台湾が中国に侵攻された場合、同盟国がどこまで支援に踏み出すのかは、長く注目されてきた。結局のところ「国軍が何日持ちこたえられるか」という問いは、「台湾が支援を受けられるまで耐えられるか」に置き換えられる。台湾はどの大国とも正式な国交を持たず、軍事同盟や共同防衛協定もないが、米軍と日本の自衛隊が最も早く関与するのではないかとの見方が一般的だ。
しかし英紙『フィナンシャル・タイムズ』は先週、米国防総省が「台湾有事」での役割について日本やオーストラリアに圧力をかけているものの、東京とキャンベラはワシントンが期待する回答を出していないと報じた。複数の日本政府関係者は、平和主義憲法のもとでは「現地政府の承認がなければ、自衛隊は国外に展開できない」と説明したという。
台湾有事なら「自力で守れ」 企業に突きつけられた現実
さらに『フィナンシャル・タイムズ』は19日、ここ数年で日本の対台湾投資がほとんど増えない理由を独自報道した。東京当局は近年、日本企業に対し「北京が台湾を攻撃した場合、従業員の保護も撤退も自分で対応せよ」とのメッセージを繰り返しているという。これが2022年以降、台湾に拠点を持つ大手日系企業が毎年「撤退訓練」を行っている背景であり、最大の外資の一角だった日本投資を冷え込ませる要因にもなった。
同紙は「アジア太平洋の政府や企業が、潜在的な台湾海峡危機に備えるには実務面でも政治面でも大きな困難がある」と指摘。ある日本政府関係者は「日本は外交上、台湾を国家として承認していない。われわれの見方では台湾には“政府”が存在しない」と述べ、中国が自衛隊による台湾での撤収作戦を承認する可能性は極めて低いとも強調した。
日系投資の急減 背景にリスク回避
日本政府は「台灣での邦人撤収を支援しない」と公式に認めたわけではないが、外交官や企業幹部は「似た警告を3年ほど前から受けている」と証言する。ある官僚は企業向けの席で「大量の資産を台湾に置くなら、自力でやってくれ」と述べたという。『フィナンシャル・タイムズ』は、これが対台投資の急減につながったと分析する。
米国側の関係者は「台湾には新規の米国投資が増えているが、日本投資はほとんど見られない」と話した。統計では、日本は欧米に次ぐ台湾第三の外資源だったが、昨年は前年比27%減の4億5,200万米ドル(約710億円)となり、2022年の17億米ドル(約2,670億円)のピークを大きく下回った。
帝国データバンクの調査によると、台湾には約3,000社の日系企業が拠点を持ち、その3分の1が製造業、とりわけ半導体関連で占められる。小売・卸・外食なども主要投資分野だ。日米同盟に詳しい人物は「東京のメッセージは、今後の局面に何の助けにもならない。危機の際には“日本の官僚主義が身動きできる速さ”より、現場の判断が優先されるだろう」と指摘した。
(関連記事: 石破氏に辞任求める声 自民惨敗で「日本政治は漂流期に」東大教授が警鐘 | 関連記事をもっと読む )
一方、米英からの外資は伸びている。データセンターや洋上風力発電への資金流入が牽引し、2024年の対台直接投資は過去最高を記録。米国からは9億3,800万米ドル(約1,470億円)で2022年のほぼ2倍、英国からは15億4,000万米ドル(約2,410億円)で同じくほぼ倍増した。