台湾の若手映画監督、蘇鈺淳(スー・ユチュン)氏が新作『メイメイ』を完成させ、日本の「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」での上映が決まった。2025年9月6日の開幕を控え、《風傳媒》は長年映画祭を牽引してきた荒木啓子総合ディレクターに独占取材し、映画祭の意義や若手監督への期待を聞いた。

蘇監督は2021年、『豚とふたりのコインランドリー』で「PFFアワード」審査員特別賞を受賞。その後「PFFプロデュース」企画に選ばれ、長編第1作『メイメイ』を完成させた。本作は9月16日、「第47回ぴあフィルムフェスティバル」で上映される予定である。

PFFは1977年に創設され、日本のインディペンデント映画を支える映画祭として知られる。コンペティション「PFFアワード」や製作支援「PFFプロデュース」(旧称PFFスカラシップ)を通じ、数多くの才能を発掘してきた。1992年から総合ディレクターを務める荒木氏は、30年以上にわたり映画祭を率いてきた人物である。

過去の取材で荒木氏は「過去は未来のための反省材料にすぎない。私は常に“発見”と“育成”に力を注ぎ、創作者の最初の観客でありたい」と語っていた。応募作品は最低3人のセレクション・メンバーが全編を鑑賞し、議論を経て入選作を決定する仕組みも、PFFが大切にする「作り手への敬意」を象徴している。

今回の取材で荒木氏は、映画祭の本質について「今年のラインナップが社会や文化をどう映すかは、その場では分かりません。10年後に振り返って初めて見えてくる」と強調した。さらに「映画は答えを示すものではなく、分からないからこそ作るのです」と語った。

選考については「17人のセレクション・メンバーが自由に語り合い、誰かの心を動かした作品が残る。点数評価は一切しません」と説明。若い監督には「映画を撮りたいと思った最初の気持ちを忘れないでほしい」と呼びかけた。印象的な瞬間について尋ねられると「多すぎて一つに絞れない」と笑い、長年の経験に裏打ちされた余裕をのぞかせた。
荒木氏はまた「プレミア上映や著名な監督の新作は最優先ではありません。自主制作の作品こそ重要で、観客に『映画って素晴らしい』と感じてもらいたい」とPFF独自の姿勢を強調。最後に「私は台湾が大好きで年に何度も訪れています。台湾の人々の率直な感情表現は本当に素晴らしい。いつか台湾でPFFを開催できれば嬉しい」と語り、台湾の観客に向けてメッセージを送った。
蘇監督は2019年に来日し、京都の語学学校を経て東京藝術大学大学院映像研究科に進学。当初は編集を専攻したが、その後監督領域に転じ、2023年に卒業した。パンデミック下で一時帰国しながらも、自主制作を続けてきた。
過去の取材では「かつては現場を細かく支配しようとして『コントロールフリーク』と批判された」と振り返り、諏訪敦彦監督の「コントロールは愛を殺す」という言葉に影響を受けたと明かしている。「他者を信頼し、委ねることで作品は豊かになる」と学び、その経験が現在の制作姿勢にもつながっているという。
「第47回ぴあフィルムフェスティバル2025」は9月6日から20日まで、東京・国立映画アーカイブで開催される。自主映画コンペ「PFFアワード2025」には過去2番目となる795本の応募があり、22本が入選。期間中は6企画59作品が上映される予定だ。
編集:田中佳奈
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