原油100ドル時代が現実に?米軍のイラン爆撃が世界経済に波紋

2025-06-23 14:19
中東の紛争で国際原油価格が再び上昇。(AP通信)
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米軍は現地時間6月22日未明、イランの主要な核施設3カ所を爆撃し、中東紛争に直接関与する姿勢を鮮明にした。トランプ氏は全米向けのテレビ演説でこの攻撃を「壮大な軍事勝利」と位置づけ、イランが和平案を受け入れない限り、追加の攻撃を辞さないと警告した。これに対し、イラン側は強く反発。「自衛権を保持する」と主張し、今回の空爆が「恒久的な影響をもたらす」と非難した。また、トランプ氏による対イラン武力行使は、世界の石油価格を即座に高騰させ、アナリストは100ドル超になる可能性を警告している。

『ロイター』によれば、ブレント原油先物価格は6月10日以降18%上昇し、6月19日には79.04ドル(約12,400円)と、約5カ月ぶりの高値を記録した。爆撃の報道を受けて市場では、今後さらに原油価格が上昇し、1バレルあたり100ドル(約15,700円)を超えるとの懸念が広がっている。『ブルームバーグ』も、今回の攻撃によって世界の石油供給の3分の1を担う中東地域の地政学的リスクが急騰しており、23日月曜日の市場では再び油価が上昇すると予測した。

中東海域の要衝であるホルムズ海峡は、世界的な石油輸送ルートであり、サウジアラビアやUAE、イラク、クウェートなどの主要産油国が影響を受ける。アナリストらは、イランが同海峡でのタンカー通行を妨害すれば、エネルギー供給の混乱とインフレ圧力の増大につながると指摘している。MST Marqueeのソウル・カヴォニック氏は、「今後数時間から数日以内のイランの対応が焦点だ。もし脅し通りの報復行動に出た場合、原油価格が100ドルを突破する可能性がある」と警鐘を鳴らした。

投資家のリスク回避感情が高まる

米国株式市場は報道を受けて短期的な乱高下を見せ、投資家はドルや金といった安全資産へと資金を移した。Potomac River CapitalのMark Spindel氏は「石油市場ではボラティリティが急増しており、不透明な情勢が続く」と述べている。暗号資産のエーテル(Ether)は6月13日以降約13%下落しており、投資家心理の冷え込みが反映されている。一方、中東の一部株式市場では、カタールやサウジアラビア、クウェートの主要指数が上昇。特にイスラエルの株式は史上最高値を記録し、地元投資家の冷静さが際立った。

原油高騰は世界的なインフレ圧力を強め、各国の中央銀行が計画していた利下げを見送る可能性もある。経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)、世界銀行はいずれも成長見通しを下方修正しており、今回の地政学的リスクがさらに経済回復の足を引っ張る懸念が出ている。

歴史的に見ても、中東紛争の初期段階では株価が軟調になる傾向があるが、その後2カ月以内に回復するケースが多い。たとえば、2003年のイラク戦争や2019年のサウジ油田攻撃では、S&P500指数が3週間で平均0.3%下落したが、その後2カ月で平均2.3%上昇している。