トップ ニュース 張鈞凱コラム:馬英九時代にまかれた種が、いま芽吹きつつある
張鈞凱コラム:馬英九時代にまかれた種が、いま芽吹きつつある 北京の清華大学台湾研究院は23日、「両岸関係新情勢学術シンポジウム兼清華両岸フォーラム」を開催。両岸の研究者が「台湾光復から民族復興まで」をテーマに円卓討論を行った。(筆者提供)
台湾光復80周年を受け、中国で記念大会が開かれ、「台湾光復記念日」が正式に設けられた。これに先立ち、北京の清華大学台湾研究院は設立25周年を迎え、23日に「両岸関係新情勢学術シンポジウム兼清華両岸フォーラム」を開催。両岸から140人超の専門家・研究者が集まり、①両岸の政治・経済関係の新潮流、②社会交流の新局面、③若者のデジタル知識の新たな展望、④両岸関係を取り巻く外部環境の新動向――の4テーマで議論を深めた。関係が不安定な中、多くの台湾の著名研究者が北京入りして参加した点は容易ではなかった。
「中国出身の留学生・研究者」が対台研究を身近に 筆者も会議に参加し、「香港から中国へ移る流れ」を参照しつつ、現在の台湾における「小紅書世代」の台頭や、若年層の「中国への感情」変化の背景と意味を分析。両岸の研究者から多様な見解を得る貴重な機会となった。参加して気づいたのは、中国の台湾研究コミュニティで、若手とベテランの間に課題意識や関心の核に差があることだ。ベテランは米中対立下の両岸の将来像に重心を置く一方、若手は両岸交流が社会面に与える実質的な影響を重視している。
この世代差は、両岸関係の客観的な変化に加え、研究者自身の歴史的条件や時空間的背景を映している。現在の対台・両岸研究の新たな活力は、各研究機関やシンクタンクの助教・准教授層に見られる。彼らの多くは馬英九政権期に学術訓練を受け、その開放政策の恩恵を受けて台湾で短期交流や正式学位を取得した。今回の清華フォーラムにも、学士から博士まで台湾で学び、通算11年滞在した研究者が参加していた。こうした中国出身の研究者グループは、台湾での実体験と認識を携えて帰国し、各分野で成果を上げつつ、対台研究の第一線でも活躍している。
前経済部長の尹啟銘氏は23日、北京・清華大学で開かれた同シンポジウムで基調講演を務めた。(筆者提供)
対台政策というマクロの物語に比べ、台湾経験の厚い若手は、具体的かつ精緻な実証研究に軸足を置く。少なくとも清華フォーラムで示された成果には、両岸交流活動を長期追跡して多様な交流モデルを評価する研究や、台湾の若手エリートが議員選挙に参入する仕組みを分析し、「ゼロからの挑戦」と「政治家二世」との違いを比較する研究があった。後者は、研究者の台湾側の先輩に出馬意向があった事例に触発されたものでもある。こうした「中国出身の留学生・研究者」の参画により、これまで理屈先行になりがちだった対台研究に、体験に裏打ちされた理性的視点が加わり、研究の多様性と現場感が一段と高まっている。
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「陸生元年」から「陸生末年」へ 両岸関係の大変局 留意すべきは、「陸生学者(=中国出身の留学生として台湾で学び、いまは研究・教育に従事する人々)」が研究成果を出すだけでなく、現場の教育活動も担っている点だ。すなわち、台湾で培った知見を中国のキャンパスで教え、若い世代へと伝えることで、両岸交流の“再生産”が生まれている。少子化で台湾の高等教育が縮小する一方、中国の対台政策は台湾籍教員の受け入れを拡大。対岸の大学で台湾籍研究者が教壇に立つ機会は増え、「陸生学者」とともに、中国の新しい世代の台湾観や両岸認識の形成にどのような影響を与えるのか、注視に値する。
かつて台湾で頻繁に交流したある研究所長クラスの学者は、台湾の都市の街並みや店舗の変化が授業に不可欠だと語る。台湾に足を運ぶことが難しいいまも、現地の友人に新規開店や閉店の情報、写真提供を頼み、社会変容の手がかりとして活用しているという。そこには多くの物語と示唆が埋め込まれている。こうした教育実践は「人」の重要性を物語る。中国の対台湾教育・学習には制約が多いものの、直感的で立体的な理解は着実に厚みを増している。
台湾で学位を取得した中国側の研究者の一人は、「両岸の最良の時期を体験した」と打ち明けた。この言葉は現在だからこそ重い。馬英九氏が門戸を開いた「陸生元年」は、蔡英文政権期の対立激化を経て縮小が続き、賴清徳政権期に「陸生末年」を迎えている。現在の台湾における陸生はごくわずかで、両岸関係は“冷凍期”に入り、民間の自助努力に頼る局面だ。台海情勢の主導権は、台湾側が政治的には強硬に見えながらも、内実は脆弱さを抱える。
馬英九基金会の蕭旭岑・執行長は23日、北京・清華大学で開かれた「両岸関係新情勢学術シンポジウム兼清華両岸フォーラム」で基調講演を行った。(筆者提供)
陸生・陸配が供物化、台海に漂う「終局感」 否定しがたいのは、「良い時代」が「悪い時代」に置き換わった現実だ。陸生(中国出身の留学生)は台湾で事実上「ゼロ」となり、本来は台湾社会の一員であるはずの陸配(中国出身配偶者)は「反中・保台」の名の下に政治的に不適切とされ、排除の対象に。参政権も、政府の「二国論」的な立場のもとで剥奪されている。ネット空間ではポピュリズムが勢いを増し、健全な交流は遮断され、善意より敵意が勝る。中国へ渡航することさえ“伏せておくべきこと”となり、台湾へ戻った際の不利益を恐れて細心の注意を払う状況だ。
馬英九氏の陸生受け入れ政策は、両岸関係史の中で極めて貴重だった。憎悪が政治を覆う中で中断を余儀なくされたものの、中国側ではすでに良い影響を及ぼしている。他方で、対立を前面に押し出す政策が続いた結果、両岸関係は新たな段階へと移り、台湾にとっての機会は急速に細り、台海には目に見えない「終局感」が広がっている。
チャールズ・ディケンズ『二都物語』の一節にある通り、「それは最良の時代であり、最悪の時代であった。知恵の時代であり、愚かさの時代であった。信仰の時代であり、懐疑の時代であった。光の季節であり、暗闇の季節であった。希望の春であり、絶望の冬であった……」。憎悪と対立の種は、両岸でどのような花を咲かせ、どのような果実を結ぶのか。
*筆者はベテランのメディア関係者。原郷人文化工作室・執行長。
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