王義雄の見解:初の女性総裁・高市早苗氏 日中の「歴史的対立」を深めるのか、それとも緩和へ導くのか

2025-10-17 17:27
高市早苗氏は4日、自民党総裁選挙で勝利した。(写真/AP通信)
高市早苗氏は4日、自民党総裁選挙で勝利した。(写真/AP通信)

自民党総裁選が終わり、経済安全保障担当相を務めた高市早苗氏(64)が第29代総裁に選出された。党創設70年で初の女性党首となり、日本史上初の女性首相誕生の可能性も現実味を帯びる。この節目は内政にとどまらず、東アジアの中日台関係にも大きな影響を及ぼす見通しだ。安倍晋三氏の盟友とされ、「女性版・安倍」とも評される高市氏は、保守的な立場と対中強硬姿勢で各方面の注目を集めている。

当選の報に、中国本土側は「厳戒モード」とも言える反応を示した。官製メディアは素早く速報を打ち、高市氏の右傾化を批判する記事を相次いで掲載。ネット上では「超右翼」「反中の首相」といったレッテルも見られた。『環球時報』前編集長の胡錫進氏は、高市氏の台湾問題への態度を「悪質」と断じ、「中国人が最も反対する立場だ」と発言している。

学界でも短命政権との見方が目立つ。報道によれば、中国の研究者3人がインタビューで「首相として長くは持たないだろう」「1年の任期を超えられるか不透明だ」との見解を示した。対中強硬への警戒感の強さと同時に、政治的安定性に疑義を投げかけることで、日中関係への負の波及を抑えたい思惑もうかがえる。

高市氏は経済安全保障分野での経験から対中警戒感が強く、安倍政権期の「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を継承。米・豪・印との枠組み(QUAD)を一層強化し、中国の地域的な影響力を圧縮しようとしている。経済面でも、半導体やAIなど重要技術のサプライチェーンで中国依存を下げる方針が想定され、技術競争の重要性を踏まえ、より厳格な輸出管理の導入も見込まれる。

台湾との関係では、長年の緊密な交流から「台湾支持派」の政治家として知られる。台湾海峡の安全保障をめぐっては一貫して強い姿勢を示し、台湾の民主主義への支持を繰り返してきた。首相就任の可能性が高まる中、台日関係は一段と深化する公算が大きく、特に安保協力や経済・技術分野での連携拡大が期待される。

一方、民進党政権が米国の政策不確実性に直面するなかで、日本の支援を求める動機は強い。高市氏の選出は台湾にとって戦略的な好機となり得る。両者は半導体協力、海洋安保、情報共有などで調整を強める可能性がある。ただし、強硬な対中姿勢が台湾海峡の緊張を高めるリスクも否定できない。高市氏は同問題で刺激的な発言を重ねており、首相に就けば政策運営が中国の対抗措置を誘発する可能性がある。事態のエスカレーションには注意が必要だ。

中国側はすでに高市氏の台湾問題に対する立場へ不満を表明し、「悪劣」との評価を示している。挑発的な言動や政策が続けば、中国が「統一」プロセスの準備を加速させ、台湾海峡の平和と安定に損害を与える恐れがある。 (関連記事: 自民党・高市早苗氏が維新会と政策協議開始 新連立政権誕生の可能性も 関連記事をもっと読む

韓国メディアは高市氏の当選に強く反応し、「極右」との位置づけのもと、慰安婦問題や靖国神社など歴史認識をめぐる姿勢に注目している。これらは長年、日韓関係の中核的な障害となってきた論点であり、高市氏の保守的立場は二国間に新たな課題をもたらす可能性がある。氏は靖国神社参拝で強硬な立場を示してきたとされ、韓国世論との摩擦は避けがたい。就任後も同様の姿勢を続ければ、関係の後退は現実的な懸念となる。

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