インドネシア全土で暴動拡大 配達員死亡が引き金、国会自肥と警察暴力に国民の怒り爆発

2025-09-01 08:03
2025年8月29日、インドネシアのジャカルタで、国会議員の利己的行動に抗議する学生と機動隊が衝突し、一人の配達員が死亡したことを契機に全国的な大規模暴力抗争に火がついた。(写真/AP通信提供)
2025年8月29日、インドネシアのジャカルタで、国会議員の利己的行動に抗議する学生と機動隊が衝突し、一人の配達員が死亡したことを契機に全国的な大規模暴力抗争に火がついた。(写真/AP通信提供)
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東南アジア最大の経済大国インドネシアが、1998年の「改革運動」以来で最も深刻な社会動乱に急速に巻き込まれている。国会議員の私利私欲や生活困窮に対する抗議は、21歳の配達員が無実のまま命を落としたことをきっかけに爆発し、全国規模の暴力衝突へと発展した。首都ジャカルタの警察本部から、第2の都市スラバヤ、東部のマカッサルに至るまで怒りの炎は広がり、少なくとも3人が死亡した。インドネシアのメディアは、こうした大衆の憤怒を「膿瘍の破裂」と形容し、プラボウォ・スビアント大統領にとって就任から1年も経たないうちに最大の政治的試練となっている。また、今回の事態は同国社会に根深く横たわる経済格差と世代の不安を浮き彫りにした。

「膿瘍の破裂」―国会議員の特権から外送員の死まで

アルジャジーラによれば、この騒乱の火種は国民が長年抱いてきた政治エリートへの不満にある。直接の引き金となったのは、国会議員に支給される月額5000万ルピア(約3000ドル)の住宅手当だ。これはジャカルタの最低賃金の約10倍、地方の貧困州の実際の賃金の20倍に相当する。物価高騰、大規模な解雇の脅威、若者の高失業率といった厳しい経済環境のなか、議員の自肥行為は国民の反感を一層強めた。

さらに抗議に立ち上がった市民に対し、一部議員が挑発的な発言を行ったことで怒りは拡大した。国民民主党(Partai NasDem)のアフマド・サフロニ議員は、国会解散を訴える市民を「世界で最も愚かな人間」と罵倒。こうした態度は、インドネシア有力誌『Tempo』が指摘するように、積み重なった民意を「膿瘍の破裂」として一気に噴出させる結果となった。

2025年8月29日、インドネシアのジャカルタで、国会議員の自己肥大化に抗議する学生と暴動警察が衝突し、配達員が死亡した後、全国的な大規模暴動が引き起こされた。(Associated Press)
2025年8月29日、インドネシアのジャカルタで、国会議員の自己肥大化に抗議する学生と暴動警察が衝突し、配達員が死亡した後、全国的な大規模暴動が引き起こされた。(写真/AP通信提供)

配達員アファンの死とSNSでの拡散

決定的に事態を制御不能にしたのは、21歳の配達員アファン・クルニアワン(Affan Kurniawan)の死だった。現地時間8月28日、ジャカルタ国会議事堂前で行われた抗議活動のさなか、彼は配達中に機動隊の装甲車に轢かれ、その場で死亡した。アファンは抗議者ではなく、ただ家族のために働いていた若者にすぎなかった。

この衝撃的な映像はSNS上で瞬く間に拡散し、彼の死は国民的怒りの象徴となった。抗議の矛先は国会議員の特権批判から警察暴力の告発へと移り、一気に血を伴う社会的訴えへと変化した。ある抗議者は「アファンさんは私たちそのものだ。必死に働きながらも、声を無視され続けてきた私たちの姿だ」と語っている。

ジャカルタから地方都市へ広がる怒り

配達員アファン・クルニアワン氏の死をきっかけに、インドネシア全土で怒りが爆発した。29日(金)、大雨にもかかわらず暴力的な衝突は各地に拡大し、夜を徹して混乱が続いた。 (関連記事: インドネシア・ジャカルタで暴力的な抗議デモが発生 警察対応の誤りが火種に 関連記事をもっと読む

『ジャカルタ・ポスト』によれば、首都ジャカルタでは群衆が警察機動旅(Brimob)本部を取り囲み、投石を行い、近隣の5階建て建物を焼き払った。市中心部の交通は完全に麻痺し、催涙ガスの刺激臭が立ち込め、土曜未明になっても道路には焼け焦げた車両や破壊された警察詰所が残されていた。

2025年8月29日、インドネシアのジャカルタで、国会議員の自己肥大化に抗議する学生と暴動警察が衝突し、配達員が死亡した後、大規模な全国暴動が引き起こされ、北スマトラ州メダンの市民が警察に攻撃を行った。(Associated Press)
2025年8月29日、インドネシアのジャカルタで、国会議員の自己肥大化に抗議する学生と暴動警察が衝突し、配達員が死亡した後、大規模な全国暴動が引き起こされ、北スマトラ州メダンの市民が警察に攻撃を行った。(写真/AP通信提供)
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