アメリカの「イスラエル全面支持」が東南アジアを変える ガザ危機で高まる「反米と親中」の潮流

2025-10-16 12:48
2025年10月13日、米トランプ大統領がエルサレムでイスラエルのネタニヤフ首相の国会への演説を聞いている。(写真/AP通信提供)
2025年10月13日、米トランプ大統領がエルサレムでイスラエルのネタニヤフ首相の国会への演説を聞いている。(写真/AP通信提供)
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外交的ボイコットからスターバックスの損失に至るまで、アメリカがイスラエルを全面的に支持する一方で、東南アジアを中国の懐へと押しやる静かな地殻変動が進行しているのである。

アメリカのトランプ大統領が仲介した脆弱な中東和平合意が伝えられたとき、世界の多くの地域は安堵の息をついた。だが、急成長する経済圏であり、インド太平洋の安全保障の要とされる東南アジアでは、その安堵の裏に深い疑念と失望が交錯していた。ガザ地区の廃墟と人道的悲劇は、かつてないほどの衝撃をもって、ワシントンが数十年かけて築いてきた信頼の基盤を蝕みつつあるのである。

ブルームバーグのコラムニスト、カリシュマ・ヴァスワニ氏は15日付の記事で指摘した。東南アジアの6億を超える人口のうち、ほぼ半数はイスラム教徒である。長年にわたり、パレスチナ人への共感と連帯が根強く存在してきたため、アメリカの揺るぎないイスラエル支持は、極めて繊細で政治的リスクを伴う問題であった。現在、この不満は宗教的境界を越え、クアラルンプールからジャカルタ、バンコクに至るまで、ガザでの破壊に対する怒りがより広範な疑念へと変化している。すなわち、ホワイトハウスは国際法の前で二重の基準を抱いているのではないか、という問いである。

世論調査が示す東南アジアの方向転換

シンガポールのシンクタンク「東南アジア問題研究所(ISEAS–Yusof Ishak Institute)」が発表した年次報告書『東南アジア態勢(The State of Southeast Asia)』は、示唆に富む地殻変動を浮き彫りにした。2024年版によれば、イスラエルとハマスの衝突が南シナ海問題に代わり、東南アジアで最も注目される地政学的課題となったという。アメリカとイスラエルの緊密な関係は、世論の構造変化にも直接的に表れている。

2024年の調査では、「米中いずれかを選ばねばならない場合、どちらを支持するか」という設問に対し、ASEAN10か国の回答者のうち、中国を選んだ割合(50.5%)が初めてアメリカ(49.5%)を上回った。2025年版の最新調査では、アメリカ支持がわずかに回復したものの、「アメリカはイスラエルへの忠誠を何よりも優先する」という認識は、依然として根強く残っている。

シンガポール国立大学のチョン・ジャーイン副教授はこう分析する。「もしアメリカが中国との競争を長期戦と見なすなら、東南アジアのような重要地域を自陣にとどめておく必要がある。しかし、ワシントンのイスラエルに対するほぼ無条件の支持は、東南アジア諸国およびその国民との関係を深刻に損なっている」。トランプ氏が本気で東南アジアにおける中国の影響力拡大を抑えたいのなら、この紛争が呼び起こした強い怨恨を無視するべきではない。さもなければ、アメリカ政府が積み上げてきた goodwill と信頼は水泡に帰すおそれがあるのである。

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