7月20日に行われた参議院選挙は、戦後の日本政治地図を塗り替える結果となった。自民・公明の与党連立は、昨年の衆議院選挙に続き再び敗北し、参院でも過半数を失った。両院で過半数を割り込むのは戦後初めての事態である。これについて衆議院議員の福島伸享氏は、「単なる敗北ではなく構造的衰退の兆候だ」と警鐘を鳴らし、日本政治が本格的に多党化と妥協の時代へ移行したとの見方を示した。
福島氏は8月18日、淡江大学でオンライン講演を行い、「戦国時代到来! 日本の政治はどうなるか?」と題して現状を分析した。
与党の地盤沈下と野党の限界
演説の中で福島氏は、今回の参院選で自民党が激戦区で一定の議席を確保したものの、獲得議席は39にとどまり、6年前からほぼ半減したと指摘。公明党も6議席を失い、与党連立の弱体化は不可逆的だとの見解を示した。野党第1党の立憲民主党も支持を広げられず、比例代表で大きく後退した。
一方で、国民民主党は13議席を増やし、参政党は排外的な主張で若年層を取り込み、議席数を二桁に伸ばした。福島氏は、これらの動きが「有権者構造の深い変化」を映し出しており、伝統的な大政党の求心力が弱まり、新興勢力が台頭する一方で基盤の脆弱さが目立つと分析した。
福島氏はまた、自身の茨城県選挙区での経験を踏まえ、自民党の支持基盤がかつての鉄票や組織力に支えられていたが、近年は明らかに揺らいでいると述べた。その上で「自民党は民主党化の危機に直面している」と強調。候補者が党首の人気に依存する一方、地域に根ざした組織網が弱体化していることを問題視した。

安倍晋三元首相の時代には個人の求心力で票を集めることができたが、菅義偉氏、岸田文雄氏、そして石破茂氏と続いた近年の党首では勢いを取り戻せていない。昨年石破氏を党首に据えても選挙結果は振るわず、党内から「次の顔」を求める声が上がり続けているが、根本的な構造的衰退を覆すには至っていないという。

多党協議が政策決定の軸に
参院・衆院ともに過半数を失ったことで、石破政権は維新や国民民主、さらには無所属議員との協力を模索せざるを得ない状況に追い込まれている。福島氏は、日本政治が「灰色の妥協」の時代に入ったとの見方を示し、今後は政策が白黒はっきりせず、多党協議の中で方向性が定まっていくと語った。

ただし、こうした曖昧さは有権者の不満を呼びやすく、民粋政党に活路を与える要因となると警告。「仮に参政党が勢いを失っても、類似の勢力は今後も現れ続ける」と述べ、政治の断片化が続く可能性に言及した。その上で、選挙制度や国会審議のプロセスを改革しなければ、国会は官僚や与党の「追認機関」と化し、機能不全に陥ると危機感を示した。
グローバル逆流と日本の立ち位置
さらに福島氏は視野を広げ、令和時代の国際環境にも言及。トランプ米大統領の保護主義や英国のEU離脱、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエル・パレスチナ紛争など、一連の動きが戦後の国際秩序を揺るがしていると指摘した。
民主主義国家は意思決定に時間がかかるため後手に回りがちだが、権威主義国家は迅速に行動できると分析。SNSの普及による陰謀論や過激な言説の拡散が、民主主義の危機を一層深刻化させているとの見方を示した。経済面でも、日本のGDPは世界4位に後退し、内外からの圧力が同時に政治体制を追い詰めていると警鐘を鳴らした。

福島氏は現状の打開策として、地域レベルでの新たな協力関係を提案した。日本は韓国や台湾、さらに東南アジア諸国との連携を強化し、対米依存を相対的に低下させるべきだと主張。「これは特定の政権やリーダーだけの課題ではなく、日本の民主主義そのものが直面する構造的な挑戦だ」と強調した。
その上で、二大政党制という「夢」はすでに終焉し、多党協議が新常態となったと断言。日本は制度改革を進めると同時に、地域的な枠組みの中で新たな役割を模索しなければ、揺れ動く国際秩序の中で道を切り開くことはできないと訴えた。
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