タイとカンボジアの国境地帯で24日、再び武力衝突が激化し、戦火は民間地域にまで拡大した。複数の死傷者が出ており、現地では人道的被害への懸念が高まっている。
Facebookページ「Army Military Force – สำรอง」によると、24日正午ごろ、カンボジア軍がBM-21多連装ロケット砲を用いて、タイ東北部スリン県の住宅地に複数発射。これにより、家屋にいた住民が負傷する事態となったという。
衝撃映像が拡散 血まみれの少年を抱え病院へ向かう祖母の姿
SNS上では、現場から撮影されたとみられる映像が急速に拡散している。動画には、複数の負傷者が小型トラックで医療施設へ搬送される様子が収められている。
中でも視聴者の心を揺さぶったのが、血まみれの高齢女性が、ぐったりと意識を失った幼い男児を抱え、トラックの荷台に揺られながら病院に向かう場面である。愛する家族の命が危機に瀕する中、どうすることもできない祖母は、嗚咽混じりに泣き崩れていた。
その後、医療スタッフが現場に到着し、男児をストレッチャーに固定して救急搬送。祖母は周囲の助けを借りながらトラックを降りた。
負傷者続出 血に染まった顔で虚ろに座る男性も
同じトラックには、他にも多数の負傷者が同乗していた。外側に座っていた男性は、顔や身体中が血で覆われており、意識はあるものの虚ろな様子で車体にもたれかかっていた。また、別の男性は血に染まり、意識を失った状態で家族の腕の中に横たわっていた。
映像に映るこれらの惨状は、戦闘がもたらす民間人への甚大な被害を如実に物語っている。
SNSで非難の声相次ぐ 「人道に反する蛮行だ」と激しい批判
この映像が公開されるや否や、タイ国内のSNSでは激しい怒りの声が広がった。カンボジア軍による無差別な住宅地への攻撃に対し、「民間人を狙った非人道的な蛮行だ」「絶対に許されない」といった厳しい批判が相次いでいる。
タイ・カンボジア国境ではここ数週間、タ・モアン・トム寺院周辺の領有権をめぐって両軍が対峙し、緊張が高まり続けていた。今回の衝突により、その代償を最も大きく払っているのは、戦火とは無関係の一般市民であることが改めて浮き彫りとなった。
編集:梅木奈実 (関連記事: タイとカンボジア、なぜ開戦?前首相の『通話漏洩』が引き金に──百年にわたる寺院領有権争い、再燃 | 関連記事をもっと読む )
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