独占インタビュー》洪瑋婷監督、短編映画『風流少女殺人事件』でSSFF & ASIA 2025に入選

2025-06-14 10:18
台湾出身の洪瑋婷(ホン・ウェイティン)監督による短編映画『風流少女殺人事件(A Brighter Summer Day for the Lady Avengers)』が、「Cinematic Tokyo」部門に正式出品される。(写真/洪瑋婷提供)

アジア最大級の国際短編映画祭「Short Shorts Film Festival & Asia 2025(SSFF & ASIA)」はこのほど、2025年度の公式コンペティション部門に選出された作品を発表した。台湾出身の洪瑋婷(ホン・ウェイティン)監督による短編映画『風流少女殺人事件(A Brighter Summer Day for the Lady Avengers)』が、「Cinematic Tokyo」部門に正式出品される。本作は16ミリフィルムで撮影され、セリフを一切用いずに、1980年代の台湾を舞台に少女の性の目覚め、幻想、そして血の復讐を詩的に描き出している。

洪監督は現在、アメリカ・サンフランシスコ州立大学大学院の映画制作プログラムに在籍中で、本作は修士課程の卒業制作として制作された。2024年には「学生アカデミー賞(Student Academy Awards)」の「Experimental / Alternative」部門で金賞を受賞。さらに、高雄映画祭、ロンドン短編映画祭、スラムダンス映画祭、クレルモン=フェラン短編映画マーケット、サンフランシスコ国際映画祭など、世界各地の映画祭で公式上映され、これまでに20本以上のセレクションを果たしている。

台湾出身の洪瑋婷(Birdy Wei-Ting Hung)監督による短編映画『風流少女殺人事件(A Brighter Summer Day for the Lady Avengers)』が、「Cinematic Tokyo」部門に正式出品される。洪瑋婷
台湾出身の洪瑋婷(ホン・ウェイティン)監督による短編映画『風流少女殺人事件(A Brighter Summer Day for the Lady Avengers)』が、「Cinematic Tokyo」部門に正式出品される。(写真/洪瑋婷提供)

洪監督は《風傳媒》の独占インタビューで、本作のタイトルが台湾映画の巨匠エドワード・ヤン(楊德昌)氏による『牯嶺街少年殺人事件』の登場人物「小明」にオマージュを捧げていることを明かした。同時に、1984年に楊家雲氏が監督した台湾カルト映画『瘋狂女煞星』からもインスピレーションを得ているという。

「Short Shorts Film Festival & Asia(SSFF & ASIA)2025」。黃信維
「Short Shorts Film Festival & Asia(SSFF & ASIA)2025」。(写真/黃信維撮影)

「台湾の映画では、女性は常に悲劇的な存在として描かれてきました。私はその構図を変えたかった。彼女たちは『見られる側』ではなく、主体的に『見る側』としてスクリーンに登場すべきなのです」と洪監督は語る。

物語は1980年代の台北。ある夏の午後、少女がスイカジュースを手に映画館に入り、地下映画の映像と妄想の世界に没入していく。フィルムの質感や色彩設計、無音の演出により、本作は洪監督自身が「復讐ファンタジー」と称する実験的な映像体験へと昇華されている。

「Short Shorts Film Festival & Asia(SSFF & ASIA)2025」。黃信維
「Short Shorts Film Festival & Asia(SSFF & ASIA)2025」。(写真/黃信維撮影)

監督自身はこれまで台湾のヘヴィメタルバンド「閃靈」のMV演出なども手がけてきた。最新作〈百萬遍〉も彼女の手によるものである。台湾の歴史や植民地経験、映像における女性の再定義に長く関心を持ち、今後も「監督、脚本家、俳優、批評家といったあらゆる場面における女性の語り」にフォーカスしていく意向を示した。

本作はLUCKY SPARKS製作によるもので、洪監督は監督・脚本を務め、編集は鍾明凱編集技師と共同で仕上げた。撮影監督は鍾艾(チョン・アイ)、主演は黃瑋(ホアン・ウェイ)と陳奕均(チェン・イージュン)が務めた。ポストプロダクションにはFinger and Toe社が参加し、エンドロールの文字演出もすべてチーム全体でデジタル処理したという。

SSFF & ASIA 2025での上映後には、金馬奨の最優秀オリジナル音楽賞を受賞した作曲家・曾韻芳(ツェン・ユンファン)氏を迎えたトークイベントの開催も予定されている。「今回のコラボレーションはとても充実したものでした。ぜひ現地でその裏話をお聞きください」と洪監督は呼びかけた。同プログラムでは、台湾の岩井俊二監督の作品も同時上映される。

なお、洪監督は短編映画の国際的な発展において、ジャンルやスタイルの枠組みに囚われない視点の重要性も強調している。「観客が台湾の歴史を知らなくても、強い映像体験として響くこと。それこそが文化や言語の壁を越える映像の力です」と語った。

最後に、これから映像制作を志す若者に向けて、「先輩という立場ではありませんが、好奇心を持ち続けてほしい」とエールを送った。「映像制作には知力も創造力も必要。世界に対する理解と再解釈を繰り返すことでしか、新しい作品は生まれません。」

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