台湾・南投県第1選挙区選出の国民党所属立法委員馬文君氏に対するリコール投票が、8月23日に実施された。夜にかけて開票が進み、同意票は2万9,914票、不同意票は5万9,828票となった。台湾のリコール制度では、成立のために「同意票が反対票を上回り、かつ有権者総数の4分の1以上」に達する必要があるが、今回必要とされた4万6,039票に届かず、最終的にリコール案は否決された。
結果確定後、馬文君氏は勝利演説を行い、「民進党はすでに9年以上政権を担っているのだから、台湾をどう前進させるかを真剣に考えるべきだ。国が良くなるためには、衝突や対立ではなく、与党がより多くの責任を負い、国家を前に進める推進力を果たすべきだ」と語った。また「リコールを経て、私たちはどのように国や社会をより良くしていくかを共に考える時だ」と強調した。

馬氏は南投県で長年当選を重ねる実力派の議員で、2024年の立法委員選挙では得票率53.09%で再選を果たした。父・馬榮吉氏は台湾省議員や埔里鎮長を務めた政治家で、馬氏はその後を継いで地元政界で影響力を築いた。
立法院(国会)では国防外交委員会に所属し、地元に数百億台湾元規模の建設予算をもたらしたほか、国防予算の監督役を務めてきた。一方で、批判者からは「国防建設を妨げた」との指摘も受けている。特に、潜水艦国産化計画に関連する機密を韓国側に漏洩した疑惑や、潜水艦関連予算の大幅削減によって計画の進行を遅らせたとする批判が、今回のリコール運動を後押しした。
台湾の「公職人員選挙罷免法」第90条では、リコール成立の条件を「有効同意票が反対票を上回り、かつ選挙区有権者総数の4分の1以上に達すること」と定めている。今回、同意票はおよそ3万票にとどまり、必要票数の約4万6千票を大きく下回ったため、リコールは不成立となった。
馬氏のリコールは、国防政策や与野党対立を背景にした政治闘争の一環とみられていたが、最終的に議席を守り抜いたことで、南投における国民党の地盤の強さを改めて示す結果となった。
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