人質救出と「和平の利益」で政治的清算回避も、イスラエル政権崩壊の火種

2025-10-15 13:10
2025年9月29日、米国のトランプ大統領がホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ首相と共に記者会見を開き、ハマスに対して72時間以内の和平案受諾を最後通牒とした。(写真/AP通信提供)
2025年9月29日、米国のトランプ大統領がホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ首相と共に記者会見を開き、ハマスに対して72時間以内の和平案受諾を最後通牒とした。(写真/AP通信提供)
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2年に及ぶ戦争を経て、イスラエルとハマスの双方は10月12日、人質と囚人の交換を実現し、ドナルド・トランプ大統領が推進する「ガザ和平計画」第1段階を完了した。トランプ氏は13日、イスラエル国会で演説し、「新たな中東の歴史的夜明けだ」と高らかに宣言したうえで、ベンヤミン・ネタニヤフ首相に対し「特赦を与えろ」と議会に呼びかけた。汚職裁判と安全保障上の責任追及に直面する鷹派の首相にとって、政治的延命の糸口となる発言となった。

フィナンシャル・タイムズの分析によると、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、自身の政治生命をドナルド・トランプ氏がもたらす「和平の利益」に賭け、地域的な和解の成果を利用して、国内の有権者による政治的清算を回避しようとしている。しかし、ガザ和平計画の第2段階――恒久停戦、ハマスの武装解除、イスラエル軍のガザ撤退、国際安定部隊の展開――および「二国家解決」構想は、ネタニヤフ政権の命運を左右しかねない「時限爆弾」となっている。

人質交換が成功 トランプ氏、喝采浴び外交舞台で存在感

2年に及ぶガザ戦争がついに停戦へと踏み出した。ハマスに拘束されていた最後のイスラエル人人質20人(いずれも20代から40代の男性)と、24人の遺体が帰還した一方、イスラエルの刑務所に収監されていた約2000人のパレスチナ人囚人も釈放され、その中には無期懲役囚250人も含まれていた。大規模な人質交換は13日に実施され、双方の社会に大きな歓喜の渦を巻き起こした。ドナルド・トランプ氏もこの機会にイスラエルとエジプトを電撃訪問し、政権にとって最大の外交的成果として高らかに宣伝した。

トランプ氏は13日、イスラエル国会で演説を行い、拍手に包まれながら戦後構想を語った。氏はイスラエルとハマスの停戦を「新たな中東の歴史的夜明け」と称し、「イスラエルと周辺諸国との壮大な調和と持続的な平和の始まりだ」と強調した。さらに「数十年にわたりこの地域を苦しめてきた混乱とテロ、破壊勢力は、いまや弱体化し、孤立し、完全に敗北した。テロとの戦いで得た勝利を、中東全域の恒久的な平和と繁栄へと結びつけるときが来た」と訴え、長年の宿敵であるイランにまで和平の手を差し伸べた。

同日夜、トランプ氏は仲介国の一つであるエジプトを訪れ、シャルム・エル・シェイクでガザ和平サミットを主催した。トランプ氏とエジプト、トルコの大統領、そしてカタールの首長がガザ和平合意文書に署名。アブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領はトランプ氏の仲介努力に謝意を示し、この合意を「地域に残された最後の和平の希望」と評した。シーシー氏はまた、「二国家解決こそが恒久和平を支える唯一の道」であり、パレスチナ人には「イスラエルと並び立つ独立国家で生きる権利がある」と強調した。 (関連記事: トランプの圧力下で進展する「ガザ和平」、パレスチナ科学者はイスラエルの協定遵守に懸念表明 関連記事をもっと読む

ネタニヤフ氏、和平の恩恵で政治的清算を回避

この外交的勝利の熱気のなかで、ベンヤミン・ネタニヤフ首相もまた、スポットライトを浴びるもう一人の主役となった。ドナルド・トランプ氏はイスラエル国会での演説の終盤、この窮地に立たされた首相に向かって「彼に特赦を!」と大声で呼びかけた。さらに「私はこの男が好きなようだ……彼は史上最も偉大な戦時の指導者の一人だ」と“告白”し、ネタニヤフ氏に向き直って「あなたはとても人気者だ。それはなぜか?勝ち方を知っているからだ」と言い放った。

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