肺がんは台湾で長年、がんによる死亡原因のトップを占めている。その中でも「小細胞肺がん」は特に悪性度が高く、進行が早いことで知られている。台北市立聯合医院・陽明院区で胸部内科医を務める蘇一峰氏は、最近SNS上で60歳男性の衝撃的な症例を紹介した。
この患者は約1年半のうちにステージ4まで進行し、腫瘍の大きさは10センチに達していた。診断は「小細胞肺がん」。治療が最も難しいタイプで、蘇氏は「もう時間が残されていない」と無念さをにじませた。
健康診断は正常、それでも進行は止まらなかった
蘇氏によると、この男性には慢性閉塞性肺疾患(COPD)の持病があり、1年半前に低線量胸部CT(LDCT)を受けたものの、当時の検査では肺に異常は見つからなかった。ところが最近、重度の呼吸困難と肺水腫で受診。再検査の結果、10センチもの腫瘍が見つかり、すでにステージ4の小細胞肺がんと診断された。
このがんの恐ろしさは、増殖スピードにある。栄養条件がそろえば、およそ30日で細胞数が倍に増える。単純計算でも、1年半の間に約26万倍(2の18乗)に膨れ上がり、最初は0.004立方センチだったがん細胞が、最終的には1000立方センチにまで達していたという。
小細胞肺がんは「がんの王様」
蘇氏は「小細胞肺がんは“がんの王様”とも呼ばれていて、成長が早く転移もしやすい。治癒率も低く、喫煙との関係が深い」と強調する。肺がん全体の約10〜15%を占めており、この患者にも長年の喫煙歴があったため、リスクが非常に高い状態だった。
このタイプのがんは主に気管支の中心部に発生しやすく、見つかった時点で既に末期というケースが多い。中国医薬大学医学センターのデータによると、肺がんは大きく「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」に分けられる。前者は全体の約8〜9割を占め、その中でも肺腺がんは女性や非喫煙者でもかかる可能性がある。一方で後者の小細胞肺がんは、喫煙と強く結びついており、進行も致命的だ。
今回の症例は、多くのネットユーザーの注目を集めた。「最初はまったく症状がなかったのか」という質問に対し、蘇氏は「後になって呼吸困難が出てきたが、その時点ではすでに手遅れだった」と明かす。
そして最後に、高リスク群──特に長年喫煙している人たち──に対して、低線量CTを定期的に受けることの重要性を強調。「早期に見つければ、治療の可能性も高まる。どうかそのチャンスを逃さないでほしい」と繰り返し呼びかけた。
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編集:田中佳奈
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