フィリピンが「台湾防衛の鍵」に変貌?豪日と連携強化で地政学の中心に浮上

2025-10-16 16:51
中国海軍のある艦艇編隊が遠海戦備訓練を行う。(写真/中国軍ネットより)
中国海軍のある艦艇編隊が遠海戦備訓練を行う。(写真/中国軍ネットより)
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フィリピン・サンビセンテの紺碧の海を、海兵隊第7営の隊員がゴムボートで切り裂く——8月に実施された比豪共同演習「アロン(Exercise Alon)」の一幕だ。これは両軍の連携強化の象徴であると同時に、東アジアの地政学が転換点を迎えたことを示す序章でもある。いま世界の視線は「地球上で最も危険な海域」と呼ばれる台湾海峡に注がれているが、その陰でフィリピンが静かに台頭。民主陣営が北京に対峙し、台湾を“間接的に守る”戦略の要に据えられつつある。

米インド太平洋安全保障研究所のシニア研究主任で、グローバル台湾研究センター非常勤シニア研究員のマイケル・マッザ氏は10日付ザ・ディプロマット』への寄稿で指摘する。米国は台湾と“非公式だがきわめて深い”関係を維持する唯一の国だが、中国の統一志向が公然と語られるいま、多くの国は台湾との関与を深めつつも、北京の逆鱗に直に触れない“回り道”を選びがちだ。その綿密に組まれた世界的な布陣の中で、フィリピンは南シナ海の係争当事者という枠を超え、中国に対抗する力の流れを束ねる中枢へと位置づけを変えている。

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この変化の核は、フィリピンが伝統的同盟国や域内大国との関係を作り替えたことにある。

オーストラリアとフィリピンは2025年8月に、26年の締結を見据えた新たな防衛協定の骨子を大々的に公表。国防相の定例会合を制度化し、大規模な共同演習を拡充、さらには豪州からの防衛インフラ投資への道筋を開いた。リチャード・マールズ豪国防相は「比軍のため、五つの地点で八つの基盤整備プロジェクトを進める」と明言している。

この動きは、米比の《強化国防協力協定(EDCA)》を想起させる。EDCAで米軍は比軍基地へのアクセスを拡大し、国防総省は該当基地のアップグレードを進行中だ。狙いは明快——南シナ海と台湾海峡へのプレゼンス投射力を高めること。豪州も同じ方向に舵を切り、比豪で共同整備する拠点の立地は、両国パートナーシップの共通ビジョンを映すことになる。

「アロン」期間中、豪州はF/A-18「スーパーホーネット」とEA-18G「グラウラー」を投入し、これを「近代豪州で域内最大規模の海外統合部隊投射」と位置づけた。豪統合作戦司令官の表現を借りれば、訓練は「現実的なハイエンド戦闘」そのものだった。

同時に、アジアのもう一つの柱である日本も、未曽有のスピードで対比安保協力を前進させている。2025年9月には《日比円滑化協定(RAA)》が正式発効。これにより、共同訓練・産業協力・技術交流・インフラ開発を阻む法的障壁が大幅に低減した。ジルベルト・テオドロ比国防相は「この協定は、我々の最も強力な国家ツールである武装部隊の共同運用性を担保するもの。目的は“秩序を壊す”ことではなく、ルールに基づく国際秩序を維持し、狭い国益での秩序の私物化を退けることだ」と強調する。

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