「軍の中に敵がいる」 台湾で広がる不信、中国スパイ事件が過去最多に

2025-06-09 16:57
台湾では最近、共産党のスパイ事件が相次いでいる。頼清徳総統が国家安全17条を発表して以来、国軍はスパイの捜査と浸透防止に積極的に取り組んでいる。イメージ図であり、実際のニュース事件とは関係ない。(写真/張曜麟撮影)
台湾では最近、共産党のスパイ事件が相次いでいる。頼清徳総統が国家安全17条を発表して以来、国軍はスパイの捜査と浸透防止に積極的に取り組んでいる。イメージ図であり、実際のニュース事件とは関係ない。(写真/張曜麟撮影)
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台湾で、中国共産党によるスパイ活動が急増している。これに対し、国防部長の顧立雄氏は立法院で、国軍の情報保護体制を強化していると明らかにした。軍事安全総隊の人員を増やし、「機密資格認証制度」を設けて、階級にかかわらず情報へのアクセス権を厳格に管理するという。

この背景には、2025年3月13日に頼清徳総統が打ち出した「国家安全17条」の存在がある。発表以降、軍はスパイ摘発に力を入れ、より強力な情報保護体制を整えつつある。

国家安全局の統計では、2020年から現在までに起訴されたスパイ事件は159件。このうち、現役・退役軍人は95人で、全体の約6割を占めている。主な手口は、退役軍人が現役兵を勧誘すること、インターネットを使った接触、金銭的な誘惑、債務問題の利用など。これらを通じて中国は軍事機関や政府部門に浸透し、防衛・国家機密の収集を試みているという。

さらに国家安全局によれば、中国側は黒社会、地下銀行、ダミー会社、寺院団体、市民団体などを通じて、経済的に困窮した若い兵士層への接触を図っている。目的は、中国の武力行使時に台湾国内から協力者を得ることだという。

なお、2020年以降にスパイ容疑で起訴された軍人の内訳は、軍官46人、士官27人、兵士22人。これは、中国の浸透工作が高級幹部だけでなく軍全体に広がっていることを意味している。

20250514-国防部長顧立雄14日於外交国防委員会備詢。(顔麟宇撮)
国防部長の顧立雄氏(左)は立法院で、共産主義浸透への対策として、国軍の保護陣を増員していると述べた。特に軍事安全総隊員を増やし、機密資格認証制度を設けることで、階級に関係なく機密の等級に応じて査証を行うとしている。(写真/顔麟宇撮影)

頼清徳、より積極的な措置を指示 国軍が動き出しスパイ摘発

こうした事態に対し、頼氏は3月13日の国家安全高層会議で「中国は海外の敵対勢力。我々には選択肢がなく、より積極的な対応が必要だ」と述べた。その場で国家安全17条を発表し、共産党の浸透工作に対抗する姿勢を明確にした。

頼氏の方針発表からすぐに軍が動き出し、憲兵によるスパイ摘発も加速。『風傳媒』が取材したところ、憲兵司令部は「国家の安全を守り、中国共産党の浸透を防ぐため、憲兵は情報収集や自発的な内部告発を強化している」と答えた。また、「関係部隊はスパイ捜査を増やしており、国軍は中国による「人材吸収」の脅威を明確に認識している。今後もスパイ事件の手がかりを積極的に発見し、海外勢力からの浸透を防ぐ」としている。

20250520-総統頼清徳20日発表執政周年談話。(顔麟宇撮)
頼清徳総統が国家安全17条を発表し、「より積極的な措置」を宣言した後、軍部がスパイ捜査により力を入れるようになった。(写真/顔麟宇撮影)

軍の保護体制が拡大 ポリグラフ導入も視野に

軍はスパイ対策における捜査のペースを上げるとともに、軍内の保護体制も拡充。政治作戦局傘下の「軍事安全総隊」の人員を54名増やす計画を進めており、すでに43名が採用済みで、残りも2025年7月までに補充される予定だ。増員は現行の軍部隊だけでなく、文職者も対象となっている。

軍事安全総隊は主に防諜と情報保護を担当。問題が発生した際には国家安全局に報告し、そこから調査局、憲兵、警政署などの司法警察システムが招集され、調査が行われる流れだ。

現在、軍では「機密資格認証制度」を導入しており、対象は志願兵の中で機密情報に触れる可能性がある人員に限られている。ただし、今後徴兵制度の拡大に伴い、制度対象も見直される予定だ。

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