NATO事務総長ルッテ氏はハーグでの首脳会議を前に開かれた記者会見で、中国による大規模な軍備拡張に言及し、「我々は台湾情勢を非常に懸念している」と述べた。さらに、中国がロシアを利用して欧州を牽制する可能性があると指摘し、NATO加盟国による国防費の増額は極めて重要であり、万全の備えが必要だと強調した。
NATO事務総長「国際情勢に警鐘を鳴らす」
北大西洋条約機構(NATO)は、6月24日と25日にオランダ・ハーグで年次首脳会議を開催する。これに先立ち、NATO事務総長マルク・ルッテ氏は24日の記者会見で、まずイラン情勢に触れ、「NATO加盟国は以前から一貫して、イランが核兵器を開発すべきではないと考えており、核拡散防止条約(NPT)の義務を履行するよう繰り返し求めてきた」と強調した。
今回の首脳会議で最も重要な議題は、防衛投資を国内総生産(GDP)の5%に引き上げる方針であり、ルッテ氏はこれを「量子的飛躍」と表現し、大胆な決断だと述べた。また、その一環として防空能力を現在の5倍に強化する計画が含まれていることも明かした。
この5%の防衛目標はアメリカの提案によるもので、ルッテ氏は内訳として、3.5%を中核的な防衛支出、1.5%を軍事関連インフラ整備とする案を提示した。なお、2014年にNATO加盟国が合意した防衛予算の目標はGDPの2%だった。
会見では、スペインが土壇場で姿勢を変え、防衛投資の増額に反対しない立場に転じたことにも言及し、「NATOはスペインが最終的に3.5%まで支出を引き上げると確信している」と述べた。ルッテ氏によれば、各加盟国は定期的に防衛支出の進捗を報告し、2029年に達成状況の見直しを行う予定だという。
ルッテ氏はまた、NATO加盟国がウクライナへの支援を揺るぎなく継続する姿勢を強調した。ヨーロッパ諸国およびカナダは、今年第1四半期に約200億ユーロだったウクライナへの新たな軍事支援額を、現在では350億ユーロ(約1兆2,000億台湾ドル)に引き上げることを約束している。
「NATOが直面する最大かつ最も差し迫った脅威は依然としてロシアである」と述べた上で、ロシアが北朝鮮、イラン、中国、ベラルーシの支援を受けながら、ウクライナへの侵攻を継続している現状に警鐘を鳴らした。
中国軍事演習に「単なるパレードではない」と警鐘
欧州メディアの記者から「台湾関係法」に基づき、台湾が中国から攻撃を受けた場合に米国が軍事支援に動く可能性について質問が出され、NATOとしてインド太平洋地域における最悪の事態に備えているのか問われた。
これに対しルッテ氏は、NATOは現在、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドと緊密な関係を築いており、「これらの国々が、中国による大規模な軍備拡張に対して極めて強い懸念を抱いていることが背景にある」と述べた。
さらにルッテ氏は、わずか数年前まで中国企業は世界の主要防衛企業トップ10に名を連ねていなかったが、現在では3~5社が上位に入っており、中国の軍事力が急速に拡大していることを示していると指摘。「このような動きは、中国の防衛産業に大きな影響を及ぼしており、もちろん彼らがこれを進めているのは北京での美しい軍事パレードのためだけではない」と述べ、実戦的な意図がある可能性を強調した。
「台湾情勢を非常に懸念している」と異例の表明
ルッテ氏はさらに、「我々は皆、台湾情勢を非常に懸念している。中国が台湾に対して何らかの行動を起こせば、間違いなく北京は“仲間”である(ロシアの)プーチン大統領を呼び出し、ヨーロッパを混乱させるよう仕向けるだろう」と警告した。
このようなシナリオを踏まえた上で、ルッテ氏は「これこそがNATO加盟国が備えを万全にすべき理由の一つだ」と述べ、防衛費の追加的な増額は極めて重要であり、いかなる加盟国もこの責務から逃れることはできないと強調した。「我々はもはやナイーブであってはならない」として、全加盟国が危機感を共有し、対応する必要性を訴えた。 (関連記事: 美日台軍事机上演習》中国の台湾侵攻で、米日が台湾独立承認?北京学者が民進党主導の「戦略的軍事演習」を疑問視 | 関連記事をもっと読む )
編集:柄澤南
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