夏珍コラム:24時間後 私たちはまだ「台湾人」と呼べるのか

2025-07-25 15:07
大リコール運動を主導する曹興誠氏は、自身と沈伯洋氏への批判を「親中・売台」と断じた。写真は民進党立法委員の沈伯洋氏(左)と、聯電創業者の曹興誠氏(右)。(写真/劉偉宏撮影)
大リコール運動を主導する曹興誠氏は、自身と沈伯洋氏への批判を「親中・売台」と断じた。写真は民進党立法委員の沈伯洋氏(左)と、聯電創業者の曹興誠氏(右)。(写真/劉偉宏撮影)
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台湾は神秘的な島であり、幻想のような国家である。ある朝目を覚ましたとき、もう自分は台湾人ではなくなっているかもしれない──そんな事態を誰が想像しただろう。かつてなら「そんなはずはない、中国大陸に長期滞在し居住証を取得した学者だけが『台湾人資格を失う』」と言い切れた。しかし今、民進党総召集人の柯建銘氏は断じる。「リコールに行かなければ、あなたは台湾人ではない」と。

「史詩級の民意」の実態は小さな数字

7月26日の投票に行かなかった人、あるいは不同意票を投じた人は、柯氏の言う「非台湾人」なのか。さらにリコール選挙区外の約1300万人の市民は台湾人と見なされるのか――その基準はもはや曖昧だ。74歳の柯氏は「偉大な台湾人が立ち上がった。これは“史詩級(歴史的規模)”の民意だ」と高らかに記したが、今回のリコールで投票資格を持つのは約680万人にすぎない。全有権者の35%にも満たない数字で「大民意」と称するのは、あまりに小さい。

重要なのは実際に「リコール同意」に回る票がどれほどかだ。仮に柯氏の思惑通り24議席すべてがリコールされても、成立ラインは25%。つまり同意票が不同意票を上回ったとしても、その規模はおよそ165万票――これを「偉大な民意」と呼ぶのだろうか。これこそ柯氏が賴清徳総統に献策した「絶地大反攻」であり、自らが言う「小をもって大を打つ」戦法である。

賴総統は約4割の支持しか得ていないのに全権を握ろうとし、わずか25%で6割(国民党・民衆党陣営)の得票を覆そうとしている。総統選からわずか2日後の会談で既に決めていた。「民衆党が無条件で協力しないなら、1年後に全面リコールを仕掛ける」と。

算盤にまったく根拠がないわけではない。だが残念なのは、賴清德氏、卓榮泰氏、柯建銘氏という三人の「凡人」から、真の諸葛亮のような策士が生まれるはずもないことだ。仮に賴氏が25%の票を基準に国会をひっくり返すことに成功したとしても、「四割の民意で選ばれた総統」は瞬く間に「二割五分の総統」に変わり、その政策や訴えが、わずか25%の民意で押し戻される影響を免れられない。

リコール団が党を振り回す 「神」とされた曹興誠氏

柯建銘氏の「小を以て大を打つ」という算段のため、賴清徳氏と民進党は一年間、青い鳥リコール団という「大きな尻尾」に振り回される犬のような存在となった。リコールの成否を問わず、民進党はこの尻尾に振り回され続け、すでに「尻尾が犬を振る」構図が出来上がっている。民進党と青い鳥は互いを慰め合いながらも足を引っ張り合い、柯建銘氏、賴清徳氏、曹興誠氏の誰もがリコール終盤で、控えめに言えば失言を、率直に言えば妄言を重ねている。

曹興誠氏は今回の「大リコール」を「台湾を愛する者と台湾を売る者の対決だ」と位置づけ、沈伯洋氏と共に「我々を罵る者は皆親中売台派だ」と言い切った。大リコールは本来、民主政治の常態とは言えないが、彼は「これほどの大政党が国会で国家を裏切るのも常態ではない。だから非常態には非常態で対抗するしかない」と主張する。そして最後には「国民党の立法委員を追い出し、正常な国会を取り戻す」と呼びかけた。

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