OpenAIの最高経営責任者(CEO)サム・アルトマン氏が、最近の公開の場で衝撃的な発言を行った。アルトマン氏は「我々は現在、投資家がAIに対して過度に熱狂している段階にあるのではないか?私の見解は、イエスだ」と述べ、市場のAIへの期待はすでに過剰であると断言した。この発言は、AI分野で最も影響力を持つ人物が初めて、業界全体の企業評価に対してバブルの可能性を示唆したものとして注目されている。
市場にどのような警告が浮上しているのか?
最近の米国株市場ではAI関連株が低迷している。NVIDIAの株価は一日で3%以上下落し、Palantirは高値から約2割下落した。CoreWeave、Oracle、Arista Networksも同様に値を下げており、投資家心理は慎重姿勢へと傾きつつある。勢いのあるグロース株から資金が流出し、バリュー株への資金移動が見られることから、市場がAIの長期的な投資リターンに疑問を抱き始めた様子がうかがえる。
AIバブルへの意見はなぜ分かれるのか?
一部の専門家は、AIバブルのリスクを深刻視している。米ミシガン大学のエリック・ゴードン教授は、AIバブルが崩壊した場合、その影響はかつてのITバブルを上回る可能性があると警告する。現在は投じられている資金の規模がはるかに大きく、年金基金や個人投資家にまで影響が及ぶ恐れがあるためだ。
一方、ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏は、AIブームは1990年代の状況に類似しているとしつつも、政府の補助金や政策的な支援があることから、「軟着陸」する可能性もあると指摘している。
これに対し、元Google CEOのエリック・シュミット氏はより楽観的な見方を示し、AIは産業構造そのものを再構築しつつあり、短期的な市場の変動だけでその将来価値を判断すべきではないと主張している。
もしバブルが本当に崩壊したら、どのような影響が生じるか?
AIバブルが崩壊した場合、まず株式市場が大きく調整に向かい、NVIDIAやPalantirなどの主要企業が真っ先に打撃を受けるとみられる。次いで、企業は研究開発予算を削減する可能性があり、それに伴いイノベーションのペースが鈍化する恐れがある。投資家の熱気が冷めれば、ベンチャーキャピタルの資金も流出し、雇用市場にも波及することになる。特に影響を受けるのは、データセンター、AIソリューション、応用分野に関わる職種である。
最終的には、業界全体がAGI(汎用人工知能)への盲目的な追求から、より実用性の高いAIツールの開発へと回帰し、同時に規制強化の動きが進む可能性がある。
MITの研究は何を示しているのか?
マサチューセッツ工科大学(MIT)が発表した最新報告書『The GenAI Divide: State of AI in Business 2025(生成AIの格差:2025年ビジネスにおけるAIの現状)』によると、企業による生成AIプロジェクトの95%が、明確なビジネス上の成果を上げていないことが明らかになった。
同報告は、300件の公開事例、150人の企業幹部へのインタビュー、350件の従業員アンケートをもとに分析されたもので、問題の本質は技術そのものではなく、企業側の「学習ギャップ(learning gap)」にあると指摘している。これは、AIツールを実際の業務に統合するためのプロセスや企業文化の調整が不十分であることを意味している。
情報提供:《investors》
編集:柄澤南 (関連記事: AIバブル到来か?米国経済の成長を支える一方、95%の企業が淘汰の危機 | 関連記事をもっと読む )
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