台湾国安会議の舞台裏──総統を後にした野党、国民党は「内戦」、民衆党は「違和感」

2025-06-18 11:31
黄国昌民衆党主席(左)と朱立倫国民党主席(右)は、最終的に頼清徳総統からの招待による「国家安全保障ブリーフィング」には出席しないことを決定した。(写真/柯承惠撮影)
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台湾総統・頼清徳氏は6月18日、野党の指導者を総統府に招き、「重大な国家安全情勢の報告」を行う予定だった。しかし前日の17日、出席する意向を示していた民衆党の黄国昌氏が突然「出席できない」と発表。その後、国民党も会合を欠席する意向を表明した。

民衆党は、この会合について「急ごしらえで、政治的な操作が見え隠れする」と批判。実は国民党も当初は前向きな姿勢を示していたが、最終的には参加を拒否した。現職の総統による呼びかけを二大野党が無視するという異例の展開には、何があったのか。

総統府のスポークスパーソン・郭雅慧氏は、「遺憾に思う。秘書長の2人に電話を入れたが、国民党の黄健庭秘書長は頻繁に応答してくれた。一方で、民衆党の周榆修秘書長は一度も電話を返してこなかった。潘孟安秘書長からの連絡にも、民衆党側は記者会見で応じただけだった」と明かした。

総統府側は、頼清徳氏が最大限の善意を示し、礼節を尽くして準備していたと説明している。しかし最終的に両野党はこの呼びかけを「無視」。与野党間の信頼の脆さが改めて浮き彫りになった。

​大統領府は野党指導者への国安簡報のため200インチの大画面を設置した。(大統領府提供)
総統の頼清徳(中央)が野党を総統府に招き、潘孟安総統府秘書長(右から2番目)から積極的に連絡があった。(資料写真/総統府提供)

総統府府の手続き変更 民衆党の警戒感に拍車

民衆党は6月16日の午前に記者会見を行い、周榆修秘書長が6月12日と15日に総統府の潘孟安秘書長から受けた電話内容を説明した。それによると、当日の流れは、9時から総統のスピーチ、9時30分から約2時間の国安簡報、11時30分から30分間の総合討論、そして12時に終了というスケジュールだった。黄国昌氏は、この「総合討論」の時間があまりに短く、「ただ呼ばれて報告を聞くだけなのでは」と疑問を呈した。

その日の午後、総統府の郭雅慧氏は報道資料を通じて、18日の国安報告は高度な機密性を伴うため、「すべて非公開で進められる」と発表。公開された最新のスケジュールでは、9時から短い歓迎の後すぐに報告が始まり、10時48分から総合討論、11時45分に総統の総括、11時55分に記念品の贈呈と集合写真撮影、そして12時に終了となっていた。

このスケジュールの変更について、民衆党は「当初聞いていた内容とは違う」と認識しており、違和感を抱いている。

頼清徳氏は5月20日の就任後、野党指導者を総統府に招き、国家安全に関する情報を共有し、国是について議論する意向を示していた。このとき民衆党と黄国昌氏も、一定の関心を示していた。

黄国昌氏は5月21日、連絡窓口として周榆修氏を指名し、会議への参加に前向きな姿勢を見せていた。しかし彼は、「議題の一部は公開されるべきだ」「総統と野党の間で何が話されたのか、国民が知る必要がある」と考えており、最終的に非公開の形式や進行の曖昧さに対して懸念を深めたと見られる。 (関連記事: 台湾・頼清徳総統はどんなリーダー?最新世論調査で見えた「7つの総統資質」 関連記事をもっと読む

20250617-民衆党主席の黄国昌(右)と秘書長の周榆修(左)が17日に記者会見を開き、翌日大統領府の国安簡報に出席できないことを表明した。(顏麟宇撮影)
民衆党主席の黄国昌(右)と秘書長の周榆修(左)が17日に記者会見を開き、総統府の国家安全保障に関するブリーフィングには参加できないと表明した。(写真/顏麟宇撮影)

スポークスパーソンの発言に違和感 民衆党が警戒を強めた理由

民衆党は事前のやり取りのなかで、総統府が何を意図しているのか見極めがつかず、民進党が政治的な罠を仕掛けている可能性もあると警戒していた。また、民進党の立法委員やスポークスパーソンが「黄国昌氏が国安情報のライブ配信を求めた」と発言したことに対して、黄氏は自身の発言が歪曲されたとして強い不満を抱いていた。ただし、国家の利益を優先すべきという考えから、批判されても総統府には出向くつもりでいたという。