インド人はなぜ台湾を嫌うのか?世論調査に見る背景 ――中国の影と共同利益、若い世代のまなざし

2025-08-26 13:48
2024年11月14日、インド・ニューデリーの街を走るバイクの人々。(写真/AP通信)
2024年11月14日、インド・ニューデリーの街を走るバイクの人々。(写真/AP通信)
目次

2023年の国際世論調査で、インドは少数派ながら「台湾に否定的な印象」を持つ国として浮かび上がった。43%もの回答者が台湾に「ネガティブな見方」を示し、この数字は各国と比べても異例だ。「インド人はなぜ台湾を嫌うのか?」という疑問が改めて突きつけられている。

インドのジャワハルラール・ネルー大学(JNU)国際研究学院の研究員であり、『太平洋の危機:軍事バランスと台湾をめぐる戦い』(Peril of the Pacific: Military Balance and Battle for Taiwan)の著者でもあるゴーラフ・セン氏は、背景に「台湾と中国を取り違える認識」があると指摘する。インドの若い世代にとって、台湾はかつて漠然とした存在、あるいは中国と混同されがちな政治的シンボルだったが、いまや機会に満ちた現実的なパートナーへと変わりつつあるという。

セン氏は23日付の『ディプロマット(The Diplomat)』への寄稿で、インド社会が「中国への警戒心」から「台湾との交流論」へと世代的にシフトしていると論じた。これは地政学にとどまらず、経済・教育・個人レベルの経験にも直結する変化だ。

中国の影がもたらす認識の混乱

インド人の台湾観を理解するには、まず「中国」という隣国が持つ圧倒的な存在感を知る必要がある。インドの有力シンクタンク「オブザーバー・リサーチ・ファウンデーション(ORF)」が公表した《外交政策調査2024》によると、中国はインドの若者にとって最大の外交上の懸念国となっている。こうした対中不信が広がったことで、かつてはタブー視されがちだった台湾の議論が、民主主義やサプライチェーン、安全保障といった具体的な言葉とともに語られるようになった。

しかしセン氏は、この変化はまだ十分に広がってはいないと指摘する。米国の調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が2023年に発表した20カ国以上を対象にした世論調査では、多くの国で「台湾への好意的な印象」が「否定的な印象」を大きく上回った一方、インドでは異なる傾向が見られた。台湾に好感を抱いたのは37%にとどまり、否定的な見方をした人は43%に達したのである。

さらに注目すべきは、回答者の35%が「台湾」と「中国」の双方に否定的な見方を示した点だ。これは、多くのインド人が中華民国(台湾)と中華人民共和国を明確に区別できず、対中不信をそのまま台湾に投影している可能性を強く示唆している。特に35歳以下の世代では、台湾は「中国フィルター」を通じて見られるケースが依然として多いのが実情だ。 (関連記事: インド・モディ首相、農民保護と国内生産を強調 米国関税に対抗姿勢 関連記事をもっと読む

地政学から「ポケットの経済」へ

街頭調査から一歩踏み込んで政策分析や若手エリート層の視点に目を向けると、違った景色が見えてくる。インドのシンクタンク「オブザーバー・リサーチ・ファウンデーション(ORF)」の最近の報告書は、台印関係をもはやイデオロギー対立の文脈に閉じ込めず、貿易、半導体、サプライチェーンといった実務的な協力に焦点を当てている。

最新ニュース
顏厥安氏の視点:帆布政権と憲法災民──「内閣が総辞職しない限り、台湾に民主主義は存在しない」
台湾・民進党若手党員が見る賴清徳総統 「退屈で自己愛的」「情緒的価値を与えられない」
TSMC「米国は出資せず」明言 トランプ氏がインテルを選んだ背景と郭明錤氏の分析
李在明氏、台海リスクを前に訪米決断 トランプの対中要求に揺れる韓国外交
JR東日本、高輪ゲートウェイシティで初のドローンショー開催 都市空間で「ドローンが当たり前に飛ぶ未来」を目指す
JR東日本、高輪ゲートウェイシティでのドローンショーを総括 「300機による都市空間での挑戦」
台日作家交流座談会東京で盛況 楊双子と角田光代が文学対話
「The Ordinary」下北沢にコンビニ風ポップアップ 米や弁当セットなどユニーク企画、8月31日まで
動員数 約20万人を記録 「We TAIWAN 台湾文化 in 大阪・関西万博」大盛況で閉幕
アコメヤ トウキョウ、令和7年度産「新米」入荷開始 契約農家インタビューで今年の米作りを深掘り
万博で「WORLD YOSAKOI DAY」開催 学生チーム「旅鯨人」が熱演、産業ブースも《風傳媒》が現地取材
よさこい発祥の地・高知、万博で文化と観光を世界に発信 『WORLD YOSAKOI DAY 』
「多元台湾文化漫画展」東京で開幕 民族・ジェンダー・人権をテーマに多彩な台湾漫画を紹介
台湾・盧秀燕台中市長「国民党主席選には不出馬」 関税ショックで地元経済守る姿勢強調
台湾「核廃水」抗議が逆効果に 民進党元幹部・陳聖文氏の素顔
台湾・第三原発再稼働の国民投票不成立 「反原発票」が過去の4割に減少
特集》台湾・民進党に大打撃 国民党も長続きしない勝利 政界に広がる不安定
特集》台湾・賴清徳総統「先進的な原子力も排除せず」 第三原発再稼働の国民投票は不成立、与野党の思惑が交錯
調査》TSMC防衛に致命的穴 賴清德氏が強靭化推進、審計部が警告
台湾半導体の優位性は模倣困難 TSMC、米軍需産業も依存
台湾はウクライナと違う 郭岱君氏が警鐘「対米依存の危うさ」
米国は台湾を見捨てない 明居正氏「ウクライナと異なり交渉で優位に立てる」
大規模リコールは大失敗》蔡英文氏が総統府訪問 賴総統と民主の価値強調
「ハリー・ポッター ショップ 原宿」開業 トム・フェルトンが魔法の呪文でテープカット
「ハリー・ポッター ショップ 原宿」開幕記念イベントにトム・フェルトン&松島聡が登場 “マルフォイ愛”で特別な乾杯
台湾第3原発再稼働の国民投票、賛成多数も不成立 頼清徳総統「結果を尊重、原発政策は3原則を堅持」
台湾、大規模リコールと核三再稼働公投いずれも否決 賴清德総統、卓榮泰院長の続投要請と人事改組を発表
国民投票開票》台湾・第3原子力発電所の再稼働国民投票は不成立 賛成434万票も基準に届かず
特集》台中市・顏寬恒氏がリコール回避 真の焦点は江啓臣氏と楊瓊瓔氏の「市長接班戦」
リコール開票》新北・羅明才氏が議席守る 反対票が大差で上回り「感恩の心」を熱唱
特集》南投・馬文君氏と游顥氏がリコールを退ける 「中台湾の新女王」許淑華氏への期待強まる
東京駅八重洲口で「宵路灯籠2025」開催 全長40メートルの花火プロジェクションマッピングが夜空を彩る
台湾・新竹県、初の「ビブグルマン」入り 8店舗が選出 県長が美食と観光をPR
石破首相、TICAD9閉幕式に出席 日アフリカ連携強化を強調
リコール開票》台中二選区リコール不同意7万超 顏寬恒「監督機能守られた、与党は目覚めよ」
NOTHING、東京で「SUMMER UPDATE」開催 Phone (3)とHeadphone (1)を発表
ビッラモレッティ、渋谷で試飲イベント「Italia Terrace」開催
台東観光地ランキング激変 鹿野と三仙台敗北 103万人が訪問
リコール開票》台湾・新竹県第2選区の林思銘立法委員、リコール成立せず 「社会は和解し、対立を超えるべき」と呼びかけ
リコール開票》台中・楊瓊瓔立法委員が議席守る 「政府は正道に戻るべき」と訴え
台湾・南投の馬文君立法委員、リコール不成立 「国を良くするのは対立ではない」と強調
リコール開票》游顥リコール不成立 賴清徳式選挙を批判「南投の望む姿ではない」
リコール開票》江啓臣、立委議席を死守 不同意票が大幅リード
沖縄尚学が夏の甲子園で初優勝 県勢では興南以来15年ぶり2度目
国連創設80年、軍縮の課題と日本の役割 中満泉事務次長がFPCJで会見