台湾文化部が主導する《We TAIWAN》文化プロジェクトの中核を担う舞台《島の聲:廟前の感謝の舞台》が、2025年8月26日、大阪・関西万博の夢洲会場で初演を迎えた。台湾各地の伝統芸能、宗教儀式、音楽、舞踊、さらに現代表現を融合させた70分のステージは、台湾文化の「聲(声)」を世界に届ける挑戦的な試みとして注目を集めた。

信仰と多様性を舞台に凝縮
総監督の杜思慧(トゥー・スーホイ)氏は上演後の取材で、「この舞台は信仰の多元性を起点に、台湾のあらゆる土地や民族、そして声を集約したものです」と説明した。

舞台には、神将を模した造形、北管音楽、原住民の伝統歌、そして擲筊(ポエ)儀式が織り込まれ、台湾の「廟口文化」を凝縮した謝神戲として構成された。演出当日は強風の影響で「筆底の吟唱」や「撒糖(飴配り)」など一部演出は中止となったが、杜監督は「その場で柔軟に対応できたのは実演スタッフの信頼と経験の賜物」と語った。

特に印象的だったのは擲筊(ポエ)の儀式である。リハーサルでは繰り返し「NO」が出たが、本番では連続して「YES」が出たといい、杜監督は「まるで天が舞台を祝福してくれたようでした」と微笑んだ。

子どもたちの声に未来を託す
舞台のラストでは音楽を排し、児童合唱団がアカペラで歌声を届けた。これは文化部の王時思政務次長の発案であり、杜監督は「子どもたちの純粋な声に未来への希望を込めた」と説明。「戦争や災害に苦しむ時代だからこそ、子どもこそが命の象徴だ」と強調した。

観客の反響と国際的意義
会場には多くの日本人観客も訪れ、公演後には「もう一度見たい」「次の上演はいつか」との声が相次いだ。舞台は28日まで毎日上演され、文化部の公式Facebookでもライブ配信されている。
さらに、万博公式サイトにも《We TAIWAN 台灣文化 in 大阪・関西万博 - 廟前の感謝の舞台》として掲載され、台湾文化イベントとして公式に位置づけられたことは大きな意味を持つ。
杜監督は最後に、「声や歌は言語を超えて人をつなぐことができる。だからこそ、この舞台には“音”が欠かせなかった」と語り、台湾文化を世界に発信する強い決意を示した。
編集:梅木奈実 (関連記事: 大阪・関西万博で《We TAIWAN》初公演 台湾国旗を背景に堂々の舞台演出、観客から大反響 | 関連記事をもっと読む )
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