日本は今、保守が多極化する新たな局面に入っている。7月20日の参議院選挙で自民党は近年で最も深刻な敗北を喫し、地方選挙区を次々と失った。しかしこの流れで左派が勢いを得たわけではなく、むしろ民族保守勢力に新たな活路を開く形となった。象徴的な例として、参政党が擁立した新人の沙耶(さや)が東京選挙区で予想外の得票を重ね、第二位に躍り出た。この結果は、右傾化の波がもはや農村や地方だけの現象ではなく、日本の中枢である都市の民意にまで浸透していることを示している。
この選挙結果は自民党の危機を浮き彫りにした。全国32の改選定数1の1人区のうち、自民党は14議席にとどまり、18議席を失って2007年以来最悪の記録を更新した。大阪では27年ぶりに敗北し、四国の3選挙区では全滅、かつて派閥の鉄票田とされた前幹事長二階俊博の家族勢力による「二階王国」和歌山でも2024年衆議院選以来の連敗を喫した。党内に更なる衝撃を与えたのは、現職の自民党幹事長森山裕の鹿児島選挙区でも敗北したことで、党幹部の中核地盤すら守り切れず、地方派閥体制の全面的な動揺は避けられない状況となった。
「日本人優先」を訴求 参政党が東京で第2位獲得 しかし注目すべきは、流出した票が立憲民主党、共産党、社民党などの左派・進歩陣営に回帰しなかったことである。むしろ国民民主党が現状に不満を持つ穏健保守票の一部を吸収し、参政党は排外的訴求と「日本人優先」の鮮明な主張により都市社会への進出に成功し、東京で第2位の得票を獲得、全体の議席数も大幅に増加し、投票構造からも大量の若年層の支持を得ていることが判明した。日本保守党も初めて議席を獲得した。保守票は分散したものの、全体的な政治スペクトラムはより右寄りとなり、極端な民族保守勢力の議題も表面化することとなった。
参政党の都市部での台頭の背景は深く考察する価値がある。この新興政党は減税と積極財政を並列し、既存政党の移民政策とグローバル化問題への曖昧な態度を批判している。その支持者は一部の若年層、中産階級、生活コストに不安を抱く家庭層にわたり、これらの人々は従来の自民党を信頼せず、進歩派にも期待を寄せていないため、参政党にとって最も重要な新たな票田となった。東京選挙区での成績は、民族主義と排外感情が農村部だけで発酵するのではなく、情報が高度に流通する都市中核部でも共感を得られることを証明した。
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この傾向は、安倍晋三前首相 の長期政権終了後、日本の保守政治が段階的に均衡を失った結果である。安倍前首相在任時は「保守的中核+経済開放」で政権を維持し、アベノミクス、観光立国、外国人労働者政策などを推進することで、日本経済がグローバル化の波の中で一定の活力を維持できるようにし、同時に安保法制の改正や自衛隊の強化を通じて伝統的保守派の要求を満たした。このバランスモデルにより自民党は地方と都市の両方で支持率を維持できた。しかし安倍氏退任後、自民党は菅義偉氏の短期政権、岸田文雄氏の「新しい資本主義」を相次いで経験し、コロナ禍は乗り切ったものの、深層構造問題を真に解決することはできず、社会不安は解消されるどころか継続的に増大した。
日本参政党党首の神谷宗幣氏。(AP通信)
日米関税交渉の状況不明、コメ価格高騰 石破茂氏の政権発足後、国民の不満が急増 2024年に石破茂氏が首相に就任した後、初登場の衆議院選挙で敗北を喫し、その後も有権者に実感をもたらす政策を打ち出すことができなかった。日米関税交渉は全く進展せず、コメ価格と農業補助金などの問題も依然として宙に浮いたままで、農村部の不満が継続的に蓄積された。物価上昇、少子化、労働力不足などの連鎖的圧力も加わり、社会不安が急速に拡散し、「日本人優先」という政治スローガンの動員基盤を創出した。参政党などの極端な民族保守勢力はまさにこのために拡大し、右寄りの国民民主党も大幅に成長して保守右派の票を吸収した。
党内外から退陣要求相次ぐ、石破政権の求心力低下鮮明に 石破茂首相の進退問題をめぐり、党内外から厳しい批判が相次いでいる。自民党内の若手世代を代表し、SNS上でも高い支持と影響力を持つ神戸市議の上畠寛弘氏は、Xで「石破内閣は国益を損ない、国民の信頼を完全に失った。即刻総辞職すべきであり、自民党総裁の辞任も不可避だ」と鋭く批判、その発言はネット上で瞬く間に拡散された。
神戸市議・上畠寛弘氏。 さらに、前首相の麻生太郎氏も石破氏の続投に否定的な見解を示し、選挙前から高山早苗氏も政権運営の問題を指摘していた。加えて、河野太郎氏は幹事長の森山裕氏に対し責任を取って辞任するべきだと迫るなど、党内の不満は幹部クラスにも広がっている。
地方組織からも退陣を求める声が強まり、高知県連は正式に石破首相へ退任を要請したことが明らかになった。こうした動きにより、石破政権の求心力は急速に低下しつつあり、与党内での立場は一層厳しいものとなっている。
歴史的に日本は重大な危機の際に2度の国家レベルの転換を成し遂げた。明治維新では封建体制が短期間で解体され、迅速に近代化への道を歩んだ。第二次大戦敗戦後、日本は民主化改革を推進し、冷戦構造の下で経済奇跡を創造した。この2度の改革はいずれも国家定位の再構築を伴い、日本が国際秩序の中で新たな位置を見つけることを可能にした。しかし現在の集団的感情に直面する今日の日本は、第3の開放や制度革新に向かうのではなく、むしろ社会不安と不安の中で収縮を選択し、一種の「半鎖国」的保守姿勢を呈している。
2025年7月20日夜、自民党総裁・日本首相石破氏茂が本部で開票を見守る。(AP通信) 欧州から各国へと広がる右派の波は、近年の欧州における右派勢力の台頭と軌を一にしている。経済の安全や文化的なアイデンティティが脅かされるとき、進歩派の言葉は説得力を失い、むしろナショナリズムや排外的な言説のほうが共感を呼びやすくなる。立憲民主党、共産党、社民党はいずれも停滞したままで、与党への不満を受け止める力を持てず、日本の右傾化は偶発的な現象ではなく、社会の奥深い感情が映し出された結果だと際立っている。
ただ、最終的な結果は盟友である公明党と合わせても過半数には届かなかったものの、自民党単独の議席数は事前の予測よりわずかに上回り、危機的状況のなかでも一定の基盤を維持していることを示した。しかし、それだけでは大勢を覆すには至らない。台湾や東アジアにとって、日本の保守政治の分裂は単なる内政問題にとどまらない。自民党の伝統的な保守派には親台的な立場をとる議員が多いが、新興右派政党がその姿勢を継承するかどうかは依然として不透明だ。今後、日本が保守回帰のなかで閉鎖的な方向へ向かうのか、それとも再び自己改革の契機を見いだすのかが、国際および地域の安全保障における役割を左右することになる。