台湾有事、日本は介入するのか?日台対話で示された「2つの前提」とは

2025-06-25 12:36
公益財団法人笹川平和財団と台湾シンクタンク遠景基金会の共催で「日台対話2025」が6月24日に開催された。(写真/黃信維撮影)
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公益財団法人・笹川平和財団と台湾のシンクタンク・遠景基金会が共催する「日台対話2025」が、6月24日に開催された。会議終了後、両主催者は東京・海運クラブで記者会見を行い、当日の議論内容を公表した。主催側によれば、今年の対話は中国が2027年に台湾への武力行使に踏み切る可能性を主軸に据え、日台双方の軍事および経済安全保障における対応方針について、踏み込んだ意見交換がなされたという。なお、両シンクタンクは本年11月に台北で「日米台戦略シミュレーション演習」の開催を予定しており、今回の対話で共有された問題意識も、そのシナリオ設計に反映される見通しである。

記者会見では、笹川平和財団戦略学習部長の山本氏が司会を務めた。山本氏によれば、「日台対話」は2010年代から継続的に行われており、毎年、日台の外交・国防・経済分野の専門家を招き、相互訪問と議論を重ねてきた。今年の会議では、「全体情勢」「軍事安全保障」「経済安全保障」の三つのテーマに沿って進行された。参加者は合意形成や解決策の提示を目的とはせず、各テーマに対する認識の共有と立場の相互理解に主眼が置かれた。

また、笹川平和財団常務理事で元国家安全保障局次長の兼原信克氏は、これまで米国が構築してきたインド太平洋地域の安全保障体制は二国間同盟を基軸としており、同盟国間の横の連携が相対的に不足しているとの認識を示した。

日台行動の時機に関する議論 兼原信克氏:米軍動員と日本の巻き込まれ状況が鍵

兼原信克氏は、今回台湾の安全保障専門家と直接意見を交わす機会を得たことは、大きな意義があると述べた。記者からの質問に対し、同氏は「日本の台湾海峡における役割は、確かに日米安全保障体制の枠組みに制約されている」と認めつつも、現代の複合的な戦争様態に備えるためには、「守るべき価値」や「国家としてのレジリエンス(回復力)」を日本社会全体で継続的に強化していく必要があると強調した。

「我々は情勢をエスカレートさせる側ではないが、備えを欠くことは許されない」と述べ、さらに台湾側が重視しているのは「日本がいつ行動に出るのか」という点である一方、日本の対応は「米軍の動員と、日本自身が影響を受けるという前提のもとに成り立っている」との見解を改めて示した。

中国の国連決議操作 賴怡忠氏:これは法律戦だ

台湾のシンクタンク・遠景基金会の賴怡忠執行長は、記者会見の中で、今回の「日台対話」では政治・経済・安全保障といった多岐にわたるテーマが取り上げられたことを明らかにした。特に、台湾海峡情勢が一層緊迫化する中で、日台双方が新たな時代の課題にどう向き合うかが、議論の中心となったという。

賴氏はさらに、今回参加した日本側の関係者が、台湾が中国の「法律戦」に対して極めて敏感である点に強い関心を示したことにも言及した。中でも、近年中国が「台湾は中国の一部」との主張の根拠として頻繁に引用する国連総会決議第2758号に対し、日本のメディアや政策議論では比較的静かな反応にとどまっていると指摘した。