「安倍暗殺事件」世紀の公判が本日開廷 崩れた家族、自製銃、そして日本政治を揺るがした旧統一教会の影

2025-10-28 11:34
2022年7月8日、山上徹也が元首相の安倍晋三氏を暗殺後、警察に制圧された。(AP通信)
2022年7月8日、山上徹也が元首相の安倍晋三氏を暗殺後、警察に制圧された。(AP通信)
目次

2022年7月8日――現代日本政治を画する一日となった。奈良の駅前に響いた銃声は、安倍晋三元首相の命を奪い、自民党と永田町、さらにはインド太平洋の安全保障に及ぶ波紋をいまも残す。あの事件から2年9カ月、奈良地裁で本日(28日)、初公判が始まる。被告は45歳の山上徹也。6人の裁判員と3人の職業裁判官が審理にあたり、個人の刑責にとどまらず、宗教・政治・個人悲劇が絡み合う構図を司法の場で検証する。

奈良の悲劇的瞬間

参院選投開票を2日後に控えた金曜午前。近鉄大和西大寺駅前には、安倍氏(当時67)が自民候補の応援に立つと聞きつけた数百人が集まっていた。11時30分に演説を開始してわずか2分15秒後、乾いた発砲音が二度。映像記録によれば、最初の一発は致命傷には至らなかったが、数秒の間を置いた二発目が背後から胸部・頸部を貫通した。白いシャツは瞬く間に血に染まり、懸命の救命措置もむなしく、同日午後に死亡が確認された。

現場では直ちに山上徹也が殺人未遂容疑で現行犯逮捕。手にしていたのは、ビニールテープで巻かれた二連の自作銃だった。捜査で判明したのは、奈良市内の自宅で動画を手掛かりに火薬を調合し、銃器を組み立てていたという事実だ。なぜそこまで至ったのか、背後に指示役はいたのか――以後の捜索と報道は、日本社会に横たわる古くて深い傷を浮かび上がらせた。

動機の核心 旧統一教会と復讐

「本来の標的は韓鶴子総裁だった」――逮捕直後、山上はそう供述したとされる。父の自死後、母親が生命保険金や資産売却で得た約1億円を世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に献金。家計は破綻し、兄は病苦の末に自死、本人も経済的理由で大学を断念した。

家庭崩壊の元凶を教団に見いだした山上は、2019年の韓鶴子来日時に襲撃を企図するも断念。コロナ禍で再来日が見通せないなか、2021年9月に安倍氏が教団系団体のイベントへ送ったビデオメッセージを目にし、「教団と関係がある」と断じて標的を転じた――というのが、捜査側が描く動機の筋立てだ。

精神鑑定は約半年に及び、奈良地検は2023年1月、完全な刑事責任能力を認定。殺人と銃刀法違反などで起訴した。さらに同年3月、火薬類取締法違反など計5件を追加起訴し、約8カ月に及ぶ捜査を終結させた。

2年9カ月に及ぶ審前のせめぎ合い

起訴自体は一昨年に済んでいたにもかかわらず、初公判まで実に約3年。《朝日新聞》は、被告が犯行を認めている「自白事件」でここまで公判前整理手続(審前協議)が長引くのは極めて異例だと指摘する。最大の争点は、裁判の中で「旧統一教会問題」をどの位置づけで扱うか――検察と弁護側の見解が天地ほど隔たっていた点にある。

弁護団は、適切な量刑判断には教団が本件に与えた影響の解明が不可欠だと主張。山上の背後には、長年にわたる家庭崩壊、経済的圧迫、心理的外傷があり、それは教団の過剰献金や“霊感商法”まがいの布教に起因するとして、宗教研究者や「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の弁護士らの証人採用を強く求め、犯行の深層動機と社会的背景の立証を目指した。

最新ニュース
SMBC日本シリーズ2025、阪神が逆転勝利で白星発進 ソフトバンクとの11年ぶり対決制す
SMBC日本シリーズ2025、11年ぶりの対決へ 開幕投手はソフトバンク・有原航平、阪神・村上頌樹に決定
トランプ大統領訪日で東京が星条旗カラーに染まる 高市首相「日米同盟をさらに強化」
高市早苗氏、トランプ氏と初会談 「日米新黄金時代」の構築を宣言 防衛費2%達成前倒し・レアアース供給網で協力、ノーベル平和賞推薦も
トランプ氏が来日、3日間の訪問を開始 「巨額投資」と「防衛費」の二大カード—高市早苗氏は最も手強い米大統領を手懐けられるか
カンボジアの太子グループが示した「シンガポール・ウォッシング」の手口 シンガポールはマネロンの楽園か 詐欺産業が金融センターと交差するとき
気象予報》台湾で今週末さらに冷え込み 気温18度まで低下も 二つの台風発生の恐れ
トランプ氏の「台湾独立に反対」発言に先立ち、シンガポールの黄循財首相が立場を明示 「一つの中国を明確に支持、台湾独立に反対」
「台湾有事は日本有事―米国も?」 安倍氏の遺産を継ぐ日本初の女性首相、高市早苗氏 トランプ大統領を惹きつけつつ台湾情勢を見極める
ユニクロ、西日本最大の旗艦店「UNIQLO UMEDA」開業へ 綾瀬はるか・松下洸平が登壇し新店舗の魅力語る
清水港マグロまつり2025、11月8日・9日に開催 冷凍マグロ水揚量日本一の港で解体ショーや無料振る舞いも
舞台裏》台湾・太子グループで9億台湾ドル横領発覚 元幹部が3カ月で巨額資金を個人口座へ送金
張鈞凱コラム:馬英九時代にまかれた種が、いま芽吹きつつある
トランプ・習近平会談で何を協議するのか トランプ氏「貿易・農業・フェンタニル」 ルビオ氏「台湾は交渉材料ではない」
第38回東京国際映画祭が10月27日に開幕 特集「台湾映画ルネッサンス」に4作品選出 台湾の新鋭監督が来日へ
百年政党は「対中再定義」へ? 台湾・国民党主席に鄭麗文氏 FT「親中路線がトランプ氏を刺激する恐れ」
陸文浩の見解:気象の影響で台湾海峡の中国軍用機・艦が急減 「徘徊型」電子偵察艦が日本周辺海域へ急行した理由
トランプ大統領が6年ぶりに来日 高市首相と初会談へ 首都圏は過去最大規模の厳戒態勢
台湾で今行くべき観光牧場は?「まるでスイス」清境農場が堂々1位 台湾観光農場TOP3が明らかに
台湾の夜市ランキングTOP3発表 訪台観光客に最もおすすめの台湾夜市は? 地元民が選ぶ「永和・楽華夜市」の魅力とは
台湾の「次の護国神山」はどこに? TSMC米投資の課題と産業構造の盲点 地政学リスク下で探る新たな兆元産業の行方
秋最強の寒気到来 北東季節風が連続襲来、台湾北部で今季最低18度の見込み
トランプが過去最大に台湾に近づく瞬間!アジア歴訪を徹底解剖:ホワイトハウス復帰後初の東アジア訪問で、どの国を訪れるのか、各国の期待とは?
“ゆるやかな隣人”と暮らす住宅モデル『nears』、都市部で人気上昇
ロイヤルホストが「Royal Host Deli」新商品を発売 復刻ドレッシング&限定ハン
吉永小百合さん、第38回東京国際映画祭で「特別功労賞」 日本映画界を象徴する存在に栄誉、オープニング作品でも主演
東京国際映画祭「TIFFCOM 2025」開幕へ 若手の海外進出支援から日本アニメの国際展開まで
淡路島に台南の味を──楊百泓さんと妻・中尾美嘉子さんが「台南家」を築く、山と海と小吃で旅人の心を癒やす
日本のチームは「台湾のチーム」 中国の反発は必至か 政治学者「高市早苗氏は自ら火遊びの自覚なし」
ドジャース×ブルージェイズのワールドシリーズ進出記念 ファナティクスが公式グッズ販売開始 大谷翔平&山本由伸モデルも登場
USJ、「Best Attraction(Asia)」受賞 アジアを代表するテーマパークに
スタジオツアー東京で「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」 11月からのクリスマス限定企画で雪と光の魔法世界を再現
東京国際映画祭とFCCJが共同会見を開催 アニメーション部門から木下麦監督が登壇
目黒蓮×桜田ひより共演 王子ネピア新CM「営業目黒くん」第2弾が全国放映スタート
日本の地方交流を担う台湾人――郭国文氏・李退之氏が語る日台関係の現在地
風傳媒AI医療大賞》台湾が「責任あるAI」と臨床検証を加速 病院横断データ連携で医療AIの実装を前進
米中首脳会談、10月30日釜山で決定 「直感の外交」vs「綿密な計算」は交わるか
エキュート品川で「秋の果実とおいもフェア」初開催 さつまいもと旬の果実を使った新作スイーツ6種登場
静岡市、11月1日「お茶の日」記念イベント開催 駿府城公園で大茶会やアフタヌーンティー企画も
ギャラクシー賞9月度月間賞発表 ETV特集「アメリカに刻印を残す女たち」など4作品が受賞
第38回東京国際映画祭、山田洋次監督に特別功労賞 倍賞千恵子・木村拓哉出演の新作公開も控える 『男はつらいよ』など60年の功績を称える
2foods、日本初のリポソームビタミンC配合グミ「2Gummy LIPOSOME VC」発売 コンビニ美容市場の調査結果も公表
AKOMEYA TOKYOで「新米祭り」開催 全国の銘柄米を利き比べるワークショップに注目
エキュート秋葉原で「チーズの日」フェス開催 チーズスイーツやAI接客など秋葉原ならではの体験
花俊雄氏の視点:民進党が静かなら台湾は平穏、米日も手を出せない状況
フォーリン・アフェアーズが緊急提言:台湾は「非売品」——売らない前提で、米中首脳会談はどう「良い取引」を導くか
台湾、習近平・トランプ会談の主要交渉材料となる恐れ?専門家が分析、習近平氏の要求を予測
台湾・鄭麗文氏、党勢拡大へ着実に前進 傅崐萁氏と全面提携し「国民党中央常務委員会」の主導権をめざす
吳典蓉氏のコラム:国民党党首・鄭麗文氏の浮沈
SSFF & ASIA秋の映画祭で没入型イベント『untitled』開催決定 短編映画の世界を体験できる新企画