アメリカのトランプ大統領が自ら介入し、タイとカンボジアの両首脳に停戦に向けた取り組みを約束させたものの、両国の国境での衝突は27日未明も続いた。ロイター現地特派員によると、双方は互いに砲撃を仕掛けたとして非難し合い、少なくとも住宅1棟が損壊、家畜が複数頭死んだという。この武力衝突は4日間続いており、これまでに少なくとも33人が死亡、国境付近の両国で20万人以上が避難を余儀なくされている。
今回のタイとカンボジアの衝突は、過去十数年で最も深刻な交戦となった。両国は全長817キロに及ぶ陸上国境を接しており、境界線の一部が明確に画定されていないことから、長年にわたり争いが続いてきた。中でも11世紀に建てられた古代寺院「プレア・ビヒア(Preah Vihear)」と「タ・モアン・トム(Ta Moan Thom)」は、文化遺産であると同時に国家主権の象徴でもある。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の資料によれば、プレア・ビヒア寺院は1962年に国際司法裁判所の判断によりカンボジア領とされたが、周辺の土地の帰属をめぐっては依然として対立が続いており、国境地域の住民は長らく緊張の中で暮らしている。

カンボジア国防省の報道官は27日、タイ軍が同日未明に地上攻撃と重砲による砲撃を行い、タイの沿岸県トラート(Trat)に近いプノム・クモアチ(Phnom Kmoach)地域を標的にしたと明らかにした。攻撃は寺院の建築群にも被害を及ぼしたとし、フン・マネット首相率いるカンボジア政府は「これはタイ側が停戦合意に違反した証拠だ」と強調した。
一方、タイ軍はカンボジア側が先に発砲したと主張し、砲弾が複数の国境地域に着弾したと述べている。中には民家の近くに落下したものもあり、スリン(Surin)県の知事はロイターに対し、砲撃で住宅1棟が損壊し、家畜が数頭死亡したと証言した。また、シーサケット(Sisaket)県では、ロイターの記者が未明に砲声を聞いたが、発射元は確認できなかった。地元住民のタウォーン・トゥーサワン氏は「もし停戦が実現すれば状況は改善する。アメリカが停戦を主張してくれるのは本当にありがたい。平和につながるはずだ」と語った。

カンボジアのメディア《プノンペン・ポスト(Phnom Penh Post)》によると、カンボジア軍はオッドーミーンチェイ(Oddar Meanchey)州に臨時のキャンプを設置し、避難民に水などの支援を提供しているという。現地ではバッタカオ小学校(Batthkao Primary School)に数百人の住民が集まり、支援物資を受け取る様子が確認された。混乱の中にも秩序が保たれていたとされる。
一方、トランプ米大統領は26日にタイとカンボジアの両首脳と個別に電話会談を行い、その後SNS上で「双方とも即時停戦と平和を望んでいる」と一方的に発表した。自身の持ち味とする「取引の技術」を用い、両首脳に早期会談と迅速な停戦合意の締結を強く促した。
停戦に向けた一筋の光が見えつつあるものの、AFP通信の記者やカンボジア国防省によれば、27日もタイ・カンボジア両軍の砲撃は4日連続で続いたという。
編集:柄澤南 (関連記事: 戦争に発展する恐れも!タイ・カンボジア衝突が2日目に突入 「砲撃が止まらず」16人死亡、10万人避難 | 関連記事をもっと読む )
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