呉典蓉コラム:台湾・国民党の選挙が混迷するのは盧秀燕台中市長のせいか?

2025-10-16 17:24
台中市長の盧秀燕氏が国民党党主席選挙への立候補を放棄し、今は党内の激しい争いを見るばかりである。写真は盧秀燕氏が国民党凱道「同意しない解任」選挙前夜に参加した際の様子。(写真/陳品佑撮影)
台中市長の盧秀燕氏が国民党党主席選挙への立候補を放棄し、今は党内の激しい争いを見るばかりである。写真は盧秀燕氏が国民党凱道「同意しない解任」選挙前夜に参加した際の様子。(写真/陳品佑撮影)
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本来は形式的で少し退屈で、そのはずだった台湾の国民党主席選が、「我々に明日はない」と言わんばかりの激突に化けたのは意外だった。とりわけ驚かされたのは、これまで緑陣営(民進党)の「紅いレッテル貼り」(親中派と決めつける攻撃)に晒される側だった国民党で、戦闘藍(国民党強硬派)の司令塔・趙少康氏が突如「境外勢力」(海外勢力の介入を示唆する台湾の政治用語)カードを切り、ついには国安局まで主席選に「関与」させる展開を招いたことだ。国民党を中国共産党の「協力者」的存在と位置づける――それは民進党が長年追い求め、大規模リコールでも果たせなかったゴールだったが、趙氏は一足飛びにそこへ到達してしまった。

一軍は出ず、二軍が暴れる?

今回の出馬者たちは、2028年の総統選に出ないと誓約している。いわば「代理戦」にすぎないのに、なぜここまでゼロサム化したのか。振り返れば、党内の「一軍」大物が国民党という組織の力を見誤っていた面は否めない。最有力視された盧秀燕氏が最終的に不出馬を選んだ背景の一つには、財政・人員ともに脆弱(多数の組織が連署訴訟で起訴)のまま、32対0という「リコール完勝」を達成した事実がある。「国民党の組織力は大選の勝敗を左右しないのでは」という誤解が生まれても不思議ではない。しかし現実には、国民党の組織はなお強靭で、同時に“悪用”され得ることも過小評価すべきではなかった。神殿(組織)は小さくないが、内紛には妙に手慣れている――一軍が二軍を放置したツケが、今の収拾不能を招いている。

民進党にとって国民党は、過去の歴史や正義を踏みにじった象徴だ。1980~90年代の権威主義からの転換期に、多くの権威主義政党が瓦解・再編されたなか、下野後に再び政権を奪回できた例は多くない。にもかかわらず国民党は、いまなお全22県市のうち6割超を握る“地方与党”の顔を持つ。国際社会が反中ムードを強める中でも、台湾の選挙で公然と「中国」の名を冠し、緑陣営から“紅い烙印”を押され続けながら、最大野党の座を保ち続ける。そんな“奇妙な”政党である。版図は縮み、南北格差も拡大したが、それでも半分の地盤を守り切っているのが現状だ

国民党が生き延びるほんとうの理由

国民党はなぜ残っているのか。盧秀燕氏の最初の見立ては、実は的確だったのかもしれない。国民党が“正しいこと”をやったからではない。理由は別にある。

陳水扁政権発足以降、民進党の大目標は「恒久的な多数」だ。そのためには国民党を「歴史のごみ箱」へ。いわゆる“紅いレッテル貼り”、地方選での徹底抗戦、党資産処分、メディア戦(中天の停波や三立・民視への補助)、サテライト系のネット動員、そして今年は司法での追撃まで。なかでも“大規模リコール”は国民党の正統性を根底から否定する最強手段だった。にもかかわらず国民党がなお存続しているのは、そのリコールの投票結果ゆえでもある。多くの藍系立法委員の反対票が本選の得票を上回る例すら出た。つまり有権者の一部は「国民党だから」ではなく、民進党がリコールを梃子に“一党支配”へ近づくのを拒んだ、ということだ。

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