チップ規制は逆効果?「ChatPPT」から逆転劇へ──中国のAIが3ヶ月で米国に迫る衝撃

2025-06-13 11:11
(ideogram 2.0 Turboによる画像)
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百度(バイドゥ)のCEO・李彦宏(リー・イェンホン)氏は2023年、自社のAI製品「文心一言」を発表したが、その操作デモが事前収録だったと後に認めたことで、「ChatGPTじゃなくてChatPPTだ」と中国国内で揶揄されることに。当時は「中国のAIはアメリカの車のテールランプすら見えない」とまで言われていた。

しかし、2025年の「トランプ2.0」就任当日、中国の大規模言語モデル「DeepSeek-R1」が突如登場し、世界を驚かせた。アメリカの株式市場にも影響を与え、「AI版スプートニク・ショック」と呼ばれるほどのインパクトをもたらした。

ChatGPTとDeepSeekの出現により、これまで視野の外だった「米中AI戦争」が一気に表舞台へ。トランプ氏でもバイデン氏でも、アメリカが中国の技術的・地政学的台頭を警戒しているのは共通している。
米国務長官のマルコ・ルビオ氏も「中国はEV、造船、再生エネルギー、高速鉄道で世界をリードしている」とし、航空宇宙、生物工学、ロボティクス、材料技術、半導体などでも急速に進展していると語った。DeepSeek-R1が世界を揺るがした今、次に問われるのは「AI競争で勝つのはどちらか」「アメリカは中国のAI開発を本当に止められるのか」という点だ。

NVIDIAへの規制はすでに2年に渡る

アメリカはここ2年、NVIDIAの先端AIチップを中国に輸出させないよう規制を強化。たとえ中国向けに性能を落として設計されたH20であっても、販売には政府の許可が必要となった。
だが『フォーリン・ポリシー』誌は、こうした規制が実際にどれほど効果を発揮しているのかについて疑問を呈している。Huaweiの半導体技術における継続的な突破も、議論を再燃させた。

スタンフォード大学の中国技術政策研究者グラハム・ウェブスター氏は、「バイデン政権は2023年10月にH800の対中販売を禁じた。NVIDIAはその規制ギリギリのラインに合わせた製品を大量に作ったが、それが“非愛国的だ”と怒られた」と語る。ただしウェブスター氏は、NVIDIAの姿勢は一貫しており、「手が届く顧客すべてに最先端チップを届け続けている」と擁護する。

NVIDIAがGPUを初めて発売した1999年、用途はゲームやグラフィック処理に限られていた。だが20年後、それがAI開発における不可欠なツールになると誰が想像できただろう。
CEOの黃仁勳(ジェンセン・ファン)氏は今やシリコンバレーを代表する億万長者に。NVIDIAの製品は米国の対中輸出制限の中心ターゲットとなった。2019年(トランプ1.0時代)から始まった対中チップ規制は、バイデン政権でも拡大され続けている。 (関連記事: 黄仁勲氏が漏らしたため息──NVIDIAを襲うチップ規制の誤算 関連記事をもっと読む

常に一歩遅れている米国政府

とはいえ、米国政府の動きは「常に一歩遅れている」とも言われる。トランプ氏が再びホワイトハウス入りした今、そのAI・貿易戦略が定まらないことが大きなリスクとなっている。今年4月2日、トランプ氏は“解放日”関税を発表したが、最初は全世界に向けていたものの、のちに中国に絞って修正。習近平国家主席に直接電話をかけ、米中貿易交渉の再開を図ったという。