舞台裏》台湾・太子グループで9億台湾ドル横領発覚 元幹部が3カ月で巨額資金を個人口座へ送金

2025-10-27 17:48
カンボジアの太子グループが台湾で内部抗争に巻き込まれ、同社が台湾の検察に支援を要請した事案。(写真/蔡親傑撮影)
カンボジアの太子グループが台湾で内部抗争に巻き込まれ、同社が台湾の検察に支援を要請した事案。(写真/蔡親傑撮影)
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米司法省と財務省は2025年10月中旬、電信詐欺や資金洗浄の疑いで太子グループに制裁を科し、数十億ドル規模の資産を押収した。制裁対象には台湾の企業9社と女性3人が含まれ、これを受けて台北地検、内政部刑事警察局、法務部調査局などが動員され、太子不動産や博居など関係企業の徹底調査に着手。過去数年にわたり電信詐欺の監督が不十分だった背景の解明を急いでいる。

捜査の過程で、同グループの運営・財務を担っていた台湾側の上級幹部が、数年前に自ら関与する台湾の会社で「汚職」に手を染め、約3カ月で9億台湾ドル(約44億円)超を巻き上げていた事実が浮上した。米国の制裁対象となりながら台湾に10回以上出入境していた資金洗浄の大物・陳志氏が各国を欺いた一方、台湾では“身内”に資金を持ち逃げされた格好だ。

太子集団陳志。(取自フェイスブックPrince Bank Plc.)
太子グループは詐欺容疑で米国から制裁を受ける一方、台湾では内部幹部が約9億台湾元を不正流用。写真は創業者で会長の陳志氏。(写真/Prince Foundation公式Facebook)

太子グループに詐欺容疑、台湾でも9億流出

世界展開する太子グループは統治の厳格さをアピールし、内部問題の公表も辞さず、台湾の当該幹部を相手取り民事・刑事で告訴。警察・検察の捜査網を通じて関係者の追及を進め、裁判所に損害賠償を提起するなど、人物・資金の回収に公権力を総動員している。

報道によれば、グループ資産侵害の疑いがもたれている張剛耀氏は、台湾・太子不動産および睿督(ルイドゥ)社の代表者だったとされる。調査では、同氏は2019年12月から2021年10月まで太子不動産の董事長(会長)を務め、台湾に設立された澄碩(チェンシュオ)、邁羽(マイユー)、博居(ボジュ)各社を管掌。これらの企業は米司法省・財務省の制裁リストに含まれている。

捜査関係者によると、当時、台湾地区の責任者だった張氏は同地域の運営と財務を統括。不動産会社の“大印鑑”を別企業の林泰榕氏に預けていたが、林氏は太子不動産の監察人でもあった。張氏は本社に気付かれぬまま、台湾法人から9億台湾ドル超をどのように引き出したのか。太子グループはリスクを顧みず捜査当局を招き入れ、不正の洗い出しを進めており、内部の不祥事が白日の下にさらされる可能性が高まっている。

調査局北機站。(柯承惠撮影)
倉庫管理責任者の張剛耀氏を追うため、太子グループは検察と調査局の協力を求めた。(写真/柯承惠撮影)

神出鬼没 巨額資金を個人口座へ送金

調べによれば、張剛耀氏は2020年と2021年の二段階で会社資金を流用した。まず2020年11月16日、澄碩の邱姓責任者に指示し、元大銀行営業部の会社口座から1100万米ドル(約16億円)を自身の個人口座へ送金。続く同年11月20日には、邁羽の責任者に命じ、会社口座の1000万米ドル(約15億円)を同じく個人口座へ移した。 (関連記事: 【新新聞】知られざる太子グループ カンボジアの銀行・空港・航空まで投資拡大、テマセク連携の報道も 関連記事をもっと読む

さらに2021年1月20日、睿督の銀行口座から自身の個人口座へ計400万米ドル(約6億円)と6793万台湾元(約3億円)を移す第2段階を開始。2021年2月1日には、博居の責任者に、会社口座にあった151万米ドル(約2億円)余りをカンボジアの銀行にある自分名義の口座へ送らせた。

この手口をわずか3カ月で4回繰り返し、合計2651万米ドル(約40億円)超と6793万台湾ドルを太子グループ台湾各社の口座から自らの口座へ移し替え、約9億台湾ドル相当を持ち去ったとされる。張氏と林泰榕氏は2021年10月以降、太子不動産の会長や監察人を退いており、円滑に退任したかは不明。ただ、太子グループはその後に資金流用を把握し、グループを引き継いだ林忠良氏が2022年8月、張・林両氏を告訴した。退任から約10カ月後のことだった。

カンボジア太子グループがシンガポールをマネーロンダリングの中継ポイントとして利用し、シンガポールの金融監督機構に多大な影響を及ぼした。(資料写真、太子グループ公式ウェブサイトより)
張剛耀氏は3カ月で400万米ドルと6,793万台湾元を自らの個人口座へ送金した。(写真/太子グループ公式サイト)
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