舞台裏》台湾・林佳龍外交部長が極秘訪比 「東京モデル」に続き第一列島線で外交加速、中国は強く反発

2025-09-01 15:40
民進党が大規模リコールで混乱する中、台湾の林佳龍外交部長(写真)は、禁忌を破り日本とフィリピンを相次いで訪問した。(写真/林佳龍フェイスブックより)
民進党が大規模リコールで混乱する中、台湾の林佳龍外交部長(写真)は、禁忌を破り日本とフィリピンを相次いで訪問した。(写真/林佳龍フェイスブックより)
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台湾・民進党内では、総統頼清徳氏や立法院党団総召の柯建銘氏を中心に、主導権をめぐる動きが取り沙汰されている。その最中、党内派閥「正国会」のリーダー格である林佳龍外交部長は、台北政界の騒音を背に再び表舞台を離れた。思い起こせば7月26日の大規模リコール投票直前、林氏は日本との断交から53年ぶりに外相として東京を訪れ、タブーを破ったばかりだ。今回はさらに南方へと向かい、約70人を引き連れてフィリピンを訪問。首都マニラに加え、地政学的に敏感な地点も歴訪した。北の日本、南のフィリピンと第一列島線の要衝を相次いで訪れたことは、中国の「島嶼突破」への警戒感を改めて示した格好だ。

8月27日午前2時ごろ、マニラで発行される華文紙『フィリピン商報』が記事を掲載し、北京寄りとされる「アジア世紀戦略研究所」副所長アンナ・マリンドッグ=ウイ氏の談話を引用して林佳龍氏の訪比を明らかにした。台湾とフィリピン両政府は最後まで公式には沈黙を貫いたものの、中国外交部は8月29日夜に声明を発表し、フィリピンが林氏の「違法な訪問」を容認したと強く非難。論調は1か月前の日本訪問時と同じく厳しいものであった。台湾外交部の呉志中政務次長は林氏について「海外任務中」と説明するにとどめ、具体的な目的には触れなかった。

20250831-総統賴清徳31日出席「第21回国際東洋医学学術大会」。(柯承惠攝)
民進党の頼清徳総統(写真)と柯建銘党団総召は、党内権力闘争という「茶壺の嵐」に巻き込まれている。(写真/柯承惠撮影)

「東京モデル」から「マニラモデル」へ

1971年に中華民国が国連を脱退した後、1972年に日本、1975年にフィリピン、1979年に米国が相次いで台湾と断交した。米国務省や日本外務省は長年にわたり、台湾の総統、副総統、行政院長、国防部長、外交部長といった要職の訪問を認めない「ブラックリスト」を維持してきた。フィリピンも自国官僚の訪台を厳格に制限してきたが、台湾からの訪比には例外もあった。1997年には外交部長だった章孝嚴氏(現・蔣孝嚴氏)が「休暇」を名目に訪問し、さらに1994年には李登輝総統が「休暇」で渡航し、当時のラモス大統領と会談している。

林氏の7月訪日が「東京モデル」として53年ぶりの突破口を開いたのに対し、今回のフィリピン訪問は1961年に沈昌煥外交部長が韓国・ベトナム・フィリピンとの「四国外相会議」に出席して以来、64年ぶりに外相が公務としてマニラに足を踏み入れたものであり、新たな「マニラモデル」と位置づけられている。

前総統李登輝感冒入院、憲法改正を心配し続ける。(資料写真/林韶安撮)
李登輝元総統(写真)は1994年、「休暇」を名目にフィリピンを訪れ、当時のフィリピン大統領フィデル・ラモスと会談した。(写真/林韶安撮影)

出発数日前に最終決定 水面下の交渉は半年以上前から

日本訪問は約1か月前には行程が固まっていたが、今回のフィリピン訪問は直前まで最終決定が下されなかった。ただし、外交部や駐フィリピン代表処、国際協力発展基金などは早くから調整を進めていた。林氏が6月13日に在台フィリピン機関「マニラ経済文化弁事処(MECO)」の国慶レセプションに出席するよりも前から、双方は頻繁に協議を重ねていたという。最終的に林氏が団長として訪問することが決まったのは、出発のわずか数日前だった。

林氏一行の訪問は徹底して秘匿され、外部が知ったのは『フィリピン商報』の記事やフィリピン上院外交委員会での質疑を通じてだった。台湾外交部が初めて公式声明を発表したのは、林氏が8月30日夕に帰国した後。声明には「林佳龍氏の調整の下、駐フィリピン台北経済文化弁事処とマニラ経済文化弁事処の緊密な協力で実現した」とだけ記され、本人の出発については一切触れられなかった。

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