参議院選挙で歴史的な敗北を喫したことを受け、自民党内で石破茂首相に対する退陣要求が急速に高まっている。7月28日に行われた両院議員懇談会では、落選議員を含む多数の議員が執行部の責任を追及し、党内の危機感が一気に噴出した。
懇談会には236人が出席し、64人が発言。比例代表で落選した佐藤正久参院議員(通称「ヒゲの隊長」)は、会合前にテレビ番組で「トップは結果責任を取るべき。潔く早く辞めるべきだ」と述べ、「バッターボックスから降りて次に譲るのがルール」と語った。
「民意に逆らう続投は民主主義の否定だ」
佐藤氏は、昨年の衆院選、今年6月の都議選、そして今回の参院選と、3連敗を重ねた執行部の責任は極めて重いと指摘。「普通の企業であれば、3期連続で赤字なら社長は交代する」と石破体制の限界を訴えた。
会合後、石破首相は記者団に対し「自らの責任をしっかり果たしていく」と続投の意向を改めて強調。「日米関税交渉が合意に至り、世界の貿易秩序の安定化に取り組む責任がある」と述べた。
だが党内では、退陣を求める声が明らかに優勢となっている。旧安倍派の山田宏参院議員は「続投支持は7~8人程度、『退陣すべき』は20人以上」と説明。「トップが責任を取らなければ、誰も責任を取らない」と痛烈に批判した。
青山繁晴参院議員も「民意に逆らっての続投は、民主主義の破壊だ」として即時辞任を求めた。党青年局長の中曽根康隆衆院議員も「早急にけじめを示すべき」と主張した。
両院議員総会の開催も視野に
森山裕幹事長は「選挙総括がまとまり次第、自らの責任を明確にする」とし、両院議員総会の開催を含めた対応を検討していると説明した。両院議員総会は党則上、党大会に次ぐ正式な意思決定機関であり、所属議員の3分の1以上の署名で開催が可能とされている。
現在、旧茂木派、旧安倍派、麻生派を中心とした若手・中堅議員が署名を進めており、すでに規定数を超えているという。
一方、少数ながら石破政権の続投を支持する声もある。鈴木宗男氏は「歯を食いしばってやり抜くのがトップの責任」と語り、藤川政人参院議員も「総括が出る前に退陣を求めるのは早計」と慎重論を示した。
野党も動向を注視
野党側も自民党内の動きを注視している。国民民主党の玉木雄一郎代表は「続投か辞任か、早急に方針を決めるべき」と述べ、立憲民主党が主導する内閣不信任案への対応を見極める構えだ。共産党の小池晃書記局長は「自民党の顔が変わっても何も解決しない。国民不在の内ゲバにすぎない」と厳しく批判した。

SNSでも「辞任要求」と「応援デモ」が対立
神戸市議の上畠寛弘氏(東灘区選出)はX(旧Twitter)で、読売新聞の記事「『石破辞めるな』『石破がんばれ』…官邸前で続投求めるデモ」を引用しつつ、「『石破辞めるな』と呟いているアカウントの過去の投稿を遡ると安倍総理のことを漢字ではなく『アベ』とカタカナで呼び捨てでボロクソに安倍総理を罵っている。やっぱりね」と投稿。また産経新聞の「外国人の土地取得『規制すべきでない』と答えた52.9%が『石破首相は辞任不要』と回答」という世論調査も紹介した。
石破首相が改めて続投への決意を示す中、8月に公表予定の選挙総括を受けて、党内の進退論争が本格化する見通しだ。2009年の麻生政権末期のように、両院議員懇談会ではなく正式な「両院議員総会」で決着を図るべきという声も強まりつつあり、今後の展開に注目が集まっている。
編集:梅木奈実 (関連記事: 韓国が15%関税優遇と引き換えに差し出したものとは?台湾が驚く「代償の大きさ」 | 関連記事をもっと読む )
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp