台湾の年度最大規模の軍事演習「漢光41号」は、2025年7月18日に全日程を終えた。10日9夜にわたる「史上最長」の今回の演習は、これまでのような大規模な見せ場を作るものではなく、実兵・実地・実時を重視した実戦型訓練に大きく舵を切った。中国による台湾侵攻を想定し、平時から戦時への転換、備戦配備、統合反上陸、沿岸・海岸戦闘、縦深防御、持久作戦の五段階で構成されている。特に縦深防御と持久作戦は、今回初めて実戦的な検証が行われた。軍はなぜこのような調整に踏み切ったのだろうか。
国防部は今年3月、最新の「四年期国防総検討(QDR)」を発表し、台湾の軍事戦略を「防衛固守、重層抑止」と位置づけた。地理的優位を活かしつつ、各種兵器を柔軟に活用する方針だ。また「多領域拒否・靱性防衛」を掲げ、陸海空サイバーを横断する作戦体系を整備している。今回の漢光41号では、この「多領域拒否」の実践が重点的に検証された。演習期間中、米軍がこれまでにない規模で台湾に姿を見せたことも注目を集めた。彼らは台湾軍のどの変化を最も重視していたのか。

「多領域拒否」を具現化 米前太平洋陸軍司令官も現地視察
風傳媒は漢光演習期間中、複数の地域を実際に取材した。これまで海岸での塹壕掘削や鉄条網設置に限られていた工事が、今回は飛行場や港湾に通じる道路にも多くの阻止工事が施されていた。軍関係者は「作戦計画を見直し、敵の上陸を遅らせるため、より多くの拠点で阻止工事を実施した」と説明する。蔡英文総統が唯一視察したのは高雄での海軍による機雷敷設で、これも中国の接近を阻む第一の防壁として重視されている。軍はHESCO製の新型機動阻止資材を投入し、化学兵も前線に出して放火阻止施設を設置するなど、徹底した。
特に印象的だったのは、中部地区での阻止陣地の設置作業に米軍約30人が現れ、説明を受けた後に直接陣地へ入り、質疑を重ねた場面だ。さらに淡水河での「実爆阻止」にも立ち会い、米前太平洋陸軍司令官チャールズ・フリン氏の姿も確認された。米軍が台湾の多領域拒否の配備と運用を強く注視していることがうかがえる。

縦深作戦を初めて本格検証 防御の厚みを増す
中国軍による上陸を阻むため、今回の漢光41号演習では多重の阻止を重点的に検証した。しかしそれだけではなく、もし阻止が突破された場合を想定した「縦深作戦」段階の演習も実施された。「縦深作戦」とは何か。軍関係者によれば、縦深防御・持久作戦はもともと従来の地上作戦の一部だが、これまでの漢光演習ではこの段階で通常、戦傷救護や地上整備を行ったところで終了し、実戦的とは言えなかった。だが2025年の今回、縦深作戦の検証は丸2日間にわたって行われ、これは作戦計画が「逐次抵抗」を基本とする方向に改められたことを示している。
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では、なぜこうした調整が必要だったのか。軍関係者は、中国共産党の長距離砲撃能力が一段と強化されている現状を踏まえ、「主力部隊をすべて海岸線に並べれば一撃で殲滅されかねない。都市防御と結びつけて戦う必要がある」と説明する。漢光41号が「史上最長」と呼ばれるのは、単に日数を延ばすためではなく、縦深作戦を初めて本格的に検証したからだとも語った。従来の演習でも縦深防御の計画自体は存在したが、内容が伴わず、予備旅団に任せきりだった。今回は予備旅だけでなく守備部隊も後退を含めた動きを取り入れ、攻撃部隊を前線に張りつけない戦い方を試した。