うわさの絶えなかった「トランプ・習近平会談」について、米財務長官ベッセント氏がついに言及した。CNBCのインタビューで、「ワシントンは中国との貿易摩擦をエスカレートさせるつもりはなく、トランプ氏は今月後半、韓国で習近平氏と会う準備ができている」と発言。両国の官僚が連日連絡を取り合い、会談のセットに全力を挙げていると強調した。ワシントンとしては世界第2位の経済大国とのデカップリングは望まないという。
合意が成立すれば、誰が利益を得るのか
今回は米政府が一方的に事実関係を先に公表した格好だが、中国本土側はまだ正式に発表しておらず、来週の中国共産党・四中全会に合わせて公表される見通しだ。足元の北京は国内の「内循環」と高失業率の解消を最優先とし、対米姿勢は従来通り「米国への政策は一貫しており、逃げることはない」との外務省トーンを維持する。一方、一般市民の感覚は「大国の綱引きより、まずは食えるかどうかが肝心」に尽きる。
直近数カ月、中国の対外貿易は減速の兆しが濃い。かつてのように“転輸貿易”を積極鼓舞する様子は薄れ、第138回広交会でもバイヤーの現地発注はあるものの、実際の手付金支払いは伸び悩む。ベッセント氏が懸念を示した通り、希土類の規制やトランプ氏の関税上乗せを受け、双方の金融市場や外交は混乱を来している。
米国は「関税の威嚇でサプライチェーンを奪う」と中方を批判
中共指導部はこれまで「強固な内循環があり、米国の脅しは恐れない」と強調してきた。だが、通商戦の長期化の中で、実態は逆行している面もある。北京は関税での被害者ポジションを取り米国を非難する一方、米側は「中国の通商交渉団は“狼戦士”のようで、合意履行が不十分」と反論。企業家の間では、度重なる交渉の裏で何が合意され、なぜ揺らぐのか疑念が募る。

ベッセント氏は最新の会見で、中国側交渉代表の李成鋼氏を名指しで批判。経済ブロガー「宏観辺際MacroMargin」も、米国が同盟国と連携し中国の希土類に対する“域外的支配(長腕管轄)”に抗う決意は固いと指摘する。こうした制約下で、同氏は「米政府は国家安保上重要な分野への投資を拡大する可能性がある。希土類、半導体、製薬、鉄鋼などで、希土類については価格の下限設定と戦略備蓄を行う」と述べた。
米政府はすでに連邦補助金の手法を見直し、インテル、鉱物採掘のTrilogy Metals、希土類のMP Materialsなど、特定企業への直接出資へ軸足を移しつつある。
これに対し、中共系『環球時報』英語版は最新コラムで、「一部米政治家にとって『協力』とは、ワシントンがタダ飯を食うことを意味するらしい。中国は支払いだけでなく、ワシントンのあらゆる要求に応じ、後始末まで担えと言うのか」と皮肉った。矛先はむしろ米側に向けられている。

金相場に火 店舗は若年層でごった返し
通商摩擦の長期化は、本土の金価格高騰にも波及している。ここ数日、北京の金販売店は人で溢れ、若年層の姿も目立つ。「米中が本当に武力衝突するかは分からないが、今は金の方が安心だ」という声が聞かれる。
上海黄金取引所は最近、「リスク管理の徹底、緊急対応計画の維持、市場の安定運営を確保」との公告を発出。こうした通知はコロナ禍初年の2022年以来だという。市民からは「豊年は米、不作年は金」との古い言い回しを引きながら、物価上昇の重みを嘆く声も上がる。
店頭だけでなく、工商銀行や建設銀行など複数行も相次いで告知を出し、本土外の貴金属価格の変動が激しく、市場リスクが高まっていると注意を促した。金の買い取り業者によれば、「毎日数十件の持ち込みがある。昨年買った延べ棒を売って現金化し、700万元超の利益を得たケースも出ている」という。
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