日本政局は「戦国時代」へ 衆議院議員の福島伸享氏、多党妥協が新常態と指摘

2025-08-20 17:48
8月18日、淡江大学で「戦国時代到来!! 日本の政治はどうなるか?」と題してオンライン講演を行う福島伸享氏。(写真/王秋燕撮影)
8月18日、淡江大学で「戦国時代到来!! 日本の政治はどうなるか?」と題してオンライン講演を行う福島伸享氏。(写真/王秋燕撮影)
目次

7月20日に行われた参議院選挙は、戦後の日本政治地図を塗り替える結果となった。自民・公明の与党連立は、昨年の衆議院選挙に続き再び敗北し、参院でも過半数を失った。両院で過半数を割り込むのは戦後初めての事態である。これについて衆議院議員の福島伸享氏は、「単なる敗北ではなく構造的衰退の兆候だ」と警鐘を鳴らし、日本政治が本格的に多党化と妥協の時代へ移行したとの見方を示した。

福島氏は8月18日、淡江大学でオンライン講演を行い、「戦国時代到来! 日本の政治はどうなるか?」と題して現状を分析した。

与党の地盤沈下と野党の限界

演説の中で福島氏は、今回の参院選で自民党が激戦区で一定の議席を確保したものの、獲得議席は39にとどまり、6年前からほぼ半減したと指摘。公明党も6議席を失い、与党連立の弱体化は不可逆的だとの見解を示した。野党第1党の立憲民主党も支持を広げられず、比例代表で大きく後退した。

一方で、国民民主党は13議席を増やし、参政党は排外的な主張で若年層を取り込み、議席数を二桁に伸ばした。福島氏は、これらの動きが「有権者構造の深い変化」を映し出しており、伝統的な大政党の求心力が弱まり、新興勢力が台頭する一方で基盤の脆弱さが目立つと分析した。

福島氏はまた、自身の茨城県選挙区での経験を踏まえ、自民党の支持基盤がかつての鉄票や組織力に支えられていたが、近年は明らかに揺らいでいると述べた。その上で「自民党は民主党化の危機に直面している」と強調。候補者が党首の人気に依存する一方、地域に根ざした組織網が弱体化していることを問題視した。

日本眾議員福島伸享在議會中質詢。(翻攝日本眾議院網站)
日本の衆議院で質疑に立つ福島伸享氏。(写真/衆議院公式サイトより)

安倍晋三元首相の時代には個人の求心力で票を集めることができたが、菅義偉氏、岸田文雄氏、そして石破茂氏と続いた近年の党首では勢いを取り戻せていない。昨年石破氏を党首に据えても選挙結果は振るわず、党内から「次の顔」を求める声が上がり続けているが、根本的な構造的衰退を覆すには至っていないという。

安倍晋三(左)是近年日本自民黨最具影響力的黨魁。圖為安倍晋三與石破茂一起在街頭宣講。(翻攝石破茂官網)
自民党で強い影響力を持った安倍晋三元首相(左)。石破茂氏とともに街頭演説に立つ様子。(写真/石破氏公式サイトより)

多党協議が政策決定の軸に

参院・衆院ともに過半数を失ったことで、石破政権は維新や国民民主、さらには無所属議員との協力を模索せざるを得ない状況に追い込まれている。福島氏は、日本政治が「灰色の妥協」の時代に入ったとの見方を示し、今後は政策が白黒はっきりせず、多党協議の中で方向性が定まっていくと語った。

7月20日、日本參議院大選,自民黨總裁、日本首相石破茂在自民黨開票中心。(黃信維攝)
7月20日の参院選開票日、自民党本部で情勢を見守る石破茂首相。(写真/黄信維撮影)

ただし、こうした曖昧さは有権者の不満を呼びやすく、民粋政党に活路を与える要因となると警告。「仮に参政党が勢いを失っても、類似の勢力は今後も現れ続ける」と述べ、政治の断片化が続く可能性に言及した。その上で、選挙制度や国会審議のプロセスを改革しなければ、国会は官僚や与党の「追認機関」と化し、機能不全に陥ると危機感を示した。

グローバル逆流と日本の立ち位置

さらに福島氏は視野を広げ、令和時代の国際環境にも言及。トランプ米大統領の保護主義や英国のEU離脱、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエル・パレスチナ紛争など、一連の動きが戦後の国際秩序を揺るがしていると指摘した。

民主主義国家は意思決定に時間がかかるため後手に回りがちだが、権威主義国家は迅速に行動できると分析。SNSの普及による陰謀論や過激な言説の拡散が、民主主義の危機を一層深刻化させているとの見方を示した。経済面でも、日本のGDPは世界4位に後退し、内外からの圧力が同時に政治体制を追い詰めていると警鐘を鳴らした。

日本眾議員福島伸享於8月18日演說,以此投影片說明日本政局未來挑戰與有利發展方向。(福島伸享提供)
福島伸享氏が8月18日の講演で使用したスライド。日本政治の課題と展望を示した。(画像/福島氏提供)

福島氏は現状の打開策として、地域レベルでの新たな協力関係を提案した。日本は韓国や台湾、さらに東南アジア諸国との連携を強化し、対米依存を相対的に低下させるべきだと主張。「これは特定の政権やリーダーだけの課題ではなく、日本の民主主義そのものが直面する構造的な挑戦だ」と強調した。

その上で、二大政党制という「夢」はすでに終焉し、多党協議が新常態となったと断言。日本は制度改革を進めると同時に、地域的な枠組みの中で新たな役割を模索しなければ、揺れ動く国際秩序の中で道を切り開くことはできないと訴えた。

中国語関連記事

編集:田中佳奈

最新ニュース
民進党の反原発ポスターに波紋 日本エネルギー記者「事実を歪曲」と指摘
評論:ウクライナが領土割譲で戦争終結?台湾に突き付けられる警鐘
インタビュー》福島伸享氏「トランプ変動に備え日台韓経済圏を」 日米関税交渉は波乱も信頼関係は堅持
舞台裏》台湾・国民党主席選 盧秀燕台中市長は出馬せず 朱立倫主席への反発強まる
「MUSIC LOVES ART 2025」大阪と幕張で同時開催 サマーソニック連携企画、都市をアートの舞台に
AIロボがカレーをおすすめ エキュート秋葉原「カレーフェス」に異国情緒あふれる演出
JR東日本、TAKANAWA GATEWAY CITYで初の一般向けドローンショー 8月23日開催へ 羽田空港直下の制約克服
プーチン、ゼレンスキーと会談へ? トランプの電話が戦局を一変させる 2週間以内に実現の可能性
インタビュー》「張立齊条項」が帰国の道を閉ざす? 独占声明:政治的見解の共有に何の罪があるのか、改正案は戒厳令時代への後退か
風傳媒現地レポート》建築家・内藤廣「赤鬼と青鬼」展 渋谷で半世紀の思考を振り返る
「台湾有事」に備え 日本・台湾が「異例の覚書」入国情報を共有、中国工作員の流入防止
台湾・台北市長の蒋万安氏、鴻海会長に政界入り要請 行政院長「ゆっくり学ぶ必要」
日本の避難所に防爆扉導入へ 核攻撃に耐えられる施設ゼロの現状
陸文浩の見解:ロシア「キロ級」潜水艦が東シナ海へ 中露が近・遠海で日本を包囲
李忠謙コラム:プーチン氏が示した停戦条件 ゼレンスキー氏に迫る「大阪冬の陣」の選択
天気予報》台風19号「レンレン」きょう発生か 台湾直撃せずも「ダブル台風」警戒
日本と台湾が異例の協力覚書 「台湾有事」に備え中国工作員の潜入防止へ
ゼレンスキー氏、ホワイトハウス再訪 軍装脱ぎ黒スーツ姿でトランプ氏と会談 トランプ氏「停戦不要」を強調
プーチン氏とゼレンスキー氏、戦争3年超で初の首脳会談へ 和平への突破口となるか
台湾文化イベント「We TAIWAN」最高潮 李安監督『恋人たちの食卓』大阪上映、VRやa-Weも登場
【独占】年5千万元節約も82億の追加賠償必要 台湾セメント三元案で「不可思議」な事態が発覚
舞台裏》敵を撃退するか、それとも自滅か?漢光演習は「史上最長・最実戦的」も、台湾の弱点を露呈
大阪・道頓堀で大規模火災 消防隊員2人死亡、4人搬送 観光客で騒然、一蘭道頓堀本館も臨時休業
台湾・民進党に広がる敗北ムード 823リコールと核三住民投票控え、支持者困惑
北京観察》天安門に戦車出現! 九三大閲兵リハーサルで共軍新装備:謎の魚雷がハイテクを示す?
「国民党は米国の信頼を壊している」元トランプ政権高官が異例の警告 台湾が国防を真剣に受け止めなければ、米国の支援は揺らぐ恐れ
トランプ大統領、ウクライナに領土譲渡を要求 「ロシアは大国、ウクライナは違う」と発言か
「裏切られた」ウクライナ激怒 トランプ氏、ロシア制裁見送りと「領土割譲による和平条約」締結を迫る
抗日戦勝80周年講演 「リコールは神経病的」郭岱君氏が台湾政権を批判「台湾は米国の対中封じ込めの餌になるべきでない」
「OHTANI DAY」第4弾 世界限定5枚の直筆サインジャージと「世界唯一」のWWEチャンピオンベルト発売
台湾文化イベント「TAIWAN PLUS」大阪で再び熱狂 台湾グルメ・雑貨に行列、文総「日本の友人が期待する台湾IPに」
台湾と日本の漫画100年史をたどる国際交流展 手塚治虫と蔡焜霖が象徴する時代の物語
阿部マリアも来場 台湾文化祭「TAIWAN PLUS 2025」、4日間で来場10万人突破 台湾グルメに行列
抗日戦争勝利80年、蔣介石の不屈の指導と軍民結束 抗戦史研究者「原爆なくても日本は敗北」
抗戦勝利も笑えず 蔣介石の誤算と「二人」への憂慮が内戦敗北招く
ノーベル平和賞が欲しい!ノルウェーメディアが報じる:トランプ氏、ノルウェー財務相に電話し関税と「受賞の可能性」を議論
順風満帆が一転暗転? ゼレンスキー氏、政権最暗黒の時を迎える:側近擁護で国内の反汚職看板を破綻、トランプ氏にアラスカ和談からも排除され
【ゴルフ】山下美夢有選手、全英女子オープン初制覇を語る 支えてくれた家族や北陸のファンに感謝
台湾女性、渋谷スクランブル交差点で写真撮影 日本のネットユーザーは反発
共和党が「台湾カード」を放棄?トランプ氏が早くも「彼」を意思疎通の橋渡し役に決定 政府が孤立化の恐れ
台湾の夜市でおすすめ屋台料理:北部の冷製おつまみ 多彩な組み合わせが可能!
中国、西南国境に「鉄壁の要塞」 新蔵鉄道着工で中印摩擦に新たな変化
インド・モディ首相、農民保護と国内生産を強調 米国関税に対抗姿勢
トランプ氏の関税戦争は成功か 台湾の元立法委員・蔡正元氏が警告「米国に2つの深刻な結果、世界は備えを」
自民・河野太郎氏、参院選敗北は「有権者に届かなかったメッセージ」と指摘 党執行部の刷新求めFCCJで講演
【独占インタビュー】一青妙|10年かけて完成した長編小説『青色之花』 家族と記憶が交錯する真実を描く