トップ ニュース 台湾・林佳龍外交部長、日本・比・米・欧を歴訪 第一列島線で日・比と連携、中国の権威主義に対抗
台湾・林佳龍外交部長、日本・比・米・欧を歴訪 第一列島線で日・比と連携、中国の権威主義に対抗 台湾外交部の林佳龍部長が『中央廣播電台』『産経新聞』など国内外メディアの取材に応じた。(写真/外交部提供)
台湾外交部の林佳龍部長は、後半の外遊で日本、フィリピン、米国、欧州を相次いで訪問。帰国後は『中央広播』『産経新聞』など国内外メディアの取材に応じた。林氏は、第一列島線の民主国家が「協調・分業・協力」による安全保障の枠組みを構築すべきだと強調。台湾と日本の二国間関係を一段引き上げ、フィリピンや第三国市場への共同投資を進めるほか、フィリピンとは「三位一体」の総合外交による“小規模多国間”協力で、権威主義の挑戦に共同対処できるとの見方を示した。
林氏は就任後、「総合外交」を政策の柱に据え、「栄邦計画」で友好国を歴訪。昨年はテック外交を掲げリトアニアやポーランドを訪れた。今年(2025年)7月下旬には私的名義で東京都を訪問し、台日断交から53年で外相が“壁”を越えた。8月下旬には米台商会とともに黄昭欽・農業部政務次長らと約70人の経済代表団を率いてフィリピンを視察。9月中旬は文化外交を名目に欧州を回り、同月下旬には米ニューヨーク、その後ポーランドのワルシャワ安全保障フォーラムにも出席した。
多忙な出張を終え、10月上旬に『中央広播』『産経新聞』のインタビューが相次いで掲載された。林氏は、直近2度の欧州訪問はそれぞれ文化外交とシンクタンク外交がテーマだと説明。欧州は多様な文化と理念交流を重視しており、台湾が文化を橋渡しに欧州へ踏み込むことで、中国の権威主義との対比が浮き彫りになると指摘した。文化外交は展示ではなく民と民の認識共有であり、総合外交は文化に加え、テクノロジー、経済・通商、議会、シンクタンクの往来を含む。「価値外交」から一歩進め、共通理念に基づく「付加価値外交」で実質的な互恵を生み出すべきだと述べた。
第一列島線の「協調・分業・協力」 台比は小規模多国間を強化 林氏は第一列島線に位置する日本とフィリピンを続けて訪問。台湾・日本・フィリピンが連携し、中国のグレーゾーン行動や偽情報、海底ケーブル防護など新たな脅威に対応したいと語った。第一列島線の民主国家で安全な枠組みを構築し、米国や価値を共有する国々とともにインド太平洋の平和と安定を維持する考えだ。
林佳龍部長(右)、日本の『産経新聞』のインタビューで、日台比の連携によるインド太平洋の民主防衛線強化と地域脅威への対応を説明。(写真/外交部提供) フィリピンに関しては、価値外交・同盟外交・経済外交を総合外交の三本柱と整理。両国は民主国家として中国共産党政権とは明確に異なる価値観を持ち、第一列島線の“運命共同体”として相互に支え合う必要があるとした。フィリピン側は台湾および台湾企業からの投資に強い期待を示しており、台湾は経済・通商協定の締結、ビザ免除の付与、公式往来の制限緩和を求めているという。台湾政府は、フィリピンの対台湾政策に大きな変化が見えるとして、特別に投資・通商団を編成したと明らかにした。
さらに、三位一体の観点から地域情勢を分析。台湾とフィリピンは二国間に加え“小規模多国間協力”を強化し、中国の権威主義的拡張や第一列島線突破の企図に共同で対処すべきだと強調した。台湾は「台比経済回廊」を米・日・比の「ルソン経済回廊」と接続し、半導体、AI、スマート農業、新エネルギーなどで連携を深めたい考え。通商やビザ免除の協議に加え、セブに出先を設け、比南部でのサービスを強化する方針にも言及した。
高市早苗氏の先見性を評価 日台関係の格上げを 日台関係では、自民党の新総裁・高市早苗氏の「先見性と決断力」を高く評価。4月の高市氏の訪台時には外交部で昼食会を主催し、7月の訪日時にも会談したことを明かした。高市氏は公の場で故・安倍晋三氏の「台湾のことは日本のこと」をたびたび引用しており、インド太平洋戦略の観点から台日関係を位置づけていると指摘。米国の不確実性が高まるなかで、高市氏の政策は台湾により良い“同盟外交”の余地を提供すると述べた。
8日、林佳龍部長が『中央廣播電台』番組「早安・台灣(おはよう・台湾)」の単独インタビューに出演。(写真/外交部提供) 台湾としては、日本がインド太平洋でより積極的なリーダーシップを発揮することを期待。二国間関係を新たな段階に引き上げ、相互補完的な「包括的パートナーシップ」を推進し、フィリピンや第三国市場へ共同投資を提案した。台湾のCPTPP加盟申請では日本の主導に期待し、日台が「経済連携協定(EPA)」交渉を並行して進めれば、双方の国際競争力と交渉力の強化につながるとした。
台米関係は米中の従属ではない 主権は国連憲章の自決に基づく 台米関係については、「米国社会と議会の対台湾支持は超党派の合意だ」と強調。台米は米中の影響を受けるものの、米中関係に従属する関係ではないとした。台湾が米国の安全保障と世界のサプライチェーン安定に不可欠だからだという。主権問題では、第二次大戦時の文書を中国が恣意的に解釈していると指摘し、「関連文書は台湾の最終的な政治地位を確定していない」と述べた。
さらに、台湾の民主化の歩みと国連憲章の「民族自決」の原則に基づき、台湾の主権は台湾人民に帰属することを再確認。中華人民共和国は1949年成立であり、1945年以前の中国と結び付けた法文書の解釈は成り立たないとした。台湾は民主化を経て3度の政権交代を経験し、憲法上の主権は国民全体に属すると強調。「われわれは民主国家であり、国名は中華民国である」と語った。
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