タイとカンボジアの国境で発生した衝突は2日目に入り、双方の激しい交戦によって深刻な犠牲が出ている。タイの副首相で首相代行のプームタム・ウェーチャヤチャイ氏は、続く戦闘が「戦争に発展する恐れがある」と警告した。タイ保健省の統計では、これまでに民間人14人と兵士1人が死亡し、多数が負傷している。ウボンラーチャターニー県やスリン県では10万人以上の住民が避難を余儀なくされ、カンボジアのオッドーミアンチェイ州でも民間人の死者が報告され、約1500世帯が緊急避難した。
戦闘現場の状況はどれほど深刻なのか?
現場の状況は極めて厳しい。BBCの報道によると、24日に始まった新たな衝突は一晩中続き、ロケット砲や砲弾が途切れることなく飛び交った。タイ・スリン県の臨時避難所は多くの住民であふれ、その多くが子どもや高齢者だった。1980年代のカンボジア内戦を経験したという住民は「今回の戦闘はこれまでで最もひどい」と語った。
国際社会はこの衝突にどのように反応しているか?
- 米国務省は「即時に敵対行動を停止し、民間人を保護し、平和的な解決を」と双方に呼びかけ、犠牲者への哀悼を示した。
- マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は「バンコクとプノンペンが前向きな意志を示したことを歓迎する」と発言。
- 中国外務省は「深い懸念」を表明し、対話による解決を促した。
- オーストラリア、EU、フランスも共同で即時停戦を訴えている。トラリア、EU、フランスも即時停戦を共同で呼びかけた。

この衝突はなぜエスカレートしたのか?
今回の衝突の背景には長い歴史がある。タイとカンボジアの国境をめぐる対立は、19世紀末のフランス植民地時代にさかのぼる。当時、フランスが定めた国境線がその後の争いの火種となった。特にプレア・ヴィヒア寺院周辺は長年の対立の焦点であり、1962年に国際司法裁判所が寺院の主権をカンボジアに帰属させると判断したものの、周辺地域の線引きは曖昧なまま残され、現在も双方の軍事的緊張の根源となっている。
最近の緊張が高まった経緯は次の通りだ:
- 5月:カンボジア兵士が交戦中に死亡し、状況が悪化。
- 7月16日:タイ軍のパトロール部隊が地雷に接触し、3人が負傷、1人が片足を失った。
- 7月24日:双方が「相手が先に発砲した」と非難し合い、ドローン監視や寺院周辺での軍事活動をめぐる争いが衝突の中心となった。
タイとカンボジアの衝突の時間軸整理
時間 | 事件内容 | 影響 |
---|---|---|
5月 | カンボジア兵士が交戦中に死亡 | 双方の関係が急激に悪化 |
7月16日 | タイ軍巡回中に地雷に接触、3人負傷、1人が片足を切断 | タイ側の強い不満を引き起こした |
7月24日 | 相互に先制攻撃を主張し、衝突が全面化 | タイの14人の民間人と1人の兵士が死亡;カンボジアで1人の民間人が死亡 |
7月25日 | 国連安保理が状況を協議する会議を開催 | 国際社会が高い関心を示し、即時停戦を呼びかけた |
知識補足:タイとカンボジア国境紛争の歴史的背景
タイとカンボジアの国境問題は、19世紀末のフランス植民地時代にまでさかのぼる。当時、フランスがカンボジア側の立場で国境線を定めたことが、後の長期的な対立の火種となった。特に、プレア・ヴィヒア寺院(Preah Vihear Temple)周辺の領有をめぐって長年争いが続いている。1962年、国際司法裁判所はこの寺院の主権をカンボジアに帰属させる判決を下したが、寺院の周辺地域については線引きが曖昧なまま残され、それが今日まで続く両国の軍事的緊張の根源となっている。
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp (関連記事: フン・セン上院議長、「中国逃亡」報道を否定 カンボジア・タイ国境衝突で反撃指揮を主張 | 関連記事をもっと読む )