30日午前8時25分、ロシア・カムチャツカ半島東方沖でマグニチュード8.8の巨大地震が発生し、太平洋全域で広域津波警戒が出された。台湾中央気象署は直ちに津波警報を発表し、津波波が台湾時間午後1時18分から台湾各地に到達すると予測している。西南沿岸では13時31分に0.3〜1メートルの津波が到達する見込みで、台湾としては2011年の東日本大震災、2024年4月3日の花蓮地震に続き3度目の津波警報発表となった。津波専門家は「津波は一波だけではなく、次々に押し寄せる」とし、正しい避難知識の周知を強調した。
中央気象署地震観測センターの呉健富主任は「津波の伝播速度はジェット機に匹敵する」と警告。深海では時速720キロに達し、「0.3〜1メートルの津波でも海辺では人や車を流す恐れがある」として、沿岸住民に避難場所や高台への速やかな移動を呼びかけた。
台湾各地の津波の脅威レベルと警戒区域
中央気象署が最新発表した津波予測では、台湾の六大沿岸地域で異なる脅威が想定されている。
沿岸地域 | 予想到達時間 | 予想波高 | 警戒レベル | 主な影響地域 |
---|---|---|---|---|
東部沿岸 | 13:18 | 0.3メートル未満 | 軽微注意 | 花蓮・台東北部 |
東南沿岸 | 13:19 | 0.3〜1メートル | 高度警戒 | 台東成功〜屏東満州 |
東北沿岸 | 13:24 | 0.3メートル未満 | 軽微注意 | 宜蘭・基隆 |
西南沿岸 | 13:31 | 0.3〜1メートル | 高度警戒 | 台南〜屏東恒春 |
北部沿岸 | 13:41 | 0.3メートル未満 | 軽微注意 | 新北・桃園 |
海峡沿岸 | 13:45 | 0.3メートル未満 | 軽微注意 | 澎湖・金門 |
気象署は2025年2月に改訂された「津波情報発表要点」によると、津波予測波高は以下の4段階に分類される。
- 0級:0.3メートル未満(注意喚起レベル)
- 1級:0.3〜1メートル(人や車が流されやすい)
- 2級:1〜3メートル(厚さ3センチの木板を破壊可能)
- 3級:3メートル以上(浸水被害の恐れ)
東南沿岸と西南沿岸は地形の影響で波高が「堆積効果」により高くなりやすく、重点警戒区域とされている。
津波波はなぜジェット機並みの速度なのか
津波波の超高速伝播は物理学の浅水波理論に基づく。深海での速度は「重力加速度×水深の平方根」に等しく、太平洋の平均水深4000〜6000メートルでは秒速200メートル、時速約720キロに達する。呉主任は「台湾東部は海底が深いため波が高速で到達し、北部は海底が浅く速度が落ちる」と説明。これにより東部地域が最も早く影響を受け、北部は到達が遅れる傾向にある。
さらに浅海域では波前部が減速する一方、後方の波が高速で押し寄せるため、波が重なり合い、深海では0.5メートルだった波高が沿岸では10メートル以上に急増する恐れがある。
避難方法と避難場所の選び方
中央気象署と防災専門家は津波避難の「4大原則」を提示している。
高台へ、内陸へ、頑丈な場所へ、しっかり掴むの4点である。
1.高台への避難
3階建て(約10メートル)以上の建物や山の斜面への避難が推奨される。ただし呉主任は「建物の構造が不十分なら避難先にしない方がよい」と注意喚起している。
2.内陸への移動
高台が近くにない場合は内陸へ移動し、海岸線からできるだけ離れる。短距離移動に車を使うと渋滞や津波に巻き込まれる恐れがあるため、徒歩での避難が望ましい。
3.緊急避難
高台や内陸への移動が間に合わない場合は、頑丈な建物に避難し、扉や窓をできる限り開けて建物への水圧を軽減する。水中に落ちた際は、大きな浮遊物を掴むか、高い固定物に登って救助を待つ。
4.避難時間の把握
津波警報は3〜6時間前に発表されるケースが多い。今回の地震でも、発生から台湾到達まで6時間未満であり、迅速な避難行動が不可欠である。
津波は「一波で終わらない」
多くの人が第一波が過ぎれば安全と思いがちだが、呉主任は「津波は一波だけではない」と強調する。国際的な研究によれば、津波は8時間以上続くことが多く、後続の波が第一波よりも大きい場合もある。過去の災害では第一波後に海岸へ戻った住民が被害に遭うケースが多発しており、「警報解除」または「注意報解除」が発表されるまでは決して海辺に戻らないことが重要である。
編集:梅木奈実 (関連記事: M8.8巨大地震、津波がロシア沿岸を直撃 史上最強地震と津波被害を振り返る | 関連記事をもっと読む )
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