中国国務院台湾事務弁公室(国台弁)の陳斌華報道官は、大規模リコール投票の結果を受けた記者会見で今後の両岸関係について「その『台独』の禍心を見極め、決して共鳴しない」と発言した。一方で、中国の民間世論は民進党の今後の政権運営の行方に異例の関心を寄せ、特に卓榮泰行政院長(台湾の首相に相当)率いる行政チームがどのような結末を迎えるのかを注視している。
取材に応じた学者は「中国には『台湾人民に期待する』という言葉が昔からある。今回の賴清徳政権の大規模リコールが不成立に終わったことは、台湾民衆が久しぶりに目を引く行動を示した事例だ」と語った。
「民生無視の罷免」―国台弁、民進党を痛烈批判
陳報道官は記者会見で、中国東部・北部・東北部が相次ぐ豪雨・暴風雨による極端な悪天候に見舞われ死傷者も出ている状況について、「現時点で台湾同胞が犠牲になったとの情報はないが、各方面が積極的に救援にあたっている」と述べた。そのうえで、台風4号(ダナス)が南台湾を直撃した際、民進党の救援対応が遅れ住民の不満を招いた問題に触れ、「被災者のニーズを無視し、救援も遅く不十分だった。再び『政治がすべてに優先する』本質と、一党の私利しか念頭にない真の姿を露呈させた。民進党当局と賴清徳が標榜する『民主・愛台』の偽善性を暴いた」と強い言葉で批判した。
賴清徳の「公民の力」発言を「自欺欺人」と断罪
記者会見では台湾メディアがリコール関連の質問を行ったが、中国メディアは一切質問をしなかった。賴総統がリコール後に「公民の力に感謝し、すべての政党・政治家は『国家』への忠誠義務を負っている」とSNSに投稿したことについて、陳報道官は「完全な自己欺瞞であり、頑なな『台独』本性を十分にさらけ出している」と断罪した。
また、賴総統が中米友好国を訪問する予定だったものの、米国側が賴氏の米国経由を拒否したとの報道については、「米国が中国台湾地区といかなる形式の公式往来を行うことにも断固反対し、賴清徳がいかなる名目・形式であっても『経由』して訪米することに断固反対する」と述べた。

学者分析:リコール後、両岸の民間交流は一層緊密に?
中国の民間社会は今回の台湾大規模リコール投票に異例の関心を示した。南京大学紫金メディアシンクタンクの研究員・燕志華氏は取材に対し、「中国の人々は国民党に対して複雑な感情を抱いている。簡単に言えば『その不運を哀れみ、その不甲斐なさに怒る』というものだが、それでもなぜか期待を寄せている。なぜなら国民党の対立相手は民進党であり、中国の人々にとって民進党は全く好感を持てない政党だからだ」と語った。
中国の若者が台湾のライブ配信に殺到
今回のリコール投票では、複数の台湾系ブロガーが中国のSNSで投票過程を生中継し、配信ルームには中国の若者が大量に流れ込み、コメントが殺到したという。燕氏は「中国の人々は台湾の若者に自然な好感を持っている。中国がここまで急速に発展できたのは、若者を信じてきたからだ。若者は党派やイデオロギーを超えた純粋さと可能性を持っていると感じている」と分析した。
「ネット有名人よりも専門家の発言に注目」
また燕氏は、中国の人々のインフルエンサーに対する見方についても言及。「中国の人々はネット有名人に対して比較的中立的で、ややネガティブ寄りだ。彼らの発言は必ずしも権威あるものとは見なされない。現実社会で具体的な権威的立場を持つ人物の発言だけが専門家としての意見と認識される」と述べた。
そして「現在、台湾の2~3人の専門家がメディアに頻繁に登場しており、中国の人々から高い注目と好感を集めている」と付け加えた。
編集:柄澤南 (関連記事: 頼清徳総統、リコール惨敗で支持者に謝罪 「悔しさを改革の決意に変える」 | 関連記事をもっと読む )
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