張鈞凱コラム:馬英九時代にまかれた種が、いま芽吹きつつある

2025-10-27 16:21
北京の清華大学台湾研究院は23日、「両岸関係新情勢学術シンポジウム兼清華両岸フォーラム」を開催。両岸の研究者が「台湾光復から民族復興まで」をテーマに円卓討論を行った。(筆者提供)
北京の清華大学台湾研究院は23日、「両岸関係新情勢学術シンポジウム兼清華両岸フォーラム」を開催。両岸の研究者が「台湾光復から民族復興まで」をテーマに円卓討論を行った。(筆者提供)
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台湾光復80周年を受け、中国で記念大会が開かれ、「台湾光復記念日」が正式に設けられた。これに先立ち、北京の清華大学台湾研究院は設立25周年を迎え、23日に「両岸関係新情勢学術シンポジウム兼清華両岸フォーラム」を開催。両岸から140人超の専門家・研究者が集まり、①両岸の政治・経済関係の新潮流、②社会交流の新局面、③若者のデジタル知識の新たな展望、④両岸関係を取り巻く外部環境の新動向――の4テーマで議論を深めた。関係が不安定な中、多くの台湾の著名研究者が北京入りして参加した点は容易ではなかった。

中国出身の留学生・研究者」が対台研究を身近に

筆者も会議に参加し、「香港から中国へ移る流れ」を参照しつつ、現在の台湾における「小紅書世代」の台頭や、若年層の「中国への感情」変化の背景と意味を分析。両岸の研究者から多様な見解を得る貴重な機会となった。参加して気づいたのは、中国の台湾研究コミュニティで、若手とベテランの間に課題意識や関心の核に差があることだ。ベテランは米中対立下の両岸の将来像に重心を置く一方、若手は両岸交流が社会面に与える実質的な影響を重視している。

この世代差は、両岸関係の客観的な変化に加え、研究者自身の歴史的条件や時空間的背景を映している。現在の対台・両岸研究の新たな活力は、各研究機関やシンクタンクの助教・准教授層に見られる。彼らの多くは馬英九政権期に学術訓練を受け、その開放政策の恩恵を受けて台湾で短期交流や正式学位を取得した。今回の清華フォーラムにも、学士から博士まで台湾で学び、通算11年滞在した研究者が参加していた。こうした中国出身の研究者グループは、台湾での実体験と認識を携えて帰国し、各分野で成果を上げつつ、対台研究の第一線でも活躍している。

前経済部長 尹啟銘 23日 北京清華大学で開催された「両岸関係新情勢学術シンポジウムおよび清華両岸フォーラム」でテーマスピーチを行った。(著者提供)
前経済部長の尹啟銘氏は23日、北京・清華大学で開かれた同シンポジウムで基調講演を務めた。(筆者提供)

対台政策というマクロの物語に比べ、台湾経験の厚い若手は、具体的かつ精緻な実証研究に軸足を置く。少なくとも清華フォーラムで示された成果には、両岸交流活動を長期追跡して多様な交流モデルを評価する研究や、台湾の若手エリートが議員選挙に参入する仕組みを分析し、「ゼロからの挑戦」と「政治家二世」との違いを比較する研究があった。後者は、研究者の台湾側の先輩に出馬意向があった事例に触発されたものでもある。こうした「中国出身の留学生・研究者」の参画により、これまで理屈先行になりがちだった対台研究に、体験に裏打ちされた理性的視点が加わり、研究の多様性と現場感が一段と高まっている。 (関連記事: 張鈞凱のコラム:中国、米国に「6つの矢」――レアアース輸出規制で反撃開始 トランプ政権を直撃 関連記事をもっと読む

「陸生元年」から「陸生末年」へ 両岸関係の大変局

留意すべきは、「陸生学者(=中国出身の留学生として台湾で学び、いまは研究・教育に従事する人々)」が研究成果を出すだけでなく、現場の教育活動も担っている点だ。すなわち、台湾で培った知見を中国のキャンパスで教え、若い世代へと伝えることで、両岸交流の“再生産”が生まれている。少子化で台湾の高等教育が縮小する一方、中国の対台政策は台湾籍教員の受け入れを拡大。対岸の大学で台湾籍研究者が教壇に立つ機会は増え、「陸生学者」とともに、中国の新しい世代の台湾観や両岸認識の形成にどのような影響を与えるのか、注視に値する。

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