英国、日本、イタリアの防衛産業大手3社は6月20日、次世代戦闘機開発を担う合弁企業「Edgewing(エッジウィング)」の正式設立を発表した。この企業は、3カ国が推進する「グローバル戦闘機プログラム(GCAP)」の中心的な実行機関となり、2035年までに第6世代のステルス戦闘機を実戦配備する計画である。
合弁には、英国のBAEシステムズ、イタリアのレオナルド社、日本の航空機工業振興会社(JAIEC)が参加し、各社が33.3%の株式を保有する。JAIECは、三菱重工業と日本航空宇宙工業会が2023年に設立した企業である。Edgewingの本社は英国に置かれ、設計から開発、ライフサイクル管理に至るまでの責任を担い、2070年以降まで運用される戦闘機の設計を主導する。

独自開発路線から多国間協力へ
新CEOには、元レオナルド社航空部門のマネージャーであるマルコ・ゾフ氏が就任。「次世代戦闘機の開発は、技術のみならず国際協力と信頼の新たな基準を築く機会だ」と述べた。
GCAPは、2022年12月に日英伊の3政府が発表し、それぞれが進めていた戦闘機開発計画を統合した国際プロジェクトである。2023年12月には3国の防衛相が東京で正式合意に署名し、管理機構として「GCAP国際政府組織」を英国に設立。責任者には、日本の元防衛省高官である岡正美氏が就任している。
岡氏は、Edgewingの設立に関する声明で、この合弁企業の設立を歓迎し、その組織とEdgewingとの「効果的かつ強力な協力」がGCAPの成功の鍵であると強調した。
GCAP戦闘機は、英国のユーロファイター タイフーン、日本のF-2、イタリア空軍の主力機を代替するものとされ、英国が提案していた「テンペスト」戦闘機の構想を基盤に開発が進む。AIを搭載し、無人機や防空システムと連携可能な高度な自律機能を備えた第6世代機となる見込みだ。

開発と運用は国際分担
Edgewingは、第6世代戦闘機の設計と開発を一括して担い、製造と最終組立は各国の関連メーカーに委託される。取締役会の議長は、英国、日本、イタリアの代表が持ち回りで務めることが決まっている。3カ国は協定を通じて、開発に伴う費用や技術的リスクを平等に分担する。
役割分担として、英国が機体設計とシステム統合を主導し、日本はエンジンとアビオニクス(航空電子機器)を担当。イタリアは兵器システムと電子戦分野を受け持つ。それぞれの得意分野を活かした共同開発体制が組まれている。
GCAP計画は、他国の参加にも前向きだ。オーストラリア空軍は、将来の戦闘機導入に向けた選択肢の一つとして、このプロジェクトへの参加を検討中とされる。中でもサウジアラビアは最も積極的な国で、単なる「協力国」ではなく、英・日・伊と対等な立場での参画を望んでいる。また、いくつかのEU加盟国も参加の可能性を探っている。
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2023年には、ドイツが独仏西のFCAS計画から離脱し、GCAPへの移行を模索しているとの報道も出たが、現時点では正式な発表はない。