米国大統領トランプ氏が就任して以降、従来の外交政策や経済措置を大きく転換したことで、オーストラリアや欧州連合(EU)といった「中間的立場の国々」は難しい立場に置かれたが、こうした状況への備えは十分でなかった。最近、オーストラリアの専門家は、台湾をめぐる問題において、トランプ氏がロシアのプーチン大統領に対するのと同様の姿勢を見せ、中国に譲歩する可能性があると指摘している。その場合、台湾の安全が損なわれる恐れがあると懸念されている。
トランプは台湾を売り渡すのか?
オーストラリアの国際問題専門家ジェームズ・カラン氏は、日曜付の『オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー』に寄稿し、トランプ氏とプーチン大統領のアラスカでの首脳会談が失敗に終わる直前、トランプ氏が声明を発表して「中国の習近平国家主席から『あなたが大統領でいる限り、私は決して台湾を攻撃しない』と言われた」と主張したことに言及した。しかしカラン氏は、「少し考えれば明らかに虚偽である」と断じている。
カラン氏は、今回のトランプ氏の発言は「大衆迎合にすぎない」と分析する。さらに問題なのは、習氏の態度であると指摘した。かつてオバマ前米大統領に対し「南シナ海の人工島や岩礁を軍事化しない」と約束しながら裏切ったように、今回も「トランプ氏を持ち上げ」、米国大統領を誤導しようとしているという。
また、トランプ氏が習氏との首脳会談を熱望していることは「疑いの余地がない」うえ、米国が対中貿易戦争で明確な勝利を収めている現状を踏まえれば、「プーチン氏に対した時と同じように、中国に譲歩する可能性が高い。その結果、台湾の安全が損なわれるおそれがある」とカラン氏は警告する。
現在、シドニー大学で現代史を担当し、同大学米国研究センターの上級研究員を務めるカラン氏はさらに例を挙げた。もしトランプ氏が今回の取引からノーベル賞やワシントンでの勝利パレード、あるいは「アメリカを再び偉大に」という熱狂的称賛といった大きな報酬を得られるなら、国防総省(ペンタゴン)の対中強硬策を真剣に受け止めることはないだろうと論じている。
カラン氏はさらに悲観的な見方を示し、「もちろん我々は、(トランプ氏の)習近平へのあからさまな信頼が、たとえ無意識的なものであっても平和につながることを願うしかない。しかし同時に、それは習近平の偉人幻想を助長する可能性もある」と述べている。 (関連記事: TSMC「米国は出資せず」明言 トランプ氏がインテルを選んだ背景と郭明錤氏の分析 | 関連記事をもっと読む )

中間国の難題
カラン氏は、もしオーストラリア政府が、自国と米国の伝統的な政治的同盟関係が混乱に陥るのではないかと疑ったことがあるなら、この1週間余りに起きた出来事は、それを否応なく裏づけるものとなったと指摘する。さらに、トランプ氏がプーチン氏との非公式交渉を行った際、表面的には今よりも良好な結果に見えたとしても、改めて「トランプ氏がいかに信頼に値しないか」が露呈したと強調した。日本、韓国、オーストラリア、さらにはアジア各国は皆、「なぜ我々が(米国から)これほど異なる扱いを受けるのか」と自問せざるを得ないと述べている。