舞台裏》台湾・台北市公務員が「大量流出」内幕 蔣萬安市政で何が起きているのか

2025-10-17 17:18
蔣萬安氏(右)は市長就任から3年。台北市の公務員不足は一段と深刻化している。(写真/柯承惠撮影)
蔣萬安氏(右)は市長就任から3年。台北市の公務員不足は一段と深刻化している。(写真/柯承惠撮影)
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台湾・台北市の蔣萬安市長は就任から3年を迎え、2026年の再選に向けた準備段階に入った。ただ、このところ地方補助金の配分をめぐって行政院と対立したほか、NVIDIA(エヌビディア)の本部進出が北士科で停滞、公館円環の撤去、双城フォーラムの延期など、市政課題が相次いでいる。

外的要因に加え、市府内部の問題もくすぶる。議員からは「政策が紙の上で止まっている」との指摘も出ており、前任2市長期より深刻だとの見方が広がる。市政府で何が起きているのか。

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市政課題はくすぶり、前任2市長期より深刻との指摘も。議員からは「政策が紙の上で止まる」との声が上がる。(写真/読者提供)

公務員の引き留め 柯文哲氏は郝龍斌氏を上回る

2013年、台北市政府は行政院と連携して機構再編を実施。以降の公務員の予算定数は概ね7.7万~7.6万人、実員は6.8万~7.1万人で推移してきた。つまり、誰が市政を担っても、毎年5,000~7,000人規模の恒常的な欠員を抱えてきたことになる。

機構改編は国民党の郝龍斌市長任期末の2年から本格化。2013年の欠員は7,223人だったが、翌2014年は6,891人へと縮小し、不足率も9.28%から8.84%へ小幅改善した。加えて、2014年は2013年より予算定数が増えており、任期末にかけて欠員を一定程度埋めたといえる。

後任の柯文哲市長(当時・民衆党)は、就任1年目の2015年に欠員が6,961人とやや増加したものの、2016年以降は減少基調に転じた。欠員は2016年6,752人、2017年5,572人、2018年5,006人、2019年4,892人、2020年4,896人。2021年と2022年は反転し、それぞれ5,685人、6,087人に戻った。

欠員数の低下は予算定数の縮小とも相関するが、柯氏期は不足率自体も下がった。2015~2020年の不足率は9.03%、8.83%、7.35%、6.63%、6.43%、6.42%と推移し、2021年は7.48%、2022年は8.01%へ再び上昇している。

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蔣萬安氏の3年で1,500人減 前任2氏を下回る人員維持力

国民党の蔣萬安市長(第5代)就任後の欠員は拡大傾向だ。2023年は欠員6,542人、不足率8.59%で、2022年の6,087人・8.01%から悪化。2024年は7,326人・9.61%へさらに上昇し、2025年8月時点では8,324人・10.89%と、年々拡大している。

月次で見ると、2023年は欠員6,730~7,429人で、不足率は最低が1月の8.84%、最高が7月の9.74%。2024年は6,834~7,816人で、最低が1月の8.97%、最高が7月の10.25%。2025年は1月が最少で7,644人・10.01%、8月が最多で8,324人・10.90%と、新たな高水準を記録した。

また、捷運公司と市立連合病院を除く市政府各局処の職員数で比較すると、蔣氏就任直後の2023年1月は5万8,538人だったのに対し、2025年8月は5万7,033人。3年間で1,505人減少した計算になる。歴代市長と比べても、公務員の流出抑止力は柯文哲氏、同党の郝龍斌氏いずれよりも弱い。

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