独占インタビュー》台湾の若手アニメーション監督・蘇瑞容の短編が東京の国際映画祭へ

2025-06-14 15:54
2025年のShort Shorts Film Festival & Asia(SSFF & ASIA)において、台湾のアニメーション監督・蘇瑞容(スー・ルイロン)による短編アニメーション『鼴鼠,鼴鼠!(Mole mole!)』が「キッズプログラム」に入選し、6月7日に東京で上映された。(写真/黃信維撮影)
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2025年のShort Shorts Film Festival & Asia(SSFF & ASIA)において、台湾のアニメーション監督・蘇瑞容(スー・ルイロン)による短編アニメーション『鼴鼠,鼴鼠!(Mole mole!)』が「キッズプログラム」に入選し、6月7日に東京で上映された。蘇監督は《風傳媒》の独占インタビューに応じ、本作への思いと自身の創作哲学について語った。

本作は、蘇監督が国立台北芸術大学アニメーション学科に在学中、卒業制作として手がけた作品だ。言葉を使わず、丁寧な描写と繊細な動きで、内向的な少女とその家族が過ごす、静かで温かい時間を描き出している。

― 卒業制作『鼴鼠,鼴鼠!(Mole mole!)』で温かくも切実な家族の記憶を描く ―

インタビューで蘇監督は、「まるで夢のようです!」と笑顔を見せた。「東京で子どもたちやその家族とこの作品を共有できることが本当にうれしいです」と語る。

2025年のShort Shorts Film Festival & Asia(SSFF & ASIA)において、台湾のアニメーション監督・蘇瑞容(Su Rui-Rong)による短編アニメーション『鼴鼠,鼴鼠!(Mole mole!)』が「キッズプログラム」に入選し、6月7日に東京で上映される。黃信維
2025年のShort Shorts Film Festival & Asia(SSFF & ASIA)において、台湾のアニメーション監督・蘇瑞容(Su Rui-Rong)による短編アニメーション『鼴鼠,鼴鼠!(Mole mole!)』が「キッズプログラム」に入選し、6月7日に東京で上映された。(写真/黃信維撮影)

もともとはホラーや陰鬱な作品を多く制作していたが、「両親が明るい作品の方が好きなんです」と語り、「卒業展に家族を招くので、ちょっと怖い内容だと気まずいかと思って。今回は自分でも好きになれる、陽だまりのような作品にしようと決めました」と振り返った。

ただ、友人に見せたところ「やっぱりちょっと怖いね」と言われたという。

タイトルの句読点には、彼女の細やかなこだわりが込められている。「“鼴鼠,”(モグラ、)は、内気で外に出られない状態を、“鼴鼠!”(モグラ!)は、外に飛び出す時の高揚感を表しています」と説明した。。

「観てくれた人たちが、家族と過ごした幸せな時間を少しでも思い出してくれたら」と、彼女は本作に込めた願いを述べた。

「Short Shorts Film Festival & Asia(SSFF & ASIA)2025」。黃信維
「Short Shorts Film Festival & Asia(SSFF & ASIA)2025」。(写真/黃信維撮影)

印象的なシーンとして、少女が外に出る前に「バイバイ」と手を振る場面を挙げた。「撮影再開後、最初に撮ったカットだったんですが、とても自然に撮れて。再生した時、自分が撮ったものとは思えないくらい感動しました。」

「Short Shorts Film Festival & Asia(SSFF & ASIA)2025」。黃信維
「Short Shorts Film Festival & Asia(SSFF & ASIA)2025」。(写真/黃信維撮影)

制作中には、何度も修正したくなる衝動に駆られたとも語る。「でも、ずっと直していたら終わらない。だから“当時の自分を記録する”という気持ちで完成させることも大切だと学びました。」

今後については「短編を作り続けたい」と語る一方で、「機材を買うためにお金を貯めたいし、いろんな分野の仕事にも挑戦したい」と現実的な目標にも触れた。「運転免許を取ったら、しばらく就職して生活の幅を広げたいです」とも話す。

最後に、台湾の若い創作者たちへ向けたメッセージを求められると、「自分もまだまだ迷ってばかりなので偉そうなことは言えないけれど……」と前置きしながら、「忙しい毎日の中でも、ちゃんとご飯を食べて、自分を大切にして、楽しく生きていけたらいいなと思います」と静かに語った。蘇監督は今後の活躍にも期待が高まる。

​編集:田中佳奈

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