「可愛い・伝統 ・ サイエンス・サステナブル」が融合──東京ビッグサイトに手作り文化の最前線が集結 夏の恒例イベント「HandMade in Japan Festival」がこのほど東京ビッグサイトで開催され、全国から集まったハンドメイド作家やクリエイターたちによる多彩な作品が披露された。今年は3,000を超えるブースが出展され、スイーツや工芸品、ファッション雑貨、生活用品など、多岐にわたるジャンルの「手作りの魅力」が一堂に会した。
来場者の多くは、作品の購入だけでなく、作家本人から直接制作背景やこだわりについて話を聞ける点に魅力を感じていた。現場では、伝統技術を活かした逸品から、科学的アプローチによる素材の革新、さらには持続可能性を意識したエシカルな製品まで、現代のハンドメイド文化の多様性と進化が見られた。
「HandMade in Japan Festival」が東京ビッグサイトで開催 全国から作家・クリエイターが集う。(写真/黃信維撮影)
メルヘンの世界に誘う「Amane」のアイシングクッキー 編集部がまず注目したのは、「Amane 可愛くて、不思議で、ちょっとダークなお菓子屋さんと人生が変わるアイシングクッキー講座」のブースだ。 童話の 世界を思わせるディスプレイには、繊細な装飾が施されたアイシングクッキーが並び、多くの来場者の目を引いていた。
店主は「全部クッキーなんです。見た目が可愛いだけでなく、味にも自信があります。毎年デザインを変えていて、同じものはほとんど作りません。Instagramを見てもらうと、6年間の変遷がよくわかると思います」と話す。
「HandMade in Japan Festival」が東京ビッグサイトで開催 全国から作家・クリエイターが集う。(写真/黃信維撮影) また、店内ではアイシングクッキーのワークショップも定期的に開催しており、実際に手を動かす体験型のサービスも人気を集めている。「現在の注文は日本語中心ですが、将来的には海外のお客様にももっと気軽にご購入いただけるようにしたいです」と語り、今後はグローバル展開への意欲もにじませた。
「HandMade in Japan Festival」が東京ビッグサイトで開催 全国から作家・クリエイターが集う。(写真/黃信維撮影)
京都の伝統工芸を日常に──金彩技術を生かした雑貨「takenaka kinsai」 続いて訪れたのは、京都の工芸ブランド「takenaka kinsai」。 もともと婚礼衣装や和服に施す金箔装飾「金彩(きんさい)」の技術を、現代のライフスタイルに合う雑貨へと昇華させたブランドだ。店主は「和服の金彩技術を、もっと多くの人に日常で楽しんでいただけるよう、小物やアクセサリーに応用しています」と語る。
「HandMade in Japan Festival」が東京ビッグサイトで開催 全国から作家・クリエイターが集う。(写真/黃信維撮影) ブースには、リフレクター機能付きのアクセサリーや、銀箔で仕上げた財布・コースターなどが並び、なかでも硫黄で銀を燻して風合いを変化させる「いぶし銀」の技法が注目を集めた。
「HandMade in Japan Festival」が東京ビッグサイトで開催 全国から作家・クリエイターが集う。(写真/黃信維撮影)
科学とハンドメイドの融合──「ニケルxp」の理系アート 続いて訪れたのは、科学的なアプローチで注目を集める理系クリエイター「ニケルxp」のブース。そこには、透明樹脂を使ったUSBメモリや「USBキャンドル」など、実用性とアート性を兼ね備えた作品が並んでいた。
店主は「この透明USBメモリには桜や花火のモチーフを封入しています。最近ではUSBキャンドルが人気で、モバイルバッテリーにつなぐと優しい灯りがともり、防災グッズとしても役立ちます」と紹介する。
「HandMade in Japan Festival」が東京ビッグサイトで開催 全国から作家・クリエイターが集う。(写真/黃信維撮影) 作品の制作には、科学的知識が欠かせない。高圧・減圧環境を使って気泡を抜き、硬化時間と温度の関係を計算しながら、品質を安定させているという。「ここまで科学的に樹脂を扱うハンドメイド作家は少ないと思います。それが自分の最大の強みです」と語り、クラフトの枠を超えたものづくりの可能性を提示した。
「HandMade in Japan Festival」が東京ビッグサイトで開催 全国から作家・クリエイターが集う。(写真/黃信維撮影)
規格外フルーツを美味しく再生──「nin」の無添加フルーツバター 次に注目したのは、食品ロス削減をテーマに活動するフルーツバターブランド「nin」。ブースには色とりどりの瓶詰めが並び、果物そのものの鮮やかな色彩が来場者の目を引いていた。
「この商品は、サイズが大きすぎたり小さすぎたり、見た目が理由で市場に出せない“規格外フルーツ”を活用しています」と語るのは店主。農家で廃棄されがちなフルーツを買い取り、無添加でジャムやフルーツバターに加工している。
「HandMade in Japan Festival」が東京ビッグサイトで開催 全国から作家・クリエイターが集う。(写真/黃信維撮影) 人気商品は洋梨バターだが、洋梨は日持ちがしないため季節限定販売となっている。ブランドの原点はリンゴバターで、「リンゴの美味しさをそのまま閉じ込める」というコンセプトで誕生した。保存料や乳化剤を一切使わず、職人が一瓶ずつ手作業で仕上げているという。
「常設店舗はなく、普段はオンラインショップやセレクトショップを通じて販売しています。こうしたイベントに出店することで、お客様に直接試食していただける機会を大切にしています」と語り、エシカル消費への新たな提案を行っていた。
「HandMade in Japan Festival」が東京ビッグサイトで開催 全国から作家・クリエイターが集う。(写真/黃信維撮影)
見るだけで癒やされる──動物陶器作家「いぢまゆういち」 最後に訪れたのは、動物をモチーフにした陶器作家「いぢまゆういち」氏のブース。クジラや鳥、ウサギなどをかたどった小さな陶器作品が整然と並び、まるで小さな動物園のような、心和む空間が広がっていた。
「制作そのものが表現です。冬場は特に、成形から乾燥、焼成、彩色、そして組み立てまで、最低でも1か月はかかります」と、手間と時間を惜しまぬ制作過程を紹介する。
「HandMade in Japan Festival」が東京ビッグサイトで開催 全国から作家・クリエイターが集う。(写真/黃信維撮影) 「どう飾るかはその人の自由。組み合わせ次第で無限に楽しめます」と話し、実用性よりもインテリアや癒しとしての役割を重視している。作品は希少で、年に数回のイベントでしか出会えないという。
「HandMade in Japan Festival」が東京ビッグサイトで開催 全国から作家・クリエイターが集う。(写真/黃信維撮影)
手作りの現在地──体験と交流のハブとしてのフェスティバル 「HandMade in Japan Festival」は、販売だけでなく、ワークショップやライブパフォーマンス、来場者参加型の体験イベントも充実しているのが特徴だ。訪れた人々は作品を手に取るだけでなく、作り手の想いや背景を知ることで、ハンドメイドの世界をより深く体感することができる。
「HandMade in Japan Festival」が東京ビッグサイトで開催 全国から作家・クリエイターが集う。(写真/黃信維撮影) 2013年の初開催以来、クリエイターとファンが直接交流できる貴重な場として成長を続け、現在では東京を代表するクラフトイベントのひとつに数えられている。大量生産では味わえない温もりと物語性を求めて、今後も多くの人がこのフェスティバルを訪れることだろう。