自由民主党が高市早苗氏を新総裁に選出し、公明党が26年間維持してきた連立を離脱したことを受け、日本外国特派員協会(FCCJ)は10月15日、今後の政局をテーマとする記者会見を開催した。登壇したのは、毎日新聞編集委員の佐藤千矢子氏と立命館大学教授の上久保誠人氏。両氏は高市政権発足の背景、政権基盤の脆弱性、野党再編の行方などについて、それぞれの視点から分析を示した。

佐藤氏は冒頭、「今回の総裁選で高市氏が勝利した要因の一つとして、麻生太郎元首相の強い影響力があった」と指摘。派閥が相次いで解散された中で麻生派のみが存続し、決選投票で組織力を発揮したと分析した。また、参政党など右派勢力の台頭に対する自民党内部の危機感が「再び保守の旗を掲げる必要性」を生み出し、高市氏支持につながったとの見方を示した。
その一方で、公明党との連立解消により、高市政権が発足しても「極めて不安定な少数政権となる可能性が高い」と警鐘を鳴らした。過去にも連立危機はあったが、今回は創価学会支持層の反発と、高市氏周辺に公明党と太いつながりを持つ人物が不在であった点が、調整を難しくしたと説明した。「短命政権に終わる可能性は否定できない」と述べ、早期の衆院解散が模索されるとの見通しを示した。
また、女性初の首相誕生の可能性について佐藤氏は「ガラスの天井を破る意義はあるが、高市氏の政策が多様性を推進するかどうかは疑問視する声もある」と述べた。夫婦別姓制度への否定的姿勢などから「女性支持の拡大は簡単ではない」と指摘しつつ、「現実路線への転換ができるかが政権運営のカギになる」と語った。
一方、上久保氏は政局を歴史的文脈から分析し、「現在の状況は1993年の非自民連立政権誕生時や2017年の民進党分裂の局面に似ている」と指摘した。特に、国民民主党の玉木雄一郎代表が「キャスティングボートを握る立場に浮上している」と述べ、首相指名選挙での動向が次期政権の枠組みに直結するとした。ただし、立憲民主党や日本維新の会との間で、エネルギーや安全保障政策の隔たりが大きく、「野党側が一枚岩となるのは極めて困難」との見解を示した。
上久保氏はさらに、「高市氏の首相就任は、野党が一本化できない限り、消去法的に選ばれる可能性が高い」と述べた。そのうえで、「首相就任後、高市氏がパフォーマンス重視の強硬姿勢から現実的な政策選択に軌道修正する余地はある」とし、政権維持に向けた路線転換の可能性に触れた。
質疑応答では、麻生氏の影響力に関する質問が出た。佐藤氏は「昨年の総裁選で敗れ党内非主流派となった麻生氏には、主流派への復帰への強い執念があった」と述べ、今回の選挙を「保守再結集の賭け」と位置づけた。また、女性支持に関する質問に対しては、「高市氏は男性保守層に支持されやすい傾向がある一方、夫婦別姓問題などへの姿勢から女性支持は限定的になる」との見方を示した。
安全保障と外交姿勢が政党再編にどう影響するか問われると、上久保氏は「トランプ氏の再登場など外圧が強まれば、安全保障や通商政策を軸とした再編が進む可能性がある」と述べた。政党間の対立が続いても、「安全保障分野では与野党のモデレート層が対話可能である」との認識も示した。
佐藤氏は、日本政治が今後多党化の道を進むなか、「欧州のように数カ月にわたる連立協議は安全保障環境上現実的ではない」と述べ、「日本型の連立運営モデルの模索が避けられない」と語った。上久保氏も、外圧や選挙結果が契機となり得るとの見方を示し、政局の再編成の行方に注目が集まると述べた。
編集:柄澤南 (関連記事: トランプ氏の「ゴーサイン」で東アジアの軍拡が加速? 日本は「戦後タブー」を越えるのか――高市政権、維新と連携し原子力潜水艦を視野 | 関連記事をもっと読む )
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp















































