『ブルームバーグニュース』は18日、イスラエルの攻勢が原因で、国際原子力機関(IAEA)がイランの「準兵器級濃縮ウラン」の所在を確認できないと報じた。この409キログラムの高濃度濃縮ウランは10発の核弾頭を製造するのに十分であり、本来はIAEAの封印の下でイスファハンの地下施設に保管されているはずだが、正確な位置は不明だという。
『ブルームバーグニュース』によれば、IAEAはこのウランを「封印+衛星監視」で管理しており、現在も衛星画像をもとに監視しているが、イランが高濃度濃縮ウランを移動させようとした形跡は見受けられない。イランは1970年以来「核不拡散条約」(NPT)の締約国だが、しばしばNPTを遵守していないと指摘されている。イランがこの高濃度濃縮ウランを移動させれば、重大なNPT違反となる。
国際原子力機関(IAEA)は、現時点でイランの準兵器級濃縮ウランの所在を確認できておらず、イスラエルの継続的な軍事攻撃が査察活動を妨げていると述べた。IAEAのラファエル・マリアーノ・グロッシ事務局長は、「データはイスラエルの攻撃によってウランが移動した可能性があると警告されているため、IAEAもそのウランが依然としてイスファハンの地下施設に保管されているか確認できていない」と説明した。
グロッシ氏は『ブルームバーグ』のインタビューで、ウランの所在について「不明だ」としたうえで、「戦争時にはすべての核施設が閉鎖され、査察は不可能」と述べた。
『ブルームバーグ』は、グロッシ氏の回答がイランの核施設攻撃に伴う困難を浮き彫りにしているとし、イスラエルの爆撃がイランの新たな濃縮ウラン生産能力を損なった一方で、現有の備蓄を追跡することも難しいと指摘。これらの備蓄は短期間で兵器級に達する可能性がある。グロッシ氏は「イスラエルの攻勢でナタンツの核施設は深刻な損害を受けたが、フォルドの核施設は大きな被害は受けていない」とも述べ、イスファハン地域でも一部の建物が損傷を受けたと伝えた。
イスラエルが先週末にイランへの攻撃を開始する以前、IAEAの査察官はイランの核施設に対し毎日、複数回の検査を行っていたと報告。グロッシ氏は、イランがIAEAにウラン備蓄の「特別措置」を通知していないため、ウランの管理状況が不明だと話す。ただし、イランもこの備蓄をIAEAの監視下に置かなければならないことを理解していると述べた。米国政府のデータによると、イランの高濃縮ウランは91.4センチメートルの容器16本に収めることができるという。
グロッシ氏は「査察官はイランが核兵器を製造している証拠を見つけていないが、濃縮ウランをこれほどまでに精製する国はない」と強調。「多くの高官が、イランがすべての鍵を握っていると述べており、不確定要素が多い状況は好ましくない」と語った。イランの濃縮ウラン計画は、NPT第4条で認められる民間核エネルギー計画の一部である。テヘランは過去の米国との核交渉で、核エネルギーを平和利用として維持したい意向を示していたが、イスラエルはイランが濃縮ウランを保有し続けること自体に反対しており、先週の攻撃はそのために行われた。
編集:柄澤南 (関連記事: 美軍、イラン核施設爆撃を16年間訓練も実行せず 元高官が指摘する爆撃後の深刻な問題とは | 関連記事をもっと読む )
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp