イランの濃縮ウラン409kgが消失 核弾頭10発分、IAEA「所在不明」

2025-06-20 12:10
2005年8月、イランの女性が「人間の鎖」でイスファハン(Isfahan)の濃縮ウラン工場を囲み、国家核政策を支持。(AP通信)
2005年8月、イランの女性が「人間の鎖」でイスファハン(Isfahan)の濃縮ウラン工場を囲み、国家核政策を支持。(AP通信)

『ブルームバーグニュース』は18日、イスラエルの攻勢が原因で、国際原子力機関(IAEA)がイランの「準兵器級濃縮ウラン」の所在を確認できないと報じた。この409キログラムの高濃度濃縮ウランは10発の核弾頭を製造するのに十分であり、本来はIAEAの封印の下でイスファハンの地下施設に保管されているはずだが、正確な位置は不明だという。

『ブルームバーグニュース』によれば、IAEAはこのウランを「封印+衛星監視」で管理しており、現在も衛星画像をもとに監視しているが、イランが高濃度濃縮ウランを移動させようとした形跡は見受けられない。イランは1970年以来「核不拡散条約」(NPT)の締約国だが、しばしばNPTを遵守していないと指摘されている。イランがこの高濃度濃縮ウランを移動させれば、重大なNPT違反となる。

国際原子力機関(IAEA)は、現時点でイランの準兵器級濃縮ウランの所在を確認できておらず、イスラエルの継続的な軍事攻撃が査察活動を妨げていると述べた。IAEAのラファエル・マリアーノ・グロッシ事務局長は、「データはイスラエルの攻撃によってウランが移動した可能性があると警告されているため、IAEAもそのウランが依然としてイスファハンの地下施設に保管されているか確認できていない」と説明した。

グロッシ氏は『ブルームバーグ』のインタビューで、ウランの所在について「不明だ」としたうえで、「戦争時にはすべての核施設が閉鎖され、査察は不可能」と述べた。

『ブルームバーグ』は、グロッシ氏の回答がイランの核施設攻撃に伴う困難を浮き彫りにしているとし、イスラエルの爆撃がイランの新たな濃縮ウラン生産能力を損なった一方で、現有の備蓄を追跡することも難しいと指摘。これらの備蓄は短期間で兵器級に達する可能性がある。グロッシ氏は「イスラエルの攻勢でナタンツの核施設は深刻な損害を受けたが、フォルドの核施設は大きな被害は受けていない」とも述べ、イスファハン地域でも一部の建物が損傷を受けたと伝えた。

イスラエルが先週末にイランへの攻撃を開始する以前、IAEAの査察官はイランの核施設に対し毎日、複数回の検査を行っていたと報告。グロッシ氏は、イランがIAEAにウラン備蓄の「特別措置」を通知していないため、ウランの管理状況が不明だと話す。ただし、イランもこの備蓄をIAEAの監視下に置かなければならないことを理解していると述べた。米国政府のデータによると、イランの高濃縮ウランは91.4センチメートルの容器16本に収めることができるという。

グロッシ氏は「査察官はイランが核兵器を製造している証拠を見つけていないが、濃縮ウランをこれほどまでに精製する国はない」と強調。「多くの高官が、イランがすべての鍵を握っていると述べており、不確定要素が多い状況は好ましくない」と語った。イランの濃縮ウラン計画は、NPT第4条で認められる民間核エネルギー計画の一部である。テヘランは過去の米国との核交渉で、核エネルギーを平和利用として維持したい意向を示していたが、イスラエルはイランが濃縮ウランを保有し続けること自体に反対しており、先週の攻撃はそのために行われた。

世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp

最新ニュース
佳子さま、ブラジル訪問で国際的な親和力を発揮
トランプ氏がイランを攻撃したら何が起こるのか――米専門家が語る最悪のシナリオ
舞台裏》新竹で政局激化 柯文哲の本命地を守るため黄国昌がリコール阻止へ奔走
「週刊少年ジャンプ」偽造所持で台湾籍含む3人逮捕 ワンピース初掲載号も押収
台湾、横断歩道での歩行者妨害に厳罰 軽傷で8万円超、重傷なら死亡事故と同等に
美軍、イラン核施設爆撃を16年間訓練も実行せず 元高官が指摘する爆撃後の深刻な問題とは
台湾の大学3校が世界ランキングに進出!台湾大学は過去最高の63位に
評論》破綻が宿命づけられていた「極秘ブリーフィング」
台湾、入国カードを完全電子化 10月から紙廃止へ
フジロック、環境共生型フェスへ 新グッズや伝説バンド企画も発表
映画の名セリフが“しおり”に 東京国際映画祭が参加型キャンペーン開始
大阪・関西万博》新TVCM「一生に一度を何度も」第2弾 6月20日から全国放映開始
「まち全体がホテルに」長崎・平戸市が世界初の『アルベルゴ・ディフーゾタウン』に認定
大分県・国東半島沖で新たな活断層を発見 M7超の地震に警戒 南海トラフの発生確率も80%に上昇
評論》証拠なき拘留が常態化する台湾司法
舞台裏》「台北リコールの嵐」の裏側 拘留、辞任、そして広がる動揺
民進党、2026年選挙ルール発表 首長交代時のみ予備選実施 二世議員に優遇措置なし
TSMC、2ナノ量産でシェア75%へ 価格は想定下回り注文急増
トランプ大統領の命令で対イラン攻撃も CNN警告、戦争終結議論なくイラク・アフガンの惨禍再び
ネットで拡散「3時間でロシア艦隊壊滅」「北方領土奪還」の噂 台湾の調査機関がフェイクと指摘
米FRB、年内利下げに慎重姿勢 関税リスクでインフレ見通しに不透明感
岩手県職員、台湾旅行中にスカート内盗撮容疑 地下鉄で現行犯逮捕
インタビュー》「台湾の納骨堂も買った」──除籍証明で身分証失効危機、中国出身配偶者元議員の訴え
トランプ氏、イラン攻撃計画に承認か 米報道「最終命令は未発令」
日・フィンランド首脳が共同声明 「台湾海峡の平和」明記し安保・経済で連携強化へ
特定中国パスポート保持者、台湾身分取消で幽霊人口化の現状
スカイツリー、6月20日に国連ブルーで特別点灯 「世界難民の日」に連帯示す
IAEA、福島第一原発のALPS処理水に関する追加モニタリング結果を公表
スターラックス航空、沖縄発着・台北/台中行き直行便を今夏増便 夏休み旅行に向けて対応
台湾・頼清徳総統、野党に国安協力呼びかけも会談実現せず 「政党は競合しても、ゼロサムであってはならない」
エア・インディア機でまた不具合 墜落事故から数日、24時間で4件発生
第3次オイルショックの引き金か──イスラエルの攻撃が狙う「イランの石油生命線」
「10年後、世界最強は中国」?オーストラリア世論が示す信頼の地殻変動
陸文浩の視点:中国空母が初めて「第二列島線」突破 硫黄島沖で遠海演習「機動-2025」
トランプ氏、ハメネイ師の排除を示唆 イランに「無条件降伏」要求で緊張高まる
米国の中立維持は限界か?13.6トン『バンカーバスター』で核施設攻撃示唆 トランプ発言が戦争の危機を高める
Labubu、世界中で大ブーム リアーナやBLACKPINKも夢中 「醜くて可愛い」が中国のソフトパワーか、一過性か?
米英の研究者がブループラネット賞受賞 地球温暖化や金融の気候対策で功績
中国の空母2隻が第二列島線に進出 硫黄島周辺で初の大規模演習、日本も警戒強化
京都先端科学大学、米ビザ政策変更受け留学生支援策を発表
中国空母が硫黄島・沖ノ鳥島周辺で大規模演習 艦載機の発着回数500回超 自衛隊が警戒強化
頼清徳氏主催の国安会議、野党全て欠席 「非公開方針」に不信感広がる
石破首相、G7サミットで米・加・独首脳と個別会談 印太戦略と経済安全保障で連携確認
台湾・台北市でEVバスが走行中に爆発炎上 日本製バッテリー搭載、けが人なし 市は全車両を3日以内に緊急点検へ
【マイナビオールスターゲーム2025】プロ野球の祭典、7月23日から大阪・横浜で開催
大谷翔平「シグネチャー・コレクション」第2弾が登場!ドジャース初戦記念サインボール&初WS出場ジャージを抽選販売
「政策だけでなく実務能力・信頼性も重視」 有権者の政党選択に新傾向 早大など研究チームが分析
梅雨でも楽しめる「ゴジラ迎撃作戦」! 淡路島・ニジゲンノモリで限定イベント開催中
台湾・頼清徳総統はどんなリーダー?最新世論調査で見えた「7つの総統資質」
台湾・新北市の安坑ライトレールが世界に輝く 生活美学の象徴として国際建設賞受賞