カンボジア「太子集団」のオンライン詐欺拠点、台湾にも 米制裁の関連9社に加え、台北101内に拠点

2025-10-17 17:02
米財務省・司法省の共同訴追を受けたPrince Holding Group創業者で会長の陳志氏(写真/Prince FoundationのFacebook)
米財務省・司法省の共同訴追を受けたPrince Holding Group創業者で会長の陳志氏(写真/Prince FoundationのFacebook)
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カンボジア・シアヌークビルでカジノ運営やオンライン詐欺に関与した疑いがある太子集団控股(Prince Holding Group)が、米司法省と財務省の共同訴追を受けた。台湾の関連9社――カンボジア不動産への投資勧誘を行う「台湾太子不動産」を含む――も制裁対象に指定された。もっとも、史上最大規模とされる暗号資産窃取(145億ドル)や違法賭博資金に関与した同グループの台湾関連企業はこれにとどまらない。グループ幹部の一人、Alan Yao氏は台湾で博弈系ゲーム会社「天旭国際科技」を経営し、オフィスは台北のランドマークである台北101に入居している。

太子集団のカジノ・オンライン詐欺関与疑惑は、米メディア「自由アジア放送(RFA)」でも報じられており、同グループの責任者・陳志氏の成り上がりの過程について詳細に伝えている。

オンライン詐欺グループが反詐欺映画を製作

陳志氏は1987年12月16日、福建省生まれ。個人投資先であるシンガポールのファンド運営会社・DW資本集団(DW Capital Holdings)の公式サイトでは「若きビジネスの天才」と紹介され、3歳以前から深圳で家業を手伝っていたと記されている。2011年にカンボジアの不動産市場へ参入、2014年に同国籍を取得し、2015年に太子集団を設立。シアヌークビル(現地で「西港」)で賭博ビジネスを拡大し、数千戸のアパートやホテルを保有するまでになった。なかでも総投資額3億ドル超とされる「金貝貴族酒店」「金貝博藝酒店」が象徴的な案件とされる。共同出資者のサー・ソカー(Sar Sokha)氏はカンボジアの内務大臣だ。

特筆すべきは、陳氏が2018年にカンボジアで映画『犠牲者(The Prey)』を製作した点である。中国の王遠睿監督がメガホンを取り、カンフー俳優の谷尚蔚氏が主演。中国の警察が東南アジアで詐欺組織と対峙する物語を描いた。

太子集団撮影のカンボジア反詐欺映画「犧牲者」(The Prey)。(取自IMDB)
 太子集団が製作したカンボジアの反詐欺映画『犠牲者(The Prey)』=(画像/IMDBより)

RFAの報道によれば、中国の刑事裁判所は2020年から2022年にかけた詐欺事件の判決で、太子集団を「悪名高い国際オンライン賭博犯罪グループ」と位置づけたとされる。北京警察も2020年5月以降、特別班を設けて同グループの捜査を進めてきた。一方で、太子集団の関係者は同期間中に台湾で複数の企業を設立しており、今回米国の制裁リストに挙がった9社も含まれる。

「台湾太子不動産」のウェブサイトによると、同社は不動産販売、国際的な投資誘致、物件管理、不動産投資など幅広いサービスを標榜。台北、バンコク、ロンドン、プノンペンなどの都市に展開し、「太子控股集団は海外に360万平方メートル(約109万坪)超の土地を保有し、開発面積は500万平方メートル(約151万坪)に達する。アパート、クラブハウス、商業センターから高級オフィス、ラグジュアリーホテル、さらに別荘や島嶼の開発まで、多様なプロジェクトを手がける。サステナビリティを掲げ、共により良い未来へ歩む」とうたっている。

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