中央)は、副主席に蕭旭岑氏(右)を起用し、その対中人脈をテコに国共間の往来を再構築しようとしている。(写真/劉偉宏撮影)

馬習会を支えた調整役 習近平中枢とも直結する蕭旭岑氏

両岸問題に詳しい国民党関係者によると、2005年の連戦氏訪中で構築された国共プラットフォームは、2017年に前国民党主席の呉敦義氏が就任して以降、事実上停滞しているという。さらに、習近平氏が2022年末から中国共産党総書記として3期目の任期に入ってからは、原則として台湾からの訪問団との会見には応じていない。このため、近年において対中訪問を行う台湾の政財界関係者が北京で接触できる最高レベルの人物は、中国の対台湾政策を統括する“ナンバー2”にあたる全国政治協商会議主席の王滬寧氏に限られ、多くの場面では国務院台湾弁公室(国台弁)主任の宋濤氏が窓口を務めている。

その中で唯一の例外となったのが、2024年4月に馬英九氏が台湾の若者らを率いて北京を訪れ、「馬習二会」が実現したケースだ。2015年にシンガポールで行われた最初の馬習会と同様、この2度の会談の調整に深く関わったのが蕭旭岑氏である。習近平氏の中枢と直接やり取りし、一定の信頼関係を築いてきたとされ、その点だけを見ても、党内で両岸関係を担ってきた他の人物とは一線を画す強みを持つ。

蕭氏は台湾中部・南投出身で、『聯合報』や『中国時報』のベテラン党政記者として活動してきたほか、クラシック音楽の評論家として専門誌『Muzik』に定期的にレビューを寄稿してきた経歴も持つ。政界入り後は、国民党秘書長室主任、文化伝播委員会主委、総統府副秘書長などの党政要職を歴任した。沈着で慎重な性格で、政治記者出身ならではの幅広い人脈を政界に持ち、メディア関係者からの信頼も厚いとされる。政局の大きな流れについても独自の見立てを持ち、2013年9月に馬王政争が勃発し、馬英九氏が党内外で苦境に立たされた際には、副秘書長に起用された蕭氏が調整役を担い、王金平氏との対立を和らげた。この人事が、馬英九政権の後半期の政権運営を安定させる上で重要な役割を果たしたことが、後に明らかになったとされる。

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