インドネシアではこの1週間、首都ジャカルタを中心に激しい警官と市民の衝突が続いている。抗議の群衆は警棒や盾、催涙ガスを前にひるむことなく、街頭で警察と正面衝突。さらには警察車両に火を放ち、怒りを爆発させている。では、なぜ市民はここまで激しく警察と対立しているのか。その背景が注目されている。
きっかけは「警察車両による配達員死亡事故」
混乱の発端は、21歳の配達員アファン・クルニアワン(Affan Kurniawan)氏が警察車両にひかれ死亡した事故だった。彼はデリバリーの途中で偶然デモの現場付近を通りかかり、群衆を排除しようとした警察の装甲車にはねられて命を落とした。抗議活動には参加していなかったにもかかわらず、無実の若者が犠牲になったことで国民の怒りは一気に爆発した。
Hundreds of Indonesians protested at sites across Jakarta over the death of a civilian hit by a police vehicle, triggering calls for police reform in the first major test for President Prabowo Subianto's governmenthttps://t.co/X1Dy4hnmXnpic.twitter.com/hBK1TU2swH
— Reuters (@Reuters)August 29, 2025
本来の抗議は議員の高額手当や教育費不足
当初、市民の抗議は議員の高額な給与・手当や教育予算不足など政府への不満に集中していた。しかし配達員死亡事件を受けて、抗議の矛先は警察権力そのものに向けられた。最新の報道によれば、29日までに少なくとも3人が死亡、5人が負傷し、600人以上が警察に拘束されたとされる。



「殺人犯」と叫ぶ群衆
ジャカルタ国会議事堂や警察本部前には、カラフルな制服を着た配達員や学生、市民ら数百人が集結。「キラー! キラー!(殺人犯!)」と叫びながら石を投げ、警察に対し謝罪を求めた。怒りの矛先は議員の私利私欲を超え、警察の行き過ぎた権力行使に集中している。
社会への影響――休校・在宅勤務も
大規模デモの影響で、一部の学校は授業を取りやめ、銀行や企業も従業員に在宅勤務を指示した。地元メディアによると、治安部隊だけでなく軍も一部地域で事前に展開し、混乱の拡大を防ごうとしている。
ジャカルタだけではない抗議活動
市民の抗議が首都ジャカルタから全国へと広がり、大規模な衝突映像がSNSで拡散する中、プラボウォ・スビアント大統領は冷静な対応を呼びかけ、犠牲者への哀悼を表明。独立調査を指示したものの、街頭の抗議は収まる気配を見せていない。 (関連記事: インドネシア全土で暴動拡大 配達員死亡が引き金、国会自肥と警察暴力に国民の怒り爆発 | 関連記事をもっと読む )
抗議は首都だけでなく、ジャワ島のスラバヤやバンドン、スラウェシ島のゴロンタロでも発生。象徴的な緑色のジャケットを着た配達員たちが大挙して参加し、地域住民と共に街頭で不満を訴えた。