奈良地裁で続いている安倍晋三・元首相の銃撃事件の審理で、被告・山上徹也氏の母親が昨日、証人として出廷した。母親は法廷で謝罪したうえで、「子どもたちの進学よりも、(教会への)献金の方が大事だと思っていた」と述べた。
NHKによれば、山上徹也被告(45)は2022年、奈良市で選挙応援演説をしていた安倍氏を銃撃し死亡させたとして、5つの罪名で起訴されている。安倍氏は搬送後に治療が続けられたが、命を救うことはできず、67歳で亡くなった。

奈良地裁は今年10月から事件の審理を開始しており、山上徹也被告は事実関係を認めている。このため、裁判の焦点は量刑の重さに絞られている。
弁護側は、事件の背景には山上被告の母親が旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)を信仰し、多額の献金をしていたことがあると主張し、動機や経緯を量刑判断に考慮すべきだとしている。弁護側の要請を受け、山上氏の母親は昨日、証人として出廷した。母子が対面するのは、銃撃事件発生後これが初めてとなる。
母親は震える声で証言を始め、「(安倍氏が銃撃された)事件の後、すぐにでも謝罪しなければならないと思っていましたが、その時はどうしてもできませんでした。いまここで謝罪いたします。前首相もどこかで聞いておられるかもしれません。次男・徹也が引き起こした重大な事件について、心からお詫び申し上げます」と述べた。

弁護人から現在の宗教について尋ねられた母親は、「世界平和統一家庭連合です」と答えた。
信仰を始めた経緯については、「1991年7月に若い女性が家に来たのがきっかけでした。その後、私たちの家系図や家族の病歴を見せました。1991年8月と翌年3月に、それぞれ2000万円と3000万円を献金しましたが、主な理由は長男の目の病気でした」と振り返った。
さらに、夫の生命保険金を含め、当時の自宅などの資産を売却して資金を捻出し、総額で約1億円を献金したと説明した。また、100万円の絵画を購入したことや、何度も韓国に足を運んだことも認めた。
そして、「子どもたちの進学よりも、(教会への)献金の方が大事だと思っていた」と述べた。
証人席周辺は仕切り板で覆われており、NHKの記者は母親の表情を傍聴席から確認できなかったという。しかし、母親は弁護人の質問に対し終始はっきりと答えていた。一方、山上徹也被告は母親の方を見ることはなく、手元の資料に目を落としていた。

奈良地裁は今月18日に再び公判を開く予定で、山上徹也被告の母親は続けて出廷する。さらに、山上氏の妹も証人として出廷する見通しだ。
また、検察側は昨日の法廷で、安倍晋三氏の妻・安倍昭惠氏が提出した文書を読み上げた。文書には、事件から1年後の心境が綴られていた。
昭惠氏は、「事件当日の朝、夫と義母と私の3人で朝食をとりました。夫は私たちに声を掛けて家を出ていきました。いつもと変わらない朝でした」と振り返った。
さらに、銃撃の知らせを受けて病院に駆けつけた際の状況について、「夫の体にはまだ温もりがあり、私は『晋ちゃん』と呼びかけました。手を握ると、夫が握り返したように感じました…。その後、心臓マッサージをしていた医師に『もう十分です』と言いました。衝撃で頭が真っ白になり、涙も出ませんでした」と記している。
文書では安倍氏について、「私にとって夫は真面目で優しく、気配りができ誠実な人でした。母親思いでもありました。夫は家族であり、友人であり、仲間であり、替えのきかない存在でした…もっと一緒の時間を過ごしたかった。もっと長く生きていてほしかった」とも述べている。
編集:柄澤南 (関連記事: 安倍元首相銃撃事件、山上被告の初公判は10月28日予定 判決は2026年にか | 関連記事をもっと読む )
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